スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

9月29日の記録

今日は夕方から勉強会仲間との飲み会に行ってきました。僕の勉強会では5人中2人が諸事情により受験せず、3人のうち2人が受かったという感じです。僕も受かっているはずだと思っていただいていたのですが、まぁ残念だったということです。自分はともかく、クラスメイトの既習生はほとんど受かっているので、それは素晴らしいことです。

飲み会では試験以外の話題でも盛り上がりましたが、一応試験についても相談してみました。勉強会を通じての感想としては、(前から言われていたのですが)内容はともかく読みにくさが気になったということでした。
字が小さく詰まっていたり汚かったりするのもそうですが、改行があまりないとか項目立てが整理されていないという形式面の問題や、議論の進行や文体がややこしく、頭を使わないと理解できないところがあるような気がしたということです。割と致命的な感がありますが、確かにそういうところはあるのかもしれません。

もちろん勉強もすべきではありますが、あまり深く考えずに、割り切って書くことも必要ではないかということで、そういう方面の努力(?)も必要なのかもしれません。一方では、基礎的な知識をきちんとつけることで書くべき内容にブレを出さずに時間を短縮し、一方では書くべき内容とそうでない内容をきちんと選別するというところでしょうか。
実際、上位合格者との違いについて聞いてみると、(死亡した民法と刑事系はともかく)おそらく気づいている論点はほとんど変わらないし、事案に対する切り込み方もそこまで足りないというわけではないと思います。ただ、僕は書くべき内容をきちんと書いていないし、書いている内容もあまり整理されていません。基礎から順に叙述していくことで、思考過程を分かりやすく見せていくような答案作りの方法をマスターすることが、来年に向けた課題になりそうです。

そんな飲み会があったので勉強時間はいつもより少なめです。刑法のまとめが文書偽造罪まで終わり、明日で全部終了というところです。
今後も、用事のない日は1日1演習をノルマにしつつ、10月からは科目まとめに加えて短答の勉強も少しずつはじめることにします。昨年作った誤答まとめを読みつつ、一通り記憶を喚起したら問題でも解いていくことになりそうです。
スポンサーサイト

9月28日の記録

今日は事例研究民事法の4問目に挑戦。3問目は出題方法が微妙&特筆すべき論点もなさそうだったので軽く解説だけ読むにとどめました。
4問目は集合物譲渡担保と所有権留保の関係など、個人的に手薄な部分からの出題。というわけで何言ってるんだという感じでした。解説を読み、関連する部分の基本書を読むなどして、整理して理解できたようなのでよしとします。問題ででも当たらない限り、こういう苦手箇所は避けてしまいがちなので、今後も問題を解きつつ1個1個弱点をつぶしていくことにします。

あとは刑法各論のまとめを。さすがに財産犯は重く、予想よりハードでしたが、盗品等関与罪を除いて終わりそうな感じです。財産犯は何だかんだいって出題が避けられない場所だと思いますので、今後も中心的に勉強していきたいところです。

9月27日の記録

今日は昼から事例研究民事系の2問目を書いていました。
不動産の所有権移転登記に関する94条2項類推適用や表見代理などの問題があり、その辺は結構書けた気がします。ただ、94条2項類推で求められる要件については、事案ごとに重視すべき点が違ってくるというのは、今後もっと反映させていきたいところです。何となく覚えてはいたのですが。

表見代理と無権代理人の責任追及の関係とかも一応覚えていたのでそのあたりの説明もそれなりには書けましたが、最後の設問は自分がメインに書いた法律構成が解説に全然書いてなかったのでちょっと萎えました。一応ありうるとは思うんですけどね…(謎ですが)。

というわけで今日解いた問題についても重要な解説をまとめておきました。結局今回も3時間弱でちょうど8枚というぬるい解答です。あせればもっと書けたのですが、読みやすさをテーマにしているので筆が遅くなってしまいます。結果的なアウトプットでは、あまりあせらず書くほうが良い気はしています。

それからだらだらと刑法各論のまとめ。窃盗罪まで終了しました。明日は財産犯を一気に終わらせたいところ。

9月26日の記録

今日は某方面で普段お世話になっている方々に誘われて焼肉に行ってきました。忙しい中時間を割いてくださり、とてもありがたいことです。来年は上位合格する旨約束してしまったので、そういうことで頑張りたいです。

そんなわけで今日の勉強量は若干少なめで、刑法総論をまとめ終えるだけでした。
共犯論はやはり手ごわかったですが、これは頻出論点ですし、処罰根拠など基本的な理解から一貫して議論を展開できるよう、丁寧にまとめたつもりです。これはどの科目でもそうですが、論証をいちいち覚えるというより、理解したうえで当然のように書けるレベルまでいくのが目的です。

罪数論もまとめてみると意外と興味深い論点がありましたが、答案作成上はそこまで重要でもなさそうではあります。それでも、こういう余裕のある時期に一度まとめておくことで、何か生きることはあるでしょう。去年は「困ったら併合罪」レベルの人間でしたが、さすがに二度目でそれは情けないですからね。

ちなみに総論は全部でA4・35頁になりました。これを多いと見るか少ないと見るかですが、おそらく必要な論点・理解をほとんど網羅したものですから、これを全て理解し、判例や問題などに当たれば、試験当日に困ることはなくなるはずです。少なくともこの3日くらいで、今年自分に足りなかったものがたくさん見つかったので、これを各論でも継続し、さらに他の科目でもやっていければというところ。

9月25日の記録

昨日で民法のまとめも一段落したので、一度答案を書こうということで「事例研究民事法」の第1問を書いてみました。
未成年者のした売買契約絡みの、民法や消費者契約法の問題と、訴訟手続に関する民訴法の問題です。執行法の問題もあり、一応ローで履修した(試験はというと、かなり対策したのに寝坊して受けなかった…!)ので解けなくもないとは思うのですが、関係ないかと思いこれはパス。解説を読んだら、そんなことかという内容でしたが。

問題が別になっていないので書きにくかったり、分量的に何時間くらいを想定しているのか不明(解答例を見ると8頁では足りない長さなのですが4時間の問題にしては少ない)ということもありますが、まぁ勉強にはなるのかなぁと。内容としては普段勉強しなかったところを聞かれ、うろ覚えで条文を引きながらそれらしいことは書きましたが、未成年者の詐術の要件とか、訴訟無能力者に対する送達がどうとかいうのはちょっと微妙でしたね。後でまとめておきます。

