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再現答案7(公法系第2問・行政法)

いよいよ最後の答案です。行政法は誘導に乗れるかが全てといってよい科目ですが、一応一通りは書ききったつもりです。しかしどう評価されるかは不明です。


*できる限り正確に再現していますが、後日再現したため、文章表現については本試験より整理・美化されていることは否めませんのでその点は割り引いてください。答案構成や事実の摘示評価内容、法律論の内容については本番を正確に再現したつもりです
*追記部分に反省点を書いていますが、解説や基本書などを見て書いたわけではないので、間違っているかもしれません。参考にされる方がいるとしたら注意してください


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公法系科目第2問 行政法
問題文

[設問1]
1 Bらが提起する訴訟の概要
Bらは、Eがした本件土地の売買契約が違法であるとして、これによりA村に生じた約3200万円の損害についてEに損害賠償請求をすることを求める住民訴訟(地方自治法242条の2第1項4号)を提起するものと考えられる。
これは、住民監査請求を経たことを要件に、当該自治体の住民が裁判所に対して地方自治体が損害賠償請求をするように訴え出ることを認めた、いわゆる4号請求である。以下、Bらがこの提訴資格を満たすか、検討する。
2 Bらの提訴資格の検討
 (1) Bの提訴資格
   Bは現在に至るまでA村の住民であり、地自法242条の住民監査請求を行った者である。よって、監査請求に理由がないと判断された本件では、その通知があった日から30日以内に出訴すれば(地自法242条の2第2項1号)、同1項の要件も全て満たしているから、適法に4号請求を提起できる。
 (2) Cの提訴資格
  ア 一方、Cについては、Bとともに住民監査請求をした時点ではA村の住民であるが、提訴前の5月1日に転出して住民の資格を失っている。このようなCに、地自法242条の2第1項が要求する「住民」としての原告適格が認められるか。当該要件がいつの時点で求められるかが問題となる。
  イ この点、住民訴訟が本来法律上の争訟でない自治体の法律関係について特別に是正・介入の機会を与えたものであることに着目すれば、同項が住民にのみ提訴資格を認める趣旨は、かかる特殊な是正機会を基礎付けるため、当該自治体に是正を求める利益を有する「住民」であることを要求するところにあると解される。
    これによれば、住民訴訟という例外的手段を基礎付ける「住民」要件は提訴時に必要であり、提訴時点で住民でなくなっている者についてはもはや是正のための権利行使を認める必要はないと考えられる。
  ウ よって、提訴時に住民でなくなったCは住民訴訟を提起できない。
 (3) Dの提訴資格
  ア Dについては、現在に至るまでA村村民であるから住民要件に問題はない。しかし、DはBらの住民監査請求には参加していないところ、このようなDは住民監査請求前置の要求を満たしていないとして提訴が認められないのではないか。
  イ そこで住民監査請求前置が要求される趣旨について検討するに、これは住民訴訟が住民による自治体の行為への介入を認めるものであることから、その濫用を防ぐために設けられた要件と考えられる。また、監査請求を前置することで、監査委員の勧告等に基づく自発的な是正(地自法242条9項)を促すという目的もうかがえる。
    これによれば、住民監査請求は問題とされる請求内容ごとにされれば上述の趣旨を達成できるから、必ずしも提訴者全員が住民監査請求に関わる必要はないといえる。もしこれを反対に解すれば、提訴を求めるものが全員個別に同一の事案につき重複する監査請求をすることになり、かえって無駄が生じることになる。
  ウ よって、Bが住民監査請求をしている本件では、これに基づくBの住民訴訟に参加することにより、Dも適法に提訴することができる。
[設問2]
1 地自法96条1項6号、237条2項の議決をしていない点
 (1) 地自法237条2項は、適正な対価なくして自治体の財産を譲渡する場合に法96条1項6号に基づく議会の議決が必要と定めている。
本件では、本件土地を時価より安価で売却したにもかかわらず、この議決を経ていないから、上記規定に違反するとの主張がされると予想される。そこで、「適正な対価」の解釈が問題となる。
 (2) 上記規定の検討
   地自法237条2項及び96条1項6号が「適正な対価」なくして財産を譲渡する場合に議決を要求する趣旨は、適正でない対価での譲渡行為が自治体の財政を害し、またかかる行為は類型的に不正な動機・目的でされることが多いことに鑑み、議会のコントロールを及ぼす必要があるというところにあると考えられる。
   とすれば、ここにいう「適正な対価」とは、時価などから形式的に判断するのではなく、自治体への損害の有無など、実質的にそのようなコントロールを必要とするか否かで決すべきである。
 (3) 本件についての検討
以上を前提に本件が「適正な対価」での譲渡といえるか検討すると、本件では近隣市の通勤圏にある相応の土地について、価格の下限を定めず募集を行い、結果的に合計して時価より3200万円安価での売却がされているから、適正を欠くとも考えうるところである。
しかし、実際には先立つ競争入札で時価を基準に価格を定めたにもかかわらず、10区画中1区画しか応募がなく、その応募についても売却に至らなかったという事情がある。時価で売却できなかった以上、いかなる価格が適正か明らかでないため、下限を設けず交渉により価格を決定することは合理的である。さらに、またA村の過疎状況に鑑みれば、本件土地をそのまま保有するより、これを売却して財政補填や居住者の増加につなげることはA村の利益にかない、このような取引はA村に損害を与える危険性に乏しい。
以上より、本件土地の売却は実質的に見て「適正な対価」の範囲でされたといえるから、議決を欠くとしても違法ではない。
2 地自法234条2項及び施行令167条の2の定める手続によらないと疑われる点
 (1) 地自法234条2項は、施行令167条の2が定める場合を除き、随意契約により自治体が売買契約を行うことを認めていない。本件土地の売買は希望者との間で個別の随意契約によりされており、これは施行令167条の2第1項8号ないし9号の例外により正当化されうると考えられるが、同2項及び3項は最初の競争入札から落札価格を下げるなど、条件変更をしてはならないと定めている。
しかるに、本件土地の売買では、当初時価で募集をしていたのに、価格に下限を設けない形で再募集し、もって随意契約により土地を売却したものであるから、この規定に反するという主張がありうる。
 (2) 上記規定の検討
   地自法234条2項が一般競争入札を原則とし、随意契約を制限する趣旨は、一般競争入札がより公正であることから、自治体としてはまずそちらによるべきであるというところにある。そして、これを受けた施行令167条の2は、一般競争入札によることができないようなやむを得ない場合を列挙した上で、かかる場合には目的達成のため公平性に劣る随意契約を例外的に許容するというものである。
