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2009年新司法試験不合格答案再現(2.公法系第1問:憲法)

続いて憲法です。



2日目 公法系第1問・憲法(100点)  問題

*得点:135.54/200(行政法含む 70位くらい)

〔設問1〕
第1 Xの主張
1 Xが侵害されている憲法上の権利
(1)XはY大学の発した本研究の中止命令により、遺伝子治療の研究を妨げられるに至った。これは、憲法23条で保障される学問の自由を侵害するものである。
 学問の自由は、精神的自由の一環であり、人類の発展に必要不可欠な高度な知的営為であること、高度な自律性に基づく自己実現のための重要な手段であることから、特に高度の保障を受ける権利である。
(2)さらに、Xに対する研究中止命令は、結果としてCのような患者が遺伝子治療を受ける道を閉ざすものでもある。遺伝子治療は難病性疾患の患者にとって必要不可欠であり、これを受ける権利は幸福追求権の一環として憲法13条により保障されるものである。
 そして、XはCら患者の利益のため治療法を研究する立場にあること、治療継続についてはXに争わせることが患者のためにも便宜であることから、Xに患者の権利についても主張適格を認めるべきである。
(3)本件では私人たるY大学によって上記の憲法上の権利が侵害されているものであるが、①本件では国の承認を受けた研究の中止が問題となっており、また②研究者は大学の提供する研究関係に依存しており、大学と研究者の間には対国家と同視しうる上下関係があることから、本件では憲法の直接適用を認めるべきである。また、少なくとも判例の趣旨から、民法90条を通して間接適用が認められねばならない。
2 Xへの侵害が正当化されないこと
上記の権利侵害につき、具体的には以下の理由で正当化が許されず、違憲である。
(1)文面上違憲
ア 前述の通り、学問の自由は極めて重要な権利であり、自律的な活動に基礎付けられるものである。かかる権利については、漠然な要件に基づく規制によって萎縮効果が生じることが避けられねばならず、規制要件が不明確な場合には違憲たるを免れない。
イ そこで本件中止命令の根拠である審査委員会規則8条を見ると、規制の要件については「重大な事態」、処分内容については「必要な措置」と幅があり、不明確であるから、Xの研究を萎縮させるものである。よって、文面上違憲というべきである。
(2)審査委員会規則が法律の範囲内にない
ア 憲法94条は「法律の範囲内」において条例を定めることが許されるとしており、同条は法律が規制を認めない場合に条例で規制を設けることを禁じているものである。 
 そして、国立大学法人の定める規則も、前記1(3)で述べた事情から法律と同視でき、また条例のように地方議会に基づく正当性もないから、94条の趣旨から同様の規律を受けることは当然である。
イ 政府は研究者の自主性や倫理性を尊重して罰則を伴った法律による規制を取らなかったものであり、遺伝子治療研究につき法律での規制を認めないものと解されるところ、研究を規制する審査委員会規則はその趣旨に反し違憲である。
(3)適用違憲
ア たとえ審査委員会規則が合憲であるとしても、本件中止命令は重大な権利を侵害するものであるから、①重大な危険が発生するおそれがあり、②危険発生の蓋然性が高いことを条件に、中止命令が必要やむを得ないと言える場合にはじめて正当化される。
イ この要件について見ると、①について、本件でCは最終的に回復しており、A大学の事件のように死亡に至るものではないから難病治療の上で重大な危険とは言えず、②について、Cに発生した問題は予想外のものであるが、Xの研究そのものに危険発生の蓋然性が高いという事情はない。
 したがって、本件中止命令は必要な要件がないのに憲法上の権利を不当に侵害しているものであり、適用上違憲とされるべきである。
第2 Yの主張及び私見
1 本案前の答弁(部分社会の法理)
(1)Yの主張
 本件中止命令は、大学がその構成員たるXに対してした、大学組織内の処分である。これは、大学組織という部分社会の自律に属する行為であり、司法審査の範囲外である。
(2)私見
ア Yはいわゆる部分社会の法理を主張するものであるが、そもそも部分社会という概念自体、根拠が不明瞭であり支持しがたい。
イ また、そのような自律的判断を尊重すべきとしても、それが市民社会と関連する行為であれば、その限りで司法審査の対象となるものである。
 本件中止命令はXに研究中止を命ずるものであり、Xの職務遂行を妨げ、社会生活に影響を与えるものであるから、市民社会と関連する行為であり、司法審査を受けるものというべきである。
2 Xの主張する憲法上の権利について
(1)Yの主張
 Xは学問の自由を主張するが、学問の自由が重要であるとしても絶対無制約ではなく、公共の福祉による制約を受ける(憲法12条)。
 特に、本件で問題とされる遺伝子治療研究については、生命の根幹に関わることもあって安全性について未知の危険が存在すること、「人間の有り様」を変える点で倫理上の問題点もあることから、これを防ぐための強度の規制が正当化されるものである。
(2)私見
 学問の自由が絶対無制約でないという点についてはYの言うとおりであり、学問の自由に内在する制約として権利侵害が正当化される余地はあるが、最先端の科学問題であるなどの一事をもって制約されるものとはいえず、遺伝子治療の危険性等を理由とする規制の正当性を検討するに当たり、個別の事情として考慮されるにとどまると考える。