それより気になるのは答案の作成で、やはり答案構成をきちんとしないクセがあるというか、きれいに答案を書けていない感じがします。字もついつい小さく読みにくくなってしまいますからね。スピードに関しても、ゆっくり書いたとはいえ今回の問題で2時間半に起案量8頁では遅いですね。久しぶりの答案作成とはいえ、これから苦難が多そうです。

そのほかの作業としては、刑法のまとめノートの続きを作成していました。総論を全部終えようと思いましたが、まだ共犯部分が残っています。もう少しやっておきますが、今日の総論制覇は難しそうです。無念…。

9月24日の記録

今日は一日暇だったのですが、あまり勉強できなかったような。

とりあえず類型別7章(債権譲渡)のまとめを終え、類型別のまとめが終わりました。
第三者対抗要件具備による所有権喪失の抗弁に対する第三者対抗要件具備の再抗弁で、二重譲受人に先立つ対抗要件具備を主張立証しなくていいというのは初めて知りました。確かに判例だと先後不明ならいずれの譲受人も債務者に弁済を請求できますから、そうなりますね。実体法の議論から主張すべき内容が決まってくるというのは重要なことで、試験でもこういうところを聞いてきている気がします。
あと、ついでに抵当権の物上代位と債権譲渡等の関係なども追加的に入れておきました。

類型別のまとめを終えて、これは試験前に一度やっておくべきだったなぁと今さらながら後悔しています。あと1週間やってただけで今頃飲み会にでも繰り出せたんじゃないかとか、そういう要らないことを考えてしまいますが、むしろ来年は落ちる理由がないはずだと前向きに行くことにします(実際にはまだまだ埋めるべき点はありますが!)。

あと、刑法のまとめも開始してみました。これまで授業などでお世話になった山口・西田両氏の教科書を中心に、総論のうち違法性の部分までをあらかたまとめてみました。150頁くらいの内容がわずか(?)10頁になり…というと最終的には100頁くらいになりそうですが、これを作ってひたすら回しまくれば知識的には抜け漏れがなくなるはずです。66点などという数字は二度と取りません。

刑法の方は、どちらかというと教科書を要約する感じで、普通に文章の形でまとめつつ、いわゆる論点的部分は意識して作文する(かませ犬的反対説を一応補筆したり、よさげな説を選んだりしつつ)というふうにやっています。この辺は科目ごとにやり方を工夫してみることにします。全科目で同じ濃度でのまとめノートをつくるのかという問題もありますが。

9月23日の記録

この日は夕方から今年合格した友人と飲んでいたのでちょっと勉強は少なめです。

彼は勉強会でも一緒だったのですが、かなりの上位合格をしていました。話をしていて、失敗した部分をきちんと復習して試験に臨んでいたということを聞き、そこが僕と彼との差を作ったんだなぁと実感しました。あと、類型別くらい試験前に読んどけと怒られてしまいました(笑)。だから今読んでるんですよ。

そんな本日の勉強内容はというと、類型別を6章までまとめ終えたというところです。他のところで出てこなかった代理関係の攻撃防御方法を入れておきました。新兵器として昔購入していた要件事実マニュアルも使用してみたのですが、押さえるべき内容を把握するにはよいですね。マニュアル読んでるだけだと丸暗記野郎になってしまいそうですが、他の教材の補完として使うにはよい辞書的ツールだと思います。

翌日は類型別のまとめを終了し、刑法のまとめに入ろうかと思います。また、答案つくりの演習も少しずつやっていこうかというところです。書いてダメだったところをまとめるという作業も大事だと思いますので。

9月20~22日の記録

この期間は両親が上京してきて、部屋の掃除などをしてくれました。

当然ながら今後の予定なども話しましたが、勉強については好きなようにやればいいと言ってくれて、すごくうれしかったです。それだけに、勉強をさぼって不合格になってしまった自分に腹が立ちます。来年はもう失敗できません。

おそらく3月頃まで東京に残り、後輩や同期との勉強会に参加しようと考えています。人に読んでもらうことが大切だと思いますし、一人で勉強し続けるというのも辛いですので。
試験自体は実家に帰省して受験する予定です。4月5月は追い込みの時期ということで、家で食事など作ってもらって生活リズムを整えつつ、ひたすらインプット&アウトプットで完成度を高めていきます。それまでの素地つくりが年内の仕事かなぁというところ。

というわけで類型別5章の途中までをまとめ終えました。改めて、本試験では要件事実の基礎をきちんと押さえておくべきだったと後悔させられる内容です。今月中には間違いなくまとめ終わるのですが、その他民法の重要論点をまとめ、引き続いて戦犯と思われる刑法のまとめをしつつ、そろそろ書いていく作業をはじめていきたいというところ。

その他、有斐閣アルマの刑事訴訟法を読んだり、伊藤眞先生の民訴教科書を若干読んだりしましたが、両親が来てくれていたので勉強のペースは少なめでした。継続できるよう、無理なく急ぐという方向でやっていくことにします。こんなペースでも去年よりはずっと勉強している(!)ので。

論文成績発表

先ほど司法試験委員会から成績が届いたので見てみました。

公法系 135.54/200
民事系 117.17/300
刑事系 66.50/200
選択  55.20/100
総合得点(短答含み調整後) 784.26
総合順位 2054

合格基準点 785
合格者数 2043


というわけで、0.74点を追いかけて残り8ヶ月弱を過ごします。
この結果は司法試験委員会が悪いとかそういうのではなく、民事系と刑事系で不良答案を書いた自分が悪いのです。まぁ、刑事系短答で最後に3点問題を直して誤答にしていなければギリギリ受かったのかと思うと萎えないでもありませんが、結果は結果です。

点数を受けた反省などは各科目の不合格答案再現に簡単に補筆しておきます。

9月19日の記録

今日は山口各論を読み終え、高林先生の「標準特許法」を通読したほか、民法のまとめノート作成をはじめることにしました。恥ずかしながら真面目にまとめノートを作ったことがほとんどなかったのですが(短答は誤答をまとめたりしたのですが)、まとめてみると成果物もさることながら頭が整理されて良いですね。