   これを前提に施行令167条の2第2項及び3項の趣旨を考えると、これは先行する一般競争入札の募集価格を不当に高額なものとし、同1項8号・9号の例外要件を強引に満たして随意契約を行うという脱法行為を防ぐための規定であると考えられる。とすれば、同2項・3項で条件変更が禁止されるのは、先行の競争入札の条件が脱法を疑わせる不合理なものであり、あるいは条件変更に理由がない場合に限られるものと解すべきである(このような事情がない場合、1項6号の「競争入札に付することが不利と認められる場合」に該当するものとも考えられる)。
 (3) 本件についての検討
   そこで、本件条件変更が合理的なものといえるか検討する。まず、先行する競争入札の条件について、価格は相場並みに定められており、入札の不調は結果的にそうなったにすぎないものといえるから、先行条件に不合理な点は認められない。
   また、価格に下限を設けないという条件変更の点については、一般競争入札で募集が1区画しかなく、結局全区画について売却に至らなかったことから、A村に不利な価格の設定によらなければ売却の目的を達せられないので、条件変更はやむを得ないといえる。また、時価で売却できなかった以上、いかなる価格が妥当かは直ちに明らかでないから下限を設けない決定も不合理ではない。
   以上より、本件土地の随意契約による売却に際しての条件変更は、施行令の趣旨に反するものではなく、違法とはならない。
3 本件土地売却契約の内容の違法について
 (1) 随意契約においても、行政法の一般原則である、平等原則や信義則が適用される。本件では、10区画について個別の交渉に基づき、400万円から560万円までの幅で売却がされており、一部土地対価の免除を受けた者もいることから、売却条件につき不平等が生じていること、またA村部長の孫や売却担当職員の妻など関係者の身内が相手方となっていることから、平等原則ないし信義則上違法な契約内容であるとの主張がありうる。
 (2) そこで、このような契約内容が違法となるか検討する。まず、平等原則の点について、区画ごとの売却価格相違は、一番大きいものでも160万円であり、これは土地の広さや立地などの条件の相違に基づく範囲にとどまると評価できるし、その相違も個々の交渉に基づいているから、特定人を利したとの事情もない。また、対価の免除があった点も、側溝部分など利用価値がない部分についての免除であるから、特定者に不当な便宜を図ったものではない。よって、本件事情の下では、平等原則違反は認められない。
   また、売却相手方の選定についても、関係者の身内が相手方に含まれていることは確かであるが、本年土地売却については、潜在的需要があると考えられる村民・近隣市町村向けにチラシや新聞広告、現地看板などで広く宣伝しており、身内だけに売却を知らせたというものではないし、現に関係者ではないA村住民の買換えなども見られるところである。よって、本件事情からは、信義則に反するような取引がされたとはいえない。
[設問3]
1 小問(1)について
 (1) 両判決の分析
   東京高判は、地方公共団体は住民訴訟と独立した「本来の権限」として、住民の代表によって構成される議会が損害賠償請求権の放棄をなしうることを前提として、その放棄の可否は議会の合理的判断に委ねられるとして、議決の手続に問題がない旨を認定した上で議会の議決を是認している。
   一方、大阪高判は、住民訴訟を行政の是正手段と位置づけ、住民訴訟によって議会の放棄議決が制限されることを前提として、それでもなお議会が損害賠償請求権を放棄するためには「合理的理由」が必要であるとし、裁判所がその合理的理由の判断に踏み込んで判断する形で、合理的理由を否定して議決を認めなかったものである。
 (2) 両判決の相違点
   以上から、住民訴訟の趣旨について、議会の自発的是正を促す一手段であるという理解(東京高判)と、住民に独自の是正機会を保障したものであるという理解(大阪高判)の相違が認められる。
   この相違から、東京高判では議会は住民訴訟の結果を受けてもなお独自に是正の必要性を判断でき、議会が住民の代表による以上裁判所はその判断を尊重し、議決手続の瑕疵についてのみ審理すると考えるようである。一方、大阪高判の理解からは、一旦住民訴訟で是正が強制された以上、これを覆すには議会といえども相応の理由を要し、裁判所はそのような合理的理由があるかについても審理することになる。
2 小問(2)について
 (1) 両判決に基づき本件を処理した場合の帰結
  ア 東京高判に基づく場合
    上述の通り、東京高判では議会の議決が尊重され、裁判所はその議決に手続的瑕疵があったかどうかについてのみ判断することになる。よって、本件においても、議会が放棄の是非について討議した上で、多数決で適法に議決を行えば、その効力は認められることになる。
  イ 大阪高判に基づく場合
    これに対し、大阪高判では議会が住民訴訟で認められた損害賠償請求権を放棄するためには合理的な理由が必要とされるから、議決をしただけで直ちに適法とされることはない。
    もっとも、本件では大阪高判の事案と異なり、請求を受けるEは十分な資力を有していないこと、本件土地売買以外に放棄する請求権があるわけではないこと、違法な補助金支出という積極的財産流出ではなく対価が十分でなかったという消極的財産流出であってA村にも収入や村の振興という利益が認められる事案であること、EにはA村への大きな功績があることなどの相違があるから、大阪高判の枠組に従っても、本件の放棄議決には合理的な理由があるとして適法とされる余地が十分にある。
 (2) 私見
  ア いずれの見解が妥当か
    この点私は、大阪高判の見解が妥当であると考える。
確かに、東京高判の言うように、議会は住民の代表で構成され、地自法に基づいて独自に是正について決定する権利を有するから、それも尊重に値する。しかし、地自法は、法律上の争訟の例外として住民訴訟を認め、住民に独自に是正を求める機会を保障しているのである。そして、地自法242条の2第1項は、住民監査請求を経た上で同242条9項に基づき議会に要求される「必要な措置」がされなかったことに不服がある場合にも住民訴訟を認めており、議会に積極的是正を要求する手段として住民訴訟を位置づけている。にもかかわらず議会による独自の放棄を軽々に認めることは、このような法の趣旨を没却することになる。
  イ 結論
よって、上述のように、本件でも大阪高判に従い、議決に合理的理由があるかどうかを検討する必要がある。
上述の通り、本件では大阪高判の事案と異なり、放棄議決を正当化する十分な理由があると考えられる。しかし、敗訴理由によっては、議決が正当化されない可能性がある。例えば、新たな事情が明らかとなり、契約内容に平等原則・信義則違反があり、それによってEや関係者が利益を得ているという理由で敗訴した場合には、Eの責任を免除する理由が否定され、放棄議決が違法になることも考えられる。
 以 上