3 文面上違憲の点
(1)Yの主張
 規制の明確性については、通常人の視点から見て規制内容につき理解でき、当該行為が規制対象に含まれると判断できるかどうかで決すべきところ、審査委員会規則は通常人が見ても明確なものといえる。
(2)私見
 本件規制の基準に明確性が要求される点はXの言うとおりであり、その判断基準はYの議論が妥当する。
 そこで明確性を判断すると、規制要件たる「重大な事態」について「被験者の死亡その他」と例示があること、処分内容たる「必要な措置」についても「研究の中止又は変更その他」といった例示があることからして、一般人が規制要件及び効果につき十分理解できるものといえ、明確性の点で不備はない。
4 法律の範囲逸脱の点
(1)Yの主張
 そもそも大学の規則は条例と異なるから、憲法94条の規律に服する理由はない。もしXの所論を容れるとしても、法律は本件のような規制を否定していない。
(2)私見
ア 確かに大学の規則は条例と異なり、憲法94条による直接の規律は及ばない。しかし、94条以前の一般法理として、法律に反する規制を国立大学が行うことは憲法上も予定されず、かかる規制は違法になるというべきである。
イ 本件では、政府が罰則を伴う法律による規制を設けず、指針の設定にとどめたことは認められるが、これが大学など研究機関による規制を許さないという趣旨とは認められない。指針(参考資料1)の第一においても、目的の中に「適正な実施」とあり、そのために各機関が必要な規制を設けることが予定されているといえるから、審査委員会規則が法律に反するものとはいえない。
5 適用違憲の点
(1)Yの主張
ア 本件では遺伝子治療という未知の危険性を有する研究が問題となっており、また倫理上の問題もあるから、学問の自由といえども高度の制約を受け、明白に不合理な処分でない限りは正当化されるべきである。
イ 本件ではXの研究によってCが重体に陥るという深刻な問題が発生し、またその原因も予想外のものであり再発の危険性も認められるから、研究を中止させることが明白に不合理とは言えず、違憲とはいえない。
(2)私見
ア 本件規制が遺伝子治療の危険性に基づく制約であることはYの主張するとおりであり、規制についての判断が高度に専門的であり、研究機関の自律に委ねられるべき点が大きいことも踏まえれば、研究機関たるY大学の判断のうち、①処分の理由と②処分の内容につき不合理と認められなければ、適法な処分と考える。
イ これを本件について見ると、①につき、本件処分はA大学の事故から遺伝子治療の危険性が認められ、またXの研究でも実際にCに重体が発生したこと、その原因が予想外であり未知のものであることから、規制すべき理由に合理性が認められる。また②につき、危険の大きさからして、その解消まで研究を禁じることにも合理性がある。
 よって、本件中止命令は適用上も違憲とはいえない。
〔設問2〕
1 Xの主張
(1)遺伝子情報保護規則(以下「保護規則」とする)は、診断を受けた者に対する遺伝子情報の開示を制限するものであるが、これは患者Cら受診者が自己の情報を知り、これに従い生活する権利を侵害するものであり、憲法13条に反するものである(情報コントロール権の侵害)。
 これはX自身の権利とはいえないが、Xは遺伝子情報を管理する者であり、Cらの権利を保護しようとした結果処分を受けているから、Cらの権利を援用する適格を有する。
(2)ア 自己の情報を知る権利は強く保障されるべきであり、①重要な目的に基づき、②実質的な合理性を有する必要最小限度の手段によってのみ制約が正当化されるものである。
イ しかるに本件では、①情報漏えいの危険性は受診者への開示規制との関係では問題とならず、その他本人開示を制限する理由はないし、②少なくとも疾病の原因以外の遺伝情報を開示しない(保護規則6条2項)手段は過度に強力であるから、違憲である。
2 Yの反論
(1)遺伝子情報は極めて機微に係る情報であり、患者の体質や病気リスクについての情報を含み、その開示により本人がショックを受ける危険もあるから、ガン告知と同様に患者への配慮も求められ、たとえ成人たる本人が同意していても、パターナリズムの見地から開示規制が正当化される場合がある。具体的には、①目的が正当であり、②手段に目的との合理的関連性があれば、規制は許容されると解される。
(2)保護規則については、①情報漏えい事件が起きたことのほか、先述した遺伝情報の性質から、その開示を制限する正当な目的があり、②患者に不必要なショックを与えないため、同意があっても治療対象に関連しない情報を開示しないことは合理的といえ、合憲である。
3 私見
(1)XYの主張は、遺伝情報を知り、コントロールする権利の存在を前提とするが、そもそもかかる権利が憲法上保障されるかどうかが問題となる。
 憲法13条は人格的利益にかかる権利のみを保障するものと解されるが、遺伝情報は元来人間が知りえなかったものであり、それが不明であったとしても人間として通常の生活を送ることは可能である。科学の進歩により遺伝情報を知りうるようになったとしても、それが前国家的な人権として保障されるものとはいえず、遺伝情報へのアクセスは憲法13条の保護範囲外と解すべきである。
(2)よって、Xの主張はその前提を欠き、またYの言うように本件処分には合理性もあるから、Xの処分を違法とする理由はなく、本件処分は合憲である。