科目ごとに特性や試験傾向が違うので、まとめの必要性や望ましい方法も違ってくると思うのですが、民法は要件事実中心にまとめるのがよいかと思い、類型別をベースに手持ちの教科書で実体法的議論を追加していくという感じで作業しています。
これだと実体法的構成によって要件事実に違いが出てきうることが意識できてよいという反面、実体法の重要論点を全てカヴァーすることはできません。今日は類型別第1章(売買契約)の攻撃防御方法をまとめましたが、意識的に錯誤無効の議論を入れたりしたものの、関連する全ての議論を押さえているわけではありません。これは別途作業すべきところでしょうね。

とりあえず民法は類型別ベースでのまとめを続け、その他科目としては憲法で重要論点について判例の文言中心のまとめ+違憲審査基準論のまとめ、刑法は主要論点別の整理、選択科目の知財法も主要論点別の整理ということをやろうと思います。他の科目も重要事項については適宜まとめて整理できればというところです。

9月18日の記録

今日は内田民法Ⅲの続きを読み終えてから山口刑法各論へ。

山口各論は個人的法益に対する罪の部分を読み終えたところですが、初読なので割と新鮮です。自分の書いた答案の間違いなども分かり、こういうのをきちんと読んでおくのも大事だなぁと思わされます。

これまで若干受けたことのある答練なんかでは、あまり復習せず、それなりに良い点数だったのでこんなものかなぁと放置していたところがあります。今思えばそれが間違いで、一回ごとに関連部分を復習し、基本書を読み直すことでよりよい答案のイメージを作っておくくらいのことをしておくべきだったのでしょう。これまで復習という文化がなかった、受験生的には蛮族のような人間だったのですから、これは落ちて当然です。

この8ヶ月で文明化して、まともな答案を書けるような受験生になりたいものです。というわけでもう少し教科書を読み進め、それからぼちぼち演習っぽいこともやっていきたいなぁというところです。
勉強は不毛ですが、なんというか去年やりたりなかったことがたくさんあることに気づけたので、気力さえ持てば新鮮さを失わずに勉強していけそうな気がします。

9月16~17日の記録

この2日間も基本書読みです。内田民法Ⅱ,Ⅲ(Ⅲはまだ半分くらい)を読みつつ、気分転換に山口刑法総論を読むことに。

刑法の教科書を読むのが気分転換なのかどうかよくわかりませんが、非常に分かりやすく感じました。
昔初版を持っていて、初めて読んだときには非常に難解に感じたのですが、今回読み直してみると、2版になっていくつか説が改まっていることもあるのかもしれませんが、明快な議論だなぁと思わされました。もっと早くに精読しておけば今年もあんなクソ答案は書かなかったかもしれません。

思えば、これまで試験前に場当たり的に基本書を読み散らかしていただけで、落ち着いて基本書を通読する機会はそれほどなかった気がします。特に刑法は実のところ苦手意識があり、結構適当に勉強していました。今回の答案も、基本的な構成からぶっ飛んでいて、受験生としての基礎がなかったというべきです。

これを機にきちんと勉強しなおし、アウトプットにも慣れることで、来年の試験では恥のない答案を書きたいものです。出来のよい答案を書いていると気分の良いものがありますが、本番でそういう気分になれるといいなぁ…なんて。今年は1科目もそうならなかったので。

そういえば今日で不合格の発表から1週間です。かなり気持ちも落ち着いてきました。このシルバーウィークに親が上京してきていろいろ話し合うことになりそうなので、その後具体的な勉強計画を詰めていきたいところです。

9月14~15日の記録

昨日は江頭先生の「株式会社法」を通読。これは読み通すものではありませんが、重要部分だけにラインを引いていくと、ある程度の短答対策も含めて2~3時間で回せるようになりそうです。今回は読んでいただけですが、次は重要部分を意識しつつラインを引き、読み込み体制を作りたいです。
会社法も出題されそうな事項は限られていると思われるので、基本を押さえるのが重要のような気がします。

今日は大学生協で新しく基本書や演習書を仕入れてきました。要件事実はよいものがなかったのですが、知財は2冊演習書を購入したので、これを試験までにやりこむことにします。とりあえず「知的財産法演習ノート」を1問やってみたら、いきなり共同発明と発明者の冒認が絡む(問題との関係では必ずしもメインではないが)問題で、これをやっておけば今年の問題もちょっと整理できたかもしれません。選択科目はほとんど対策なく受けてしまいましたが、来年は逆に武器にしていきたいところ。

あとは何となく芦部憲法を通読。憲法は主要人権パターンと違憲審査基準・処理方法などをまとめておきたいなぁと思いました。公法系はそういう感じで何とかなりそうな気がします。

引き続いては内田民法をⅡから読み進めつつ、移動時間などには類型別を読むことで民法を中心に復習していこうかと。
同期で落ちてしまった友人などと勉強会で「事例研究民事法」に取り組む予定なので(何か執行法とかも入っているのでやや微妙なところもありますが)、しばらくはどちらかというと民事系中心で進めていくことになりそうです。とはいえ同じ科目ばかり読んでいると気がめいるので、今の段階ではいろいろ織り交ぜて読んでいきたいところ。

9月13日の記録

今日は「要件事実論30講」を読み直していました。今はざっと読んでいる感じですが、改めて読み込むべき箇所がいくつかあると感じているので、また戻ってくると思います。

僕の答案にはいろいろ至らないところがありましたが、そのうち大きかったのは要件事実を踏まえた民法の理解でつまずいていたところなのかな、と感じています。ローの授業でやったきりで、その後要件事実をきちんと整理して勉強してこなかったのは痛かったです。今度の試験までには、一通りの紛争類型について、実体法との関係できちんと理由付けをしながら要件事実について議論できるようにしておかなければなりません。

今日も友人に話を聞いてもらって元気が出ました。来年は絶対合格しないといけませんね。

9月11~12日の記録

まだ本調子ではないので、9月は基本書などを読み直すことを中心にして頭を復活させようと思っています。10月からはぼちぼち短答対策をはじめつつ、要件事実などを中心とした基礎の復習と、合格者答案の研究などをやっていく予定です。