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再現答案6(公法系第1問・憲法)

いよいよ最終日の公法系科目です。昨年は唯一まともな評価をもらえた科目ですが、今年はどうか…。とりあえず憲法は書きにくかった感があります。

*できる限り正確に再現していますが、後日再現したため、文章表現については本試験より整理・美化されていることは否めませんのでその点は割り引いてください。答案構成や事実の摘示評価内容、法律論の内容については本番を正確に再現したつもりです
*追記部分に反省点を書いていますが、解説や基本書などを見て書いたわけではないので、間違っているかもしれません。参考にされる方がいるとしたら注意してください


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公法系科目第1問 憲法
問題文

[設問1]
1 憲法25条に基づく主張
 (1) XはY市長から住民登録抹消を受けたことにより国民健康保険の被保険者としての資格を失い、さらにY市福祉事務所長に生活保護認定申請を却下されたため、必要な医療を受けることができず、貧困に加えて生命・健康をも脅かされるに至った。これは、以下に詳述するように、憲法25条に保障される生存権を侵害する処分違憲である。
 (2) 25条の法的性質
   憲法25条は、国民に最低限度の生活を保障している。憲法11条及び13条が国民の基本的人権や尊厳を保障する趣旨から、25条は単なる理念規定ではなく、それ自体が具体的な請求権の根拠になるものと考える。少なくとも、法律により25条の趣旨が具体化された場合、それに基づいて国民に請求権が生じると解すべきである。
 (3) 住民登録抹消処分の違憲性
  ア 本件では、Y市長はXの住民登録を抹消し、もって被保険者の地位を失わせている。憲法25条より、このような結果を生じさせる処分は慎重にされるべきであるところ、本件事情の下では、Xが形式的に登録された住所と異なる居住実態を有していたとしても、このような生存権侵害を行うことは許容されない。
  イ すなわち、本件では、Xが居住実態を違えているのは、失職により家を退去させられ、団体Aのシェルターも手狭となってしまったからであり、Xに帰責性はない。また、住民に関する事務の処理(住民基本台帳法1条参照)は自治体ごとにされるところ、Xは依然としてY市内で生活しているのであり、Xの住民登録が全く実態を欠くものではない。
    以上の事情からすると、Xは虚偽の届出(住民基本台帳法3条1項)やそれに準ずる義務違反をしたとまではいえないから、このようなXの住民登録を抹消し、被保険者の地位をはく奪したことは25条に違反している。
 (4) 生活保護申請却下処分の違憲性
  ア 本件では、Y市福祉事務所長は、インターネットカフェなどを居住地として認めず、Xの生活保護申請を却下することで、Xに必要な生活保護を与えていない。以下述べるように、これは憲法25条及びこれを具体化した生活保護法の趣旨に反して生存権を侵害している。
  イ 上記却下処分は、生活保護法19条4項の委任に基づいてされている。法1条が困窮の程度に応じて必要な保護を与えることを目的とし、法2条が無差別平等の保護を保障することから、この委任の趣旨は、困窮者に生活保護を与えることを前提として、そのための事務の便宜・効率化のために細目を委ねるにすぎないものと解すべきである。
    しかるに、本件では、Y市福祉事務所長はXの困窮状況を考慮することなく、財政問題や市のイメージという無関係の理由に基づいて要件を解釈し、Xの申請を却下している。これは上述する委任の趣旨に反し、ひいては憲法25条の権利を違法に侵害する処分違憲たるを免れない。
2 憲法14条違反に基づく主張
Y市福祉事務所長がした生活保護申請却下処分は、インターネットカフェなどを「居住地」(生活保護法19条1項1号)に含まないという判断に基づきされている。しかし、他の自治体ではXと同様にインターネットカフェ等に居住する者にも生活保護を与えるところがある。このように、Xが他の自治体と異なる扱いを受け、そこに合理的理由がない以上、前述した却下処分は憲法14条に違反するものである。
3 選挙権侵害についての主張
(1) 公選法21条1項、28条2号等及び住民基本台帳法15条1項の規定は、選挙権の資格となる選挙人名簿を住民基本台帳法の記録に基づいて作成するものと定めており、これにより選挙権行使に「住所」要件を課すことで、住所を有さない者の選挙権を制約している。
  このような「住所」要件に基づく選挙制度法制は、憲法15条1項が「国民固有の権利」として保障する選挙権を侵害するものであり、以下述べる理由により法令違憲である。また、Xについて住民登録を抹消することで選挙権をはく奪した点は、15条との関係でも処分違憲になる。
(2) 制度の合憲性評価
ア 違憲審査基準
  制度形成においては一定の裁量があることは認められるが、15条の保障する選挙権は主権者たる国民が政治過程に関与する基礎であり、ひいては憲法上の権利保障の基礎となる極めて重要な権利である。よって、その制約につながる法制度は、特に厳格に審査される必要がある。