<反省>
問題が難しかったとはいえ、無難な答案を書けなかったのがよくなかったのでしょう。当てはめのしょぼさには改めて驚くばかりです。設問2は時間がなかったので当てはめを放棄したのですが、それは誤りでした。設問1で94条謎理論を展開するひまがあったら…。

設問1は個々の議論の説明をもっときちんと書けるようにしておくべきでした。部分社会の法理とか、うろ覚えになってました。それと、規則そのものの内容面での違憲も書くべきだったのでしょう(これは大きいか)。当てはめももっと丁寧にしないといけないし…。

設問2は保護範囲論でぶった切るという謎の私見を披露してしまいましたが、これは半分ヤケでした。大事な試験なのに何やってるんだ。あえてこの構成を取るとしても、目的手段の検討もすべきでした。

形式面で言うと、反論と私見は論点ごとに書くより完全に分けてしまったほうが分かりやすいのかもしれません。私見がブツ切れになっている印象は否めません。つながったところでしょぼいのでどうしようもありませんが。

<得点を受けて>
かなりよかったので驚いています。多分行政法の方が評価されたんじゃないかと思いますが、憲法も悪くなかったということですね。

個人的には当てはめが弱いと思っていたのですが、問題形式もあって、他の人もあまり充実した当てはめができなかったのでしょうか。あと、しょぼいとはいえ全ての論点につき理由を書こうとしたのが評価されたのかもしれません。相対的によかったというだけでしょうが。
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Author:眠れる豚
名前:眠れる豚
2009年度新司法試験で討ち死にしてしまったため、再チャレンジのために淡々と勉強してきた法務博士(無職)。2010年の試験では何とか合格することができました。

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