この2日間は精神的にへこんでいて、あまり基本書を読めませんでした。
とりあえず軽くて読む楽しさもある「『憲法上の権利』の作法」(小山剛)を読み直し、それから書研の民訴講義案を一通り読み返しました。こんな論点あったなぁという感じです。

今はまだ読み込んで理解しようというわけではなく、記憶を喚起するために読み直している段階です。実はこれまで内容のまとめなどを自分でやっていなかったのですが、科目によってはそういうことをしてもよいかもしれません。それも含めて、本を読みながら考えることにします。

友人たちのおかげで精神的には楽になってきているので、徐々に調子を上げていきたいところです。

2009年新司法試験不合格答案再現(7.刑事系第2問:刑訴法)

これで答案再現は最後です。
貼るだけとはいえ、ちょっと時間を使ってしまったので、今日はこのくらいにして勉強することにします。9月中は基本書の読み直しで頭を回復させられればというところ。しかし昨日内田民法を1冊読んだところ「またこれを読むのかぁ」と萎えまくってしまいました。昨年のツケなのでしょうがないです。



4日目 刑事系第2問・刑訴法(100点)  問題

*得点:66.50/200(刑法含む)

〔設問1〕
1 捜索差押中の写真撮影の適法性判断基準
(1)写真撮影は、五感を用いて事物を認識するための一手段であるから、刑訴法上の検証(刑訴128条)に該当するものと考えられる。とすれば、捜査機関による検証は原則として裁判官の発する令状によらねばならず(218条)、本件の写真撮影はいずれも無令状でされているから違法になるとも思われる。
(2)ア この点、222条が準用する111条から、写真撮影が必要な処分として許されると解する見解もある。しかしながら、写真撮影が令状発付を要する強制処分だとすれば、これを「必要な処分」として可能とすることは強制処分法定主義に反することになり、支持できない。
 イ そこで、写真撮影は一律に強制処分とはいえず、任意処分として許容される場合があるものと考えるべきである。すなわち、強制処分とは①相手の意思を制圧して②重要な権利利益を侵害する行為であると解されるところ、これに当たらない程度の写真撮影であれば、任意処分として捜索差押えとともに行うことも許されると考える。
 もっとも、任意処分としても、何らかの法益を侵害することは否定できないから、比例原則の観点から無制限には行えないと解すべきである。具体的には、必要性、緊急性と被侵害利益を比較考量し、社会通念上相当といえない行為については、任意処分の限界を超えるものとして違法とされる。
(3)さらに、写真撮影の内容によっては、それが撮影対象の捜索差押えと同視できる場合が考えられる。この場合、強制処分たる捜索差押えとして捜索差押令状の範囲内でのみ許容される。捜索差押えと同視できるかどうかは、撮影対象の性質や撮影内容から、撮影対象が含む情報が取得され、差押え同様のプライバシー侵害がされたかどうかにより判断すべきである。
 また、この場合、令状の範囲内に形式的に含まれるだけではなく、個々の撮影行為につきその必要性と相当性が満たされなければならない。令状主義は処分時においても事件との関連性や処分の必要性・相当性について判断することを要求しており、令状審査もそれを前提としてされているからである。
2 写真①撮影の適法性
(1)写真①は、室内の壁面を撮影したものであるが、これは捜索を受けた者の黙示の意思に反しうるものの、捜索を受けている部屋の壁面を撮影するにすぎず、プライバシーの強度な制約とはいえないから、重大な権利利益の制約といえず、任意処分の範囲内である。
(2)そこで、任意処分として許容されるものであるかどうかにつき検討すると、以下の通りである。
ア 必要性について、写真①は「1/12△フトウ」と書かれた跡を撮影したものであるが、供述調書によれば、甲が1月11日に乙に電話し、「明日の夜(1月12日)、M埠頭でVを殺す」旨話しているとされ、この供述と壁面の跡は日付、場所(△にはMが入ると思われる)の点で一致する。そして、撮影対象が電話台の上の、カレンダーで隠れた壁に記された文字の跡であることを考えると、これは乙が甲の電話を受けて密かに覚え書きをしたものと強く疑われる。よって、事件との関連性があり、これを保存すべき必要性が肯定される。
イ 緊急性について、撮影対象には消し跡があり隠滅が図られているから、早急に保存しないと完全に消されてしまうおそれがあり、緊急に撮影すべき事情がある。
ウ 撮影による被侵害利益について、撮影は壁から30センチメートルの近距離からされており、文字の記載部分のみを撮影し、他の物が映らないよう配慮されているため、プライバシーの制約は低い。
(3)以上より、写真①の撮影は、高い必要性と緊急性が認められるのに比して、侵害される利益は小さく、社会通念上相当な行為といえるので、任意処分として適法である。
3 写真②撮影の適法性
(1)写真②は、Aが名義人であるX銀行の預金通帳につき表紙及び印字されている全てのページを撮影したものである。ここで、預金通帳は、その名義人のほか、印字されている預金額やその変動を情報内容とするものであるから、これを全て記録するような写真撮影は預金通帳の差押えと同視すべきである。
(2)ア そこで、この写真撮影が令状の範囲内であるかどうか検討すると、令状記載の差押対象には預金通帳が含まれており、令状の範囲内とも思われる。しかし、Bの発言や通帳の名義によれば、X銀行の通帳はAの所有物であるところ、場所に対する令状の効力が場所内にある他人の物にまで及ぶかが問題となる。
イ この点、差押えにおいて対象の明示が要求される(憲法35条)理由は、それにより捜査機関の権限濫用を防ぐ目的のほか、対象を明示した上で差押えの必要性や事件との関連性など「正当な理由」を判断することで不当な権利侵害を防げるということにあると解される。ここからすれば、捜索場所にある物についても、捜索場所を管理する者の管理権下にあれば、事件と関連する証拠が存在する蓋然性において同一であるといえ、令状の効力が及ぶと解せる。