  具体的には、①やむにやまれぬ目的のために、②目的達成のため必要不可欠な手段であるといえる場合に限り、制約は正当化されることになる。
イ 現行制度の評価
 (ア) そこで①現行制度の目的について見るに、公選法が住所要件を定めるのは、選挙人名簿を作成する事務上の便宜(住民基本台帳法1条参照)と推測される。しかし、このような目的がやむにやまれぬものとは到底いえない。
 (イ) 続いて、②制約手段について検討するに、現行公選法は「住所」を基準に選挙人名簿を作成するが、その他にもある時点の居住地で選挙人を確定することも可能であるから、事務処理目的との関係でも、住所を基準とすべき必然性は存在しない。
    また、住所を基準とすることを前提としても、事務処理目的からすれば住所を有さない者の選挙権を否定すべき理由は何ら見出せず、別途住所を有さない者に選挙権を付与する制度を設けることは可能であり、これを怠って選挙権を剥奪することには何ら合理的理由はない。
ウ 以上より、現行公選法の制度は選挙権を不当に侵害しており、違憲といえる。
 (3) 処分違憲
   選挙人名簿は選挙区の単位で定められれば足りるところ、Xは長年Y市に居住しており、住所を失ったのもXの責めに帰すことができない事由に基づくものであるから、このようなXから住居登録抹消を通じて選挙権を奪うことには理由はなく、処分違憲とされねばならない。
(4) 救済手段
  ア 以上のように現行公選法制度は違憲であるから、これに基づいてされた201*年の衆議院議員総選挙は無効とされるべきである。
  イ また、現行公選法の上記不備については、NPOから7年前に請願書が提出されており、改正の機会があったにもかかわらず7年にわたり放置されてきたものである。これは、国会が違憲状態の解消を怠ったものであるから、国賠法上違法となり、Xは国に損害賠償請求をすることができる(国家賠償法1条)。
[設問2]
1 憲法25条違反の点
 (1) 25条の法的性質
まず、被告からは、憲法25条は抽象的な規定であり、裁量の余地が大きい社会保障について定めるものであるから、いわゆるプログラム規定としてそれ自体請求権の根拠とならず、行政が広範な裁量の元で生存権保護の手段を決定できるとの主張がありうる。
たしかに、25条は他の規定に比べて抽象的文言であり、権利保護に当たっても裁量の必要があるから、それ自体が具体的請求権を生じさせると見ることは困難である。しかし、25条を完全な理念規定と見ることは憲法11条・13条の趣旨に反することはXの言うとおりであり、法律によって25条の趣旨が具体化されれば、法律を通じて生存権が保障され、これに基づいて国民に請求権が生じるものと解すべきである。
 (2) 住民登録抹消処分について
  ア 住民登録が抹消された点について、被告としては、これはXが居住実態を欠く場所を住所として登録していたため、住民についての正確な記録のための必要な措置(住民基本台帳法3条)、として行われたにすぎず、保険資格が住民登録に基づいてされることが社会保障政策上の裁量範囲内として合理的である以上、上記措置の結果としてXが保険を失うこともやむをえないものであると反論することが考えられる。
    確かに、住民登録に基づき保険資格を定めること自体は不合理ではなく、Y市長の処分も形式的には法の要件に基づいてされているから、Xへの処分は直ちに違憲とはいえない。しかし、国民健康保険制度として25条の趣旨が具体化されている以上、Xはこれを不当に奪われない権利を有しているから、住民登録抹消に法の適正処理の必要性が十分見出せない場合には、25条の権利を侵害するものとして違憲となるものと考える。
  イ そこで本件抹消処分について検討する。
    被告が主張するように、Xは住所登録地たるA団体シェルターでの居住実態を欠いている。しかし、Xが言うように、これはXの生活苦や不景気によるシェルターの飽和のためやむなくされたものであり、Xの居住実態もY市内である点では登録地と著しく異なるものではないから、住民基本台帳法の目的との関係でこれを抹消すべき強い必要性までは認められない。むしろ、同法が「住民の利便」の増進(法1条)をも目的とすることからは、不況や派遣切りという社会的事情に基づき一時的住居として用意されたシェルターのような住所地については、居住実態との乖離があっても柔軟に取り扱うことが法の目的にかなうともいえる。
    さらに、Y市は、昨今の経済状況やシェルターの意義などについて十分認識した上で、シェルターの居住実態を調査し、Xらが困窮することを承知でXら60名の住民登録を抹消したものであるから、これはXら困窮者への狙い撃ち的処分と評価することができる。
  ウ 以上より、Y市長のした住民登録抹消処分は、適正処理の必要性に基づくものとは評価できないから、憲法25条の生存権を侵害するものとして違憲とされるべきである。
 (3) 生活保護申請却下処分について
  ア 被告としては、「住居地」の認定は生活保護法19条4項の委任に基づく裁量によるものであり、また財政上の制約というやむを得ない理由もあるから適法であると主張しうる。