 本件でのX銀行通帳は、乙が代表取締役として管理している会社の中にあり、乙のパスポート等が入っていたレターケース内に入っていたものであるから、捜索場所の管理者たる乙の管理権が及んでおり、令状の効力も及ぶ。
(3)そこで進んで、写真②の撮影が必要性、相当性を有するか検討すると、以下の通りである。
ア X銀行の通帳には、1月14日の取引欄に現金30万円の出金があり、その右横に「→T.K」と書き込みがある点に特徴があるところ、甲の供述調書によれば、甲は1月15日にVを殺害した報酬として乙から30万円を受け取っており、甲(甲野太郎)のイニシャルがT.Kであることからすると、金額の一致や書き込みとイニシャルの一致から、通帳の記載は乙が甲への報酬支払いの前日にこれを用立てるため出金したことをうかがわせ、事件との関連性が認められる。よって、差押えの必要性がある。
イ X銀行の通帳は現在も使用されているが、預金の出し入れについては不定期のものが多く、日常生活に用いているものとは見えないため、プライバシーの程度も高いものではなく、これを撮影することは相当といえる。
(4)以上より、写真②の撮影は、実質的に差押えであるが、その要件を具備しているため、適法である。
4 写真③撮影の適法性
(1)写真③も、預金通帳の表紙及び全部の印字部分を写真撮影したものであるから、実質的な差押えであり、また捜索差押令状の範囲内にある。
(2)そこで写真③の撮影の必要性と相当性を評価すると、以下の通りである。
ア Y銀行の通帳には、カードによる不定期の出金はあるものの、事件との関係で疑わしい記載はなく、書き込みなどの特徴も見られず、差押えの必要性は認めがたい。
イ 同通帳は、T社からの入金が定期的にあり、T社からの給与振込みと考えられるから、T社社員で通帳名義人であるAが使用する口座の通帳であると思われる。そして、電気代や水道代などの出金があるから日常的に使用する口座と思われ、その内容は生活態様などの高度なプライバシーに関わるから、これを差し押さえることは相当ではない。
(3)よって、写真③の撮影は、必要性・相当性を欠く差押えとして違法となる。
5 写真④撮影の適法性
(1)写真④はパスポート、名刺、はがき、印鑑などを名義の部分や刻印部分につき撮影したものであるが、これらの撮影物は名義を示した部分に重要な情報があり、当該部分の撮影は差押えと同視すべきである。
(2)そこでかかる差押えが認められるか検討すると、捜索差押許可状の差押対象にパスポートなどは含まれておらず、これらを「メモ」や「ノート」と捉えることもできない。
(3)よって、写真④の撮影は令状範囲外の差押えとして無効である。
〔設問2〕
1 (1)検察官は本件の実況見分調書を被告人の犯行可能性を示す立証趣旨として証拠調べ請求しているが、裁判所は検察官の立証趣旨に拘束されるものではなく、その実質的な事実との関係で証拠能力を判断すべきである。
 本件実況見分調書は司法警察員Pが実験結果を記載したものであり、321条3項の書面と思われるが、その実質は被告人による犯行再現として、弁護人の主張するように被告人の自白を内容とする部分が含まれると考えられる。そこで、以下①そもそも犯行再現が許されるか、②犯行再現の記録が実況見分調書となりうるか、③犯行再現の記録の証拠能力を認める要件、につき検討する。
(2)まず前提として、被告人に犯行再現をさせることが許されるか。犯行再現の強要は被告人の尊厳を無視するものであり許されないとの見解もある。しかし、任意である限り、かかる再現行為が違法とはいえない。
(3)では、被告人の犯行再現を記録したものが実況見分調書となりうるか。この点、そのような記録が321条3項の「検証」といえるかが問題となるが、再現方法などを被告人に指示し、再現の準備をした上で周囲の環境との関係で被告人の犯行再現状況を記録することは、捜査官がその専門知識に基づき調べた結果の記載といえるから、実況見分調書としての性質を有し、321条3項の適用を受ける。
(4)もっとも、犯行再現の記録が実況見分調書となる場合も、それは実質的には被告人が犯行につき供述し、自白している内容であるから、321条3項の要件だけで証拠能力を認めるべきでなく、自白につき規律する322条1項の要件も満たすことが求められると解すべきである。
2 (1)以上を前提に、本件実況見分調書の具体的な証拠能力を検討する。なお、調書の内容は可分であるから、その証拠能力は個々の記載ごとにその性質を判断して決するべきである。
(2)ア 調書のうち、岸壁から5メートル離れた地点に停止した車両を甲が指差している写真、人形を引きずっている場面の写真、運転席に入り操作をしている場面の写真と、それぞれの説明記載は、被告人が犯行態様につき説明し、被害者に見立てた人形を用いて犯行を再現した動作による供述といえるから、被告人の自白を内容とするものである。
イ 一方、車両が岸壁で止まっている場面の写真、甲が同車両の後部バンパーを持ち上げている写真、車両が海中に転落した場面の写真、車両底部の損傷箇所の写真と、それぞれの説明記載は、被告人が自動車を岸壁から持ち上げて落とすことができたこと及びその結果の客観的な状況を内容とするものであり、検察官の立証趣旨に反しない。
(3)よって、イの内容については検察官の立証趣旨通り、実況見分調書として321条3項の書面といえ、Pの尋問により真正な作成がされた旨の供述があれば証拠能力が認められる。
 他方、アの内容は、実質的に甲の自白として不利益な供述を内容に含むから、Pの尋問に加え、322条1項により、任意性と甲の署名押印が要求されるところ、本件実況見分調書にはPの署名押印しかないから、証拠能力は否定される。

続きを読む

2009年新司法試験不合格答案再現(6.刑事系第1問:刑法)

そして刑法へ。最も恥ずかしいクソ答案です。メイン死因でしょうね。



4日目 刑事系第1問・刑法(100点)  問題

*得点:66.50/200(刑訴含む 4500位くらい)

第1 甲の罪責
1 AのカードからB社口座に200万円を振り込ませようとした点
(1)甲は、Aの口座から200万円を自らの支配するB社の口座に移そうとし、結果として80万円を領得している。この点につき、甲はAの口座の管理を任されていたため、業務上横領罪(刑法253条)と背任罪(247条)のいずれかが成立しうる。
(2)この点、両罪は法条競合の関係にあり、業務上横領の方が法定刑が重いため、物の領得行為として業務上横領罪が認められれば同罪が成立するから、その成否につき以下で検討する。本件では、①甲にAの口座につき業務上占有が認められるか、②途中で乙が甲の意図に気づいた点をどう評価するかが問題となる。
 なお、前提として、Aの口座に対する占有(預金の占有)が認められるかという問題がある。民事上金銭は所有と占有が一致するため、その占有は銀行にしかないとも考えられるが、現金であれば領得罪が成立し預金ではそうならないというのは不当であり、刑法上は預金の静的安全も保護に値するから、預金の占有も認められると解すべきである。
(3)業務上の占有があるか
ア 甲はAクレジットの貸金業務に関連してAのカードや通帳を保管しており、社会通念上継続的にされる活動に基づく管理をしているから、「業務上」の占有が成立しうる。
 それでは、甲にAの口座について占有が成立するか。Aと甲との間に委託信任関係が存在し、これに基づく占有が甲に成立しているかが問題となる。
イ この点、委託信任関係に基づく占有が存在するかどうかは、委託信任関係につき①甲が有する権限、占有の所在につき②甲がAの口座を管理している態様を検討することで決すべきである。これを本件について見ると、以下の通りである。
(ア)甲の有する権限
 甲は、Aからの厚い信頼に基づき、Aクレジットの主要な事業たる貸金業務につき、貸付内容の審査・判断から消費貸借契約締結、貸付実行に至る一連の権限を有している。また、資金管理面においても、現金出納、取引先に対する支払いのほか、Aの口座の預金出し入れやこれらに係る経理関係の書類作成・保管など、大きな権限を与えられている。
(イ)Aの口座の管理態様
 甲は、上記権限に基づき、甲が鍵を保持し管理している金庫の中に、Aの口座の通帳、届出印及びカードを保管することで所持していた。そして、これらの行使に際しては、甲の部下である経理担当の事務員を手足として用い、甲の指示により預金の出し入れをしていたが、Aのカードや通帳の出し入れは甲自らが行い、事務員には一時的に手渡されるだけであった。
 また、Aの口座の出入金が記録される経理関係の帳簿についても、甲の机の引き出しにおいて管理され、Aは甲の保管する帳簿やAの通帳につき収入支出の状況は確認するものの、その詳細な内容や正確性については甲を信頼し、他の書類とつき合わせて精査することはしていない。
(ウ)結論
 以上より、甲は業務に関連するAの口座につきAとの委託信任関係に基づく管理権限を与えられ、その管理態様も甲が自ら口座を管理支配しているといえるから、甲はAの口座につき委託信任関係による占有を有している。
(4)乙による故意の介入
ア 本件では、甲は乙を介して財物を領得しようとする、いわゆる間接正犯の形態を意図していたところ、途中で乙が甲の意図に気づき、自ら領得意思を発現させた上で120万円につき甲の目的に反し自身で領得し、結果的に甲は80万円だけを得ている。
 これにより、乙の故意によって振り込まれた金銭については甲による横領行為が認められなくなるとも思われるが、甲は現実に80万円を利得しているところ、この部分につき正犯として帰責させることはできないか。この点、①乙の行為の介入が甲の指示と領得結果の間の因果関係を切断しているか、②乙の故意に基づく領得態様が甲の故意とずれている点をどう評価するか、が問題となるので、以下検討する。
イ 因果関係の問題
 刑法上の因果関係は、条件関係の存在を前提に、結果をいかなる行為に帰責させるかという規範的な見地から評価されるべきであり、行為の危険性が結果に現実化したといえるかどうかで決すべきである。
 これを本件について見ると、甲は乙に対して上司としての立場からB社口座への振込みを命じており、これ自体がAの口座内の金銭が流出する結果を生ぜしめるものである。そして、乙が自らの判断で80万円をBの口座に振り込んだ行為も、甲の命令の範囲内であり、それを契機にされたことは変わらないから、甲の行為の危険性が現実化したものということができ、因果関係は切断されない。
ウ 甲の意図と結果との錯誤の問題
 甲が間接正犯を意図したところ、実際には乙の故意行為により領得結果が得られている本件では、甲の意図と結果との間に錯誤があり、甲の故意が否定されるようにも思われる。
 しかし、故意とは反対動機を形成しなかったことに対する非難可能性をいうと解されるところ、乙の故意行為の介入は、甲が領得結果を実現する上での因果関係についての錯誤にすぎず、結果について相違がない以上、甲の反対動機形成に影響を及ぼさない。よって、この点で甲の故意が否定されることもない。