    しかし、生活保護法は憲法25条の趣旨を「最低限度の生活を保障する」(法1条)ための生活保護支給として具体化したものであり、法19条1項及び2項があえて住民登録ではなく「居住地」や「現在地」を基準に要保護者を定めていることからは、生活保護が全ての困窮者に与えられるべきであることを前提に、それを最も効果的になしうる「居住地」「現在地」の管理者が保護支給をすることを想定し、そのために法19条4項の委任がされているものと解すべきである。このような趣旨に反して、生活保護を支給しないために申請を却下することは、憲法25条及び生活保護法に具体化されたXの権利を侵害することになる。
  イ そこで本件の却下処分を見ると、Y市福祉事務所長は、XがY市内に居住しているにもかかわらず、それがインターネットカフェやビルの軒下であるという理由だけでこれを「居住地」と認めない。これは上述した法の趣旨に沿わないし、生活保護を必要とする困窮者がインターネットカフェなどで仮住まいを余儀なくされている実情からすれば、これらの居住実態に合わせて生活保護を認めないY市の運用は法の趣旨に真っ向から反するものである。
    よって、前記却下処分は憲法25条及びこれを受けた生活保護法19条4項の委任の趣旨に反し、違憲たるを免れない。財政上の理由も本件では確かではないし、市のイメージのためホームレスを排斥するという目的に至っては、25条の趣旨を否定するものであり、極めて問題のある理由付けであって到底許容されない。
2 憲法14条違反の点
憲法14条は合理的な理由に基づく区別を許容するものであるから、地方自治の観点からは自治体ごとの相違は憲法上予定されたものとして直ちに14条違反とはならないものの、そこには区別の合理的理由を要する。しかるに、前記の通り、「居住地」の認定についてY市の運用には合理的理由がないから、このような運用に基づく処分は他の自治体との関係で憲法14条違反となる。
3 選挙権侵害の点
 (1) 違憲審査基準
被告は、憲法44条は選挙人の資格について法律で定めると規定しており、また選挙制度の形成には技術的側面があるから裁量の要請が強く、従って選挙制度については国の広範な裁量を前提として穏やかな審査がされるべきであると主張しうる。
確かに、選挙制度の形成に当たっては、その公正を図るためにも、一定の裁量を前提とするほかない。しかし、Xの主張するとおり、選挙権は国民の権利の基盤となる重大な権利である。そして、本件では選挙権の行使態様ではなく行使そのものが制約されているのであるから、その合憲性については慎重に判断すべきである。具体的には、厳格な合理性の基準、すなわち①目的が重要であり、②手段が目的との関係で実質的合理性を有することが示される必要がある。
 (2) 現行制度の合憲性評価
  ア 目的
    公選法が「住所」を基準に選挙人を確定する目的は、選挙の公明・適正(公選法1条)のため、一律の基準をもって選挙資格を定めようとすることであって、これは選挙の性質上重要なものということができる。
  イ 手段
    そして、そのための手段として一定の基準を設けることは、選挙資格を確定し、選挙区に基づき選挙人を定めることで不正な投票調整を一定程度防ぐため必要であるし、その基準を「住所」とすることは、「住所」が住民基本台帳法7条により記録され、その管理の適正が法律上保障されていることからして十分合理的な選択といえる。
    しかし、上記目的からしても、一旦「住所」を基準に選挙人名簿を作成した上で、住所を有しないものについて、居住地を基準に個別にその資格を審査し、対応する選挙区での選挙権を与えることは十分可能であり、個別審査を経る以上、選挙の適正との関係でこれを禁止する理由は何ら見出せない。
  ウ 以上より、現行公選法が「住所」要件に基づき選挙人名簿を作成することはそれ自体実質的な合理性を有するが、住所を持たない者に選挙権を認める制度を用意していない点で合理性を欠き、選挙権を不当に制約する法令違憲たるを免れない。
 (3) 救済手段
  ア 選挙無効については、前記より前回の総選挙で住所を持たない者の選挙権が制約されていたとはいえるが、これらの者に選挙権を認めるには立法措置が必要である。それがなかったのに選挙権侵害を理由に従前の選挙を無効とすることは、司法権の範囲を超える立法行為と評価されるから認められない。
  イ 一方、国賠請求については、前記のように住所を有しない者に選挙権付与の機会を与えない制度は明白に不合理であり、またこれについては7年前の請願で是正の機会があったのに、現在に至るまで是正されなかったのであるから、国賠法上も違法と評価され、損害賠償請求が認められるべきである。
 (4) 処分違憲
最後に、Xの住民登録抹消については、前に見たとおりXの住民登録抹消には十分な必要性が認められないし、選挙権との関係でもXは昔から現在に至るまで一貫してY市に住んでおり、Y市で選挙権を行使すべき実質を有していたから、このようなXの選挙権を奪う結果となる登録抹消は違憲である。
以 上