エ 以上より、甲は80万円の領得につき正犯として業務上横領の罪責を負う。
(5)乙による120万円の領得行為についての罪責
 ここで、乙が甲に手渡されたAのカード及び通帳により120万円を引き出し、領得した行為につき、甲が背任罪の罪責を負わないかが問題となる。
 しかし、業務上横領罪(253条)は未遂処罰の規定がないところ、これは、業務上横領に該当する行為が未遂である場合には不可罰とする趣旨であると考えられ、甲が120万円を領得するに至っていない以上、さらに背任罪の成立を認めることは出来ないから、この点につき甲は罪責を負わない。
2 強盗を装って120万円の返還を免れようとした点
(1)甲は強盗を偽り、警察に対して虚偽の通報をしているから虚偽告訴罪(172条)の成立が考えられるが、甲には処分を受けさせる目的がなく、同罪の構成要件を満たさないから、これは成立しない。
(2)甲は、強盗を偽って120万円が不正に引き出されたことにつきAを騙そうとし、Aからの追及を免れようとしているから、利得詐欺罪未遂(246条2項、250条)の成立が考えられる。これにつき、①財産上不法の利益を得させたといえるか、②乙と共同正犯(60条)としての罪責を負うかが問題となる。
(3)①について、甲が強盗を偽ることでごまかそうとしたのは自身が領得していない120万円であるが、甲は乙に弱みを握られている関係にあり、120万円につき何とかすると約束していることから、乙に財産上の利益を得させる行為といえる。また、120万円は元々自身の横領計画に端を発してされた不正の出金であり、これが発覚すれば自身の得た80万円についても追及される可能性が高いから、その意味では自己が財産上の利益を得る行為とも言え、いずれにせよ同要件を満たす。
(4)ア ②について、共同正犯が処罰される理由は、2人以上が共同して互いを利用しあって犯罪を遂行することで法益侵害の危険性が増大することにあるから、共同正犯については、共謀にとどまる場合であっても、その成立が肯定されるべきである。そして、共謀共同正犯の成立を判断するに当たっては、①意思の連絡、②実行役割の重要性、③正犯意思の3つを検討すべきである。
イ これを本件について見ると、以下の通りである。
(ア)①について、甲は乙の依頼に基づき、甲に指示して強盗を偽装しており、意思の連絡が認められる。
(イ)②について、甲は自ら偽装計画を発案し、友人の丙に対して口裏を合わせるよう依頼したほか、乙を縛り上げて偽装行為の一部を分担し、さらに通報行為をしているから、重要な役割を占めている。
(ウ)③について、甲は120万円の不正隠蔽意図を有しており、それ自身がAからひどい目に遭わされることを避けたいとの動機によるものであった。また、甲の犯行は上司として支配する乙に指示する形でされており、甲には正犯としての意思が認められる。
ウ 以上より、甲には乙との詐欺未遂罪についての共同正犯が成立する。
3 結論
 甲には、80万円の業務上横領罪(253条)と120万円の2項詐欺罪未遂(246条2項、250条)が成立し、両者は併合罪(45条)の関係に立つ。
第2 乙の罪責
1 甲から受け取ったAのカードで120万円を引き出し、80万円をB口座に振り込んだ点
(1)乙は、自らAのカードを行使し、120万円を引き出して領得した上、80万円をBの口座に振り込んでいる。80万円の点については乙自身は領得しておらず甲に責任があるから乙に罪責は成立しないが、120万円について何らかの罪責が成立しないか。
(2)この点、乙は甲の命令によって、これまで知らなかった暗証番号などを知らされた上でカードを渡されたにすぎず、Aの口座に占有を有しているとはいえないから、横領罪の成立は認められない。そこで、雇用主たるAとの関係で背任罪(247条)の成立が考えられる。
(3)背任罪の成立には、乙が「他人のためにその事務を処理する者」といえなければならない。
 この点、事務処理義務については、法律関係に基づくもののほか、慣習に基づくものなどが広く含まれると解される。本件の乙は、経理担当として口座の管理に関わるものではないが、Aクレジットの社員として、雇用契約に基づき、上司甲の命令に適切に従い、会社のために口座預金の出し入れを行う義務を負うものであるから、Aのために預金管理事務を処理するものといえる。
(4)乙は、上記の通りAのための事務処理者でありながら、自己が120万円を領得するため、不正に気づいていれば出金すべきでなかったにもかかわらずその任務に反して出金行為をし、本人に財産上の損害を加えたから、背任罪の罪責を負う。
2 強盗を装って120万円の返還を免れようとした点
乙は、自己の領得した120万円の返還追及やAの攻撃を免れるため、Aを欺もうすべく強盗被害を装い、120万円の不正出金を隠そうとしたものであるから、利得詐欺未遂の罪責を負う。
3 結論
 以上より、乙には120万円につき①背任罪(247条)と②詐欺未遂罪の共同正犯(246条2項、250条、60条)が成立し、両者は異なる行為であるから併合罪の関係に立つ(45条)。