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再現答案5(刑事系第2問・刑訴法)

続いて刑事系第2問の刑事訴訟法。これも昨年微妙だった科目なので、無難にまとめたいと思って書いていました。無難にまとまったかは謎です。

*できる限り正確に再現していますが、後日再現したため、文章表現については本試験より整理・美化されていることは否めませんのでその点は割り引いてください。答案構成や事実の摘示評価内容、法律論の内容については本番を正確に再現したつもりです
*追記部分に反省点を書いていますが、解説や基本書などを見て書いたわけではないので、間違っているかもしれません。参考にされる方がいるとしたら注意してください


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刑事系科目第2問 刑訴法
問題文

[設問1]
1 捜査①②について
 (1) 捜査①②については、()甲が捨てたごみ袋を捜査官が無断で入手した点、()ごみ袋の中にあった裁断されていたメモ片を無断で復元した点の2つが問題となりうるので、以下検討する。
 (2) ()ごみ袋の入手について
  ア 甲が捨てたごみ袋を捜査官が入手した行為は、令状なくして物の所有権を取得する領置(刑訴法221条)に当たるように見える。しかし、同条は領置の対象物を遺留物や任意に提出された物としており、ごみ袋はこれに当たらないように見えるから、本件捜査は無令状で他人の物を差し押さえたものとして、違法とも思われる。
    この点、領置が無令状での物の取得を認めるのは、それが所有権放棄のされた客体についての取得であり、侵害利益がないからであるから、それと同じ実質を有するごみの取得についても、領置の規定が類推適用され、適法に取得することはできると解すべきである。
イ もっとも、任意の領置といえども、プライバシー等何らかの利益を制約する可能性はあるから、基本的人権の保障の見地から(1条)、比例原則に基づき捜査の必要性・緊急性と被侵害利益を比較考量して社会通念上相当な範囲にとどまる限りで許容されるものと考える。
 (3) 領置に関する捜査①の評価
  ア 領置規定の類推適用があるか
    捜査①では、甲が公道上に捨てたごみ袋が持ち帰られている。公道は誰もが通行可能な場所であり、かかる場所にごみとして物を置いた場合、もはや取りに帰ることは考えられず、他人の手が及んでも仕方ないという意思が見て取れるから、所有権は放棄されているといえる。よって、221条の類推適用により領置できる。
  イ 相当性の評価
   (ア) 必要性・緊急性
     ごみ袋領置にかかる本件嫌疑は、けん銃の組織的密売という、規模も大きく、凶器の供給で他の犯罪を誘発する点で摘発の必要性が極めて高い犯罪であり、内偵情報などから甲の関与が強くうかがわれている。一方、本件ではA組が慎重に犯行を進めており、顧客が暴力団関係者のみであることから、証拠に乏しく、甲のごみ袋を証拠として調べる必要性が強く認められる。
     また、ごみ袋はしばらくすると収集されて処分されるため、直ちに入手して調べる緊急性が認められる。
   (イ) 被侵害利益
     他方、捜査①のごみ袋は、甲によりごみ袋の所有権が放棄されており、公道に捨てられたことからプライバシーへの期待もほとんど認められないから、その侵害は軽微といえる。
   (ウ) 以上より、捜査①の領置行為は必要性・緊急性が被侵害利益に大きく勝るから、社会通念上相当といえ、領置は適法となる。
 (4) 領置に関する捜査②の評価
  ア 領置規定の類推適用があるか
    捜査②では、甲は居住するマンションのごみ集積所に捨てたごみ袋の内容物が持ち帰られている。甲がごみとして捨てた点では①捜査と共通しており、集積所も誰でも立ち入れることから、甲による所有権の放棄は認められる。
    他方、捜査②では公道と異なり、マンション管理人が管理しているごみ集積所から持ち出されているから、管理人との関係で所有権侵害がありうるのではないかが問題となる。しかし、ごみ集積所は管理されているとはいえ施錠はなく誰でも立入り可能であったのであり、集積物はごみとしてそのまま処分が予定され、対象物が資源ごみであったなどの事情もないから、管理人との関係でも所有権侵害の実質はない。よって、領置規定の類推が認められる。
 イ 相当性
捜査②でも、捜査①と同様、A組の犯罪に関連して高い捜査の必要性が認められる。また、捜査②では捜査①により甲のけん銃売買関与が疑われるメモ片が見つかっており、嫌疑はさらに高まっているといえる。
他方、甲はごみの所有権を放棄しており、誰でも出入りできる集積所にごみを捨てているから、プライバシー侵害は認められず、施錠されていない場所への一時の立入りにすぎないから、マンション管理人の関係でも侵害は乏しい。
よって、相当性も認められ、領置は適法となる。
 (4) ()メモ片復元行為について
  ア メモ片の復元は、領置物を証拠として利用可能にするための「必要な処分」として許容されうる(222条・111条)。ただし、これもプライバシーなどの権利を侵害する可能性はあるから、比例原則に基づく相当性が要求されるものと考える。
  イ そこで相当性について検討するに、捜査の必要性は領置について見たところと同様、極めて高いものがある。さらに本件では、「5/20 1丁→N.H 150」など、けん銃1丁をイニシャルN.Hに150万円で5月20日に売却したという、けん銃売買の記録をうかがわせる記載のされたメモ片が大量にあったから、これらメモ片と組織的密売との関連性が強く疑われる。また、あえて裁断されていることから、証拠隠滅の意図も見て取れ、証拠物として復元すべき必要性・緊急性は極めて大きい。
    これに比して、メモ片はごみとして捨てられており、焼却などできたのに裁断するにとどまっているのであるから、これを復元されることもやむを得ないと考えていたと見てよく、甲のプライバシー侵害はさほど大きくない。よって、相当性も認められる。
 (5) 以上より、捜査①②は持ち帰りの点でも復元行為の点でも適法である。
2 捜査③について
(1) 捜査③では、押収された携帯電話のデータを復元・分析した行為の是非が問題となる。これは、差押物についての「必要な処分」であるから(222条・111条)、捜査①②の復元行為と同様、相当性について検討する必要がある。
(2) 相当性の評価
 ア 必要性・緊急性
   捜査③の押収は、前記の通り摘発必要性が大きいA組の組織的犯罪について、捜査①②を経ても未だに甲の直接関与を示す証拠がない中でようやく得た協力者乙の、甲とのおとり捜査のやりとりの結果を入手するためにされている。そして、消去されていたデータには、同嫌疑についての甲の関与を示す、乙が連絡した相手の記録である発着信履歴が含まれているから、これを復元することはけん銃密売捜査との関係で高い必要性が認められる。
   さらに、本件では乙が自宅で死亡しており、乙が暴力団関係者であることからも、他殺の可能性が十分考えられる。他殺の場合、それ自体が殺人罪(刑法199条)という重犯罪であり、またA組の証拠隠滅行為の可能性もあり、協力者であった乙がわざわざ携帯のデータを消すことも考えられないから、これら犯罪の証拠隠滅としてデータが消去されたおそれもある。よって、殺人等の犯罪捜査のためにも、捜査③の復元行為は必要であったといえる。
 イ 被侵害利益
   他方、発着信データの復元は、乙と通話した相手方の情報を明らかにするものであるから、これら相手方のプライバシーを侵害するおそれがある。もっとも、このデータは通話内容そのものを復元するものではないし、連絡したという事実が乙の携帯に残ることは相手方も知っていたといえるから、これを復元等により見られないという利益は大きくない。
 ウ 以上より、復元行為は社会通念上相当な範囲にとどまるといえる。
(3) よって、捜査③は適法である。
[設問2]
1 前提捜査の適法性について
 (1) 本件捜査報告書は、協力者乙が甲にけん銃密売を働きかけ、その際に甲と会話した内容を録音した結果などを元に作成されている。これら捜査が違法な場合、捜査報告書の証拠能力に影響しうるから、この適法性について以下検討する。
 (2) 秘密録音の適法性
  ア 秘密録音の法的性質
    本件では、会話一方当事者の乙ないし丙女の同意を得た上で、会話相手方の甲に無断でその会話を録音している。これは、220条1項2号の状況でないのに無令状で検証をしたものとして違法捜査とも思えるが、憲法31条以下が国家の捜査権を当然前提としており、刑訴法197条1項但書も軽微な処分について全て法定を要するという無理を定めたものとは解せないから、①相手方の意思に反して②重要な権利利益を制約しない処分であれば、任意処分として許容されるものと解する。
    秘密録音は、相手方に秘密で会話を録音しているから、その黙示の意思に反して相手方のプライバシーを制約しているといえる。しかし、会話の内容自体は相手方も乙ら対話者に聞かれることを認めており、捜査官はその対話者の了解を得て録音しているのであるから、ここではプライバシーが本質的に制約されているとはいえず、未だ重要な権利利益の制約には至っていないと解すべきである。よって、秘密録音は任意処分である。
    もっとも、任意処分であっても何らかの権利利益を制約するおそれはあるから、前記で見たとおり、比例原則の統制に服し、社会通念上の相当性が求められると考える。
  イ 相当性の評価
   (ア) 必要性・緊急性
本件秘密録音は、前述の通り極めて検挙の必要性が高く、また捜査が困難なけん銃密売犯罪について、協力者乙や丙の同意を得て、容疑者甲との会話を証拠として記録するためにされているから、強い必要性が認められる。また、会話内容は録音しなければ確かな証拠とならないから、これを録音すべき緊急性も認められる。
   (イ) 被侵害利益
      これに対して、秘密録音は相手方甲に無断でされているから、そのプライバシーを侵害することは否めない。しかし、前述の通り、甲は会話の内容自体は対話者に委ねているし、会話において甲に特定の発言を強要することもなかった。また、6月8日の録音では、誰に聞かれるかも分からない喫茶店で会話がされており、甲の会話の秘密への期待はさほど高くなかったと認められる。
  ウ 以上より、本件秘密録音は社会通念上相当な範囲にとどまる任意処分として適法である。
 (3) おとり捜査の評価
ア 本件では、乙の協力を得て、甲にけん銃を売るよう働きかけさせ、もって甲にけん銃密売をさせている。これはいわゆるおとり捜査であり、相手の意思決定の自由を完全に制約するものではないから重要な権利利益の制約ではなく任意処分ではあるものの、国家が犯罪を作り出すという側面から、その相当性について慎重な検討を要する。
イ そこで相当性について見ると、前記の通り本件では検挙すべきけん銃密売について他の捜査方法では十分証拠が集まらなかったという事情があり、そのために乙を介して甲に犯行を働きかけたものである。これに当たり、乙は甲に犯罪を強要することはなく、甲が自発的にけん銃売却に応じたものであるし、けん銃の売却先は協力者乙であるからこれによって新たな犯罪が行われる危険性はない。
  よって、本件おとり捜査は犯罪創出の実質を欠き、相当なものとして適法であるといえる。
 (4) 以上より、前提捜査に違法な点はない。
2 本件捜査報告書の証拠能力-総論
 (1) 本件捜査報告書は書面であり、320条1項の伝聞法則の適用を受ける。そして、本件捜査報告書は、司法警察職員Kが録音を反訳したという検証結果を記載した書面であるから、321条3項の書面として、Kの真正である旨の供述により伝聞例外として証拠能力が認められうる。
   もっとも、本件捜査報告書は、甲らの会話内容を記録したものであるから、その会話内容の真実性を前提とする場合には、各供述者との関係で伝聞例外の要件を満たす必要があると解される。伝聞法則の趣旨は、伝聞証拠には供述者の知覚・記憶・表現叙述の各過程に誤りが含まれる危険があるため、これを反対尋問等でチェックする機会を保障することにあるから、書面が供述をその内容とする場合、その供述者との関係でかかる機会に代えるための例外要件が認められねばならないからである。
 (2) よって、以下では、要証事実との関係で、伝聞法則にもかかわらず証拠能力が認められるかどうかを検討する。
   なお、本件では検察官は会話の存在・内容を立証趣旨とするが、立証趣旨については裁判所が実質的に評価して決すべきである。証拠の評価は裁判所に委ねられているし、立証趣旨の明示は審理の便宜のためされるにすぎないからである。
3 本件捜査報告書の証拠能力-各論
 (1) 反訳1(6月7日)の内容
  ア 甲の会話との関係
    反訳1での甲の会話は、聞き取れなかった部分が多く、それ自体としてけん銃譲渡罪を立証する意義を有するものではない。よって、この点について証拠能力を問題とする必要はない。
  イ 乙の会話との関係
    一方、乙の会話については、甲との会話後に「甲がけん銃を売ることについての話し合いに応じてくれた」というのは、それが真実であれば甲からけん銃譲渡の申出があったことを証明することになるから、捜査官に対する第三者の供述として321条1項3号の要件を満たさなければ証拠能力が認められない。
    そこで同号の要件を検討すると、本件では乙は死亡しており、供述不能要件を満たす。また、その内容は甲のけん銃譲渡罪を証明するものであり、捜査の困難さからその他に有力な証拠がないため、犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものといえる。そして、特信性については会話状況や内容から認定される外形的付随的事情により判断すべきところ、問題となる反訳部分は甲との会話の後、協力者である乙が会話内容を任意に要約して記録したものであるから正確といえ、喫茶店で打ち合わせがされたという客観事情にも沿うから、特信性があるといえる。
    もっとも、本件反訳には供述者乙の署名押印(321条1項柱書)が欠けるが、これは供述内容と記録内容の同一性を担保するためのものであるところ、本件では反訳は録音内容をそのまま再現したものであり、録音の分析等により同一性も検証できることから、署名押印は不要と考える。
    以上より、乙の会話部分は321条1項3号の要件を満たし、証拠能力が認められる。
 (2) 反訳2の内容
  ア 甲の供述との関係
    反訳2の甲の供述内容は、「1丁150万円」などとけん銃らしきものの売却を申し出る部分についてはその存在自体がけん銃譲渡の申出をうかがわせる証拠価値を有する。また、「りんごの箱に入れて(乙の)マンションに宅配便で送る」旨の内容は、乙方にりんごとともにけん銃2丁が宅配便で送付されていた客観事実との符合から、甲が乙にけん銃を送付したことを推認させるものである。これらはいずれも、会話内容の真実性と関係なく甲の犯行を証明するものであるから、非伝聞であり、伝聞例外によらず証拠価値を肯定できる。
    また、甲の発言であるかどうかという点についても、乙による「甲と話した」旨の供述部分や、録音内容の分析などによって甲が発言したと分かるから、関連性も肯定できる。
  イ 乙の供述との関係
    反訳2の乙の供述部分は、甲とけん銃の取引について取り決めた旨の内容であり、反訳1部分と同様に321条1項3号の要件を満たすから、証拠能力が肯定される。
 (3) 反訳3の内容
  ア 甲の供述との関係
    反訳3の甲の供述内容は、「物がりんごと一緒に届いただろうから300万円を支払え」というものであり、前述した客観事情と合わせると、けん銃の対価として300万円を要求した事実という、けん銃譲渡罪の証明につながるものといえる。これも、内容の真実性に関係なく、要求したこと自体が証明に役立つものであるから、非伝聞として証拠能力が認められる。関連性についても、通話記録などから甲が相手と分かるので、問題はない。
  イ 丙女の供述との関係
    反訳3の丙女の供述は、甲の犯行を示す意味を持っていないから、検討するまでもない。
4 以上より、本件捜査報告書は前提捜査を考え合わせても証拠能力を肯定できる。
以 上






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眠れる豚

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2009年度新司法試験で討ち死にしてしまったため、再チャレンジのために淡々と勉強してきた法務博士(無職)。2010年の試験では何とか合格することができました。

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