続きを読む

2009年新司法試験不合格答案再現(5.民事系大大問:民法&商法)

続いて大大問。内容がしょぼいのに長いですね。



3日目 民事系大大問・民法&商法(200点)  問題

*得点:117.17/300(大問含む)

〔設問1〕
1 売買契約とは、当事者の意思の合致により成立する諾成契約である(民法555条)。そこで、売買契約の目的物が何であるかは、当事者の意思が何を目的としていたかによって決せられるものである(意思主義)。契約書の表示などは、当事者の意思を参酌する重要な材料ではあるが、それにより目的物が決定されるものではない。
2 そこで、本件売買契約の当事者XA間での意思内容を判断するため、契約締結までの経緯を検討すると、以下のような事実が分かる。
ア 本件売買契約の発端はY社がA社にした機械調達の依頼であるが、そこではY社担当のCの意向により、PS112の機械が目的とされ、A社もそのように認識した。
イ 上記交渉に基づき、A社はX社にPS112につき問い合わせており、Xもその在庫がある旨回答している。
ウ YA間ではX社のPS112についての売買契約が締結され、この時点でA社が負う調達義務の目的物はPS112と確定した。
エ 上記契約に基づきA社はX社に連絡し、PS112の購入を前提とした契約条件の協議がされた。
オ A社担当者は注文書の作成時に型番の誤記をしてしまったが、発注権限者への報告の際にはPS112の調達を内容とし、これに対して決裁がされている。
カ X社担当者は、誤記のある注文書を受け取った後も、従来の交渉内容を前提として、受注権限者への説明でPS112を目的物とし、その決裁を得ている。
キ X社からY社への納入において、PS122の納入に対しY社によりPS112が目的物であると指摘のあったところ、X社の受注担当者はPS112を目的物と認識しており、速やかに対応がされた。
3 以上より、本件売買契約の発端である注文内容がPS112であることはXAともに認識しており(ア~ウ)、以降誤記にも関わらず契約担当者とその決裁権限者の中ではPS112が目的物とされており(エ~カ)、誤記による注文を受けたX社においても、PS112が目的物と認識されていたことが分かる(キ)。
 よって、XAの間ではPS112が契約の目的物であるとの意思の合致が認められる。
4 (1)ここで、誤記の注文書により発注したA社から、錯誤(95条)を主張しうるかが問題となる。もしこれが認められるのであれば、A社は実際にはPS112を目的としていたにもかかわらずPS122を注文した錯誤により、本件売買契約が無効であることになる。
(2)ア この点、錯誤の成立要件は①要素の錯誤であること、②錯誤に重過失がないこと(95条但書)である。
 ①については、もしPS112をPS122と誤っていることが分かっていればそのような発注はしていなかったといえる重要な誤記であったこと、また一般的にもそれにより表示行為をしないという因果関係が認められることから、要素の錯誤といえる。
 一方、②については、A社担当者は型番が101から125まで少ない中で誤記をしてしまったこと、誤記の内容を反映した注文請書をX社から受け取っているのにこれを確認することなく契約を進めていることから、A社には重過失が認められる。
(3)よって、型番の誤記は本件売買契約の効力に影響を与えない。
〔設問2〕
1 小問(1)について
(1)①事実について(引渡しの有無)
ア 本件では、Y社は即時取得(192条)の成立を主張するものであるが、即時取得の成立要件として占有の開始が要求されている。では、Yは引渡しを受ける前にXまたはAから即時取得を成立させるような動産甲の占有移転を受けたといえるか、それともA社からの引渡しがされてはじめて占有移転を受けたといえるのか。即時取得に必要な占有移転の態様が問題となる。
イ この点、判例は占有改定によって即時取得は認められず、実際の引渡しが必要であると解する。しかしながら、この見解によれば、例えばAがBに動産を売ってなお手元にある同じ動産をXに売ったという事案において、BもCも占有改定しか受けていないから即時取得は成立せず、BがCに告知すればCは悪意となるので常にBに対抗できないという結果になり、後での取引者が不当に害される。
 そこで、占有改定でも一応即時取得は成立し、その時点で善意無過失の要件を備えれば即時取得は成るも、他の者に対抗して確定的に所有権を獲得するには現実の引渡しを受けねばならないと考えるべきである(折衷説)。
ウ もっとも、本件では動産甲の所有権及び占有はY社への引渡し時までX社に存在しており、YA間の売買契約以降にAからYへの占有改定がされた事情もないからである。よって、上記イのように考えた場合であっても、Yは2月15日の引渡しを主張立証しなければならない。
(2)②事実について(善意)
ア 即時取得の成立要件に際しては、善意が要件とされている。では、同要件を満たすためにはどこまでの事実を主張立証する必要があるか。即時取得に言う「善意」の意味が問題となる。
イ この点、即時取得が動産の原始取得という強力な効果を持っていることに鑑みれば、それを正当化するための善意には高度なものが要求され、所有権の存在につき疑いを抱いているという状況であっても善意が否定されると解すべきである。
ウ ②事実は、Y社の認識として、A社がX社から所有権を有効に取得していることにつき疑いを持たないということを示すものである。代金全額の弁済がされていないという場合、A社がX社から完全に所有権を取得していないとの疑いが生じるものであるから、これを否定するためにも、②事実の主張立証が必要であると考えられる。
2 小問(2)について
(1)③事実について
 ③事実は、X社がAY間の売買契約時点で動産甲の所有権を有しておらず、後日の契約によって所有権を取得するということについてのYの認識をいうものである。これにより、Aが所有権を取得したか確認する義務がYに認められ、Y社の過失を認める方向に働くとも考えられる。
 しかし、他社から調達する形で商品を販売する形態は一般に見られ、取引相手が引渡し時点までに有効に商品の所有権を取得していないということはむしろ稀であると思われる。A社の支払能力に疑問があるなどの事情がない本件においては、③事実からY社にAX間の取引の調査義務が生じるとはいえない。よって、事実③は、それ単独では過失の認定についてあまり意味を持たない。
(2)④事実について
 ④事実は、約束手形により残代金が支払われるということについての認識であるが、通常約束手形での支払であるというだけで支払いの確実性が失われるものではなく、これ単独でA社が所有権を取得していたか調査すべき理由とはならない。
 しかし、本件の約束手形は支払期日が4月30日と2ヶ月以上後になっているが、A社はY社が目的物の引渡しを受けたときに動産甲の代金として850万円の支払いを受けるものであり、それによってX社への支払いがされるのが通常である。そうであるにもかかわらず支払期日を先延ばしした約束手形による支払いをしているということは、A社の財務状況の不安定さを推認させるものといえる。そこで、本件でY社が④事実のような認識を有していたということは、Y社にA社を調査すべき義務が生じていることを示し、Y社の過失を強く推認させる材料となる。
〔設問3〕
1 不当利得返還請求の成否について
(1)X社は、Y社に対し、動産甲の使用料につき不当利得請求権(703条)に基づく請求をすることが考えられる。
(2)不当利得請求の要件は①X社に損失があること、②Y社に利得があること、③損失と利得の因果関係、④Y社の利得に法律上の原因がないことの4点である。このうち、①X社の所有する動産甲がY社に使用されたことで甲の価値が低減した点に損失があり、②Y社は甲の使用で利得を得ており、③両者は因果関係があることは明らかであるので、以下では④につき、Y社の動産甲の使用が法律上の原因に基づくものかを検討する。
(3)動産甲の所有権はAX間の契約によりXに留保されており、AY間の売買契約でY社が所有権を取得するものではない。そこで、Y社の甲使用が法律上の原因に基づくかどうかは、Y社が甲を即時取得したかどうかで左右される。甲が引渡しを受けた時点で善意であったかは本件事情からは明らかでない部分もあるが、X社としては少なくともYが無過失でないことを示せば足りるので、この点を検討する。
 Y社は、前記③事実を知っていたが、これだけでは過失を認定できないことは前述の通りである。また、④事実についても、これは引渡しがされた2月15日の5日後である2月20日に説明されたものであるから、即時取得の成立時における過失を導く理由にはならず、Yの過失は認められないようにも思われる。しかし、2月15日の引渡し時点においてX社は注文書の誤記により誤った型番の機械を納入しようとしており、Y社との間でトラブルになっているものであるが、Y社としてはこれによりA社が動産甲(PS112)を適切に取得していないのではないかと疑問を抱く理由があったと考えるべきであったといえる。そして、その時点でXA間の代金決裁や動産甲の所有権の所在につき調査すれば、所有権留保の事実が不明であっても④事実につき判明したはずであり、さらにそこから所有権の所在につき疑いを抱くことが可能であったといえる。
 よって、Y社には、動産甲引渡しの時点で過失があったというべきであり、即時取得は成立しないから、Yは所有権に基づかず無断で甲を利用したことになるから、その利得に法律上の原因はない。
2 いつからの使用料を請求できるか
(1)動産の使用料は、動産の果実である。果実については、悪意の占有者に対しては返還請求をすることができる(190条1項)一方、善意の占有者に対しては請求ができない(189条1項)ものであり、これは果実の不当利得返還請求においても適用されない理由はないから、Y社が所有権のないことにつき善意である場合、善意の時点ではその果実を請求することはできない。
 Y社は動産引渡しを受けた時点で善意であると考えられ、また2月20日に事実④を知らされた時点でも、所有権留保の事実を知らされておらずX社に取引経過の照会もしていない以上、この時点で悪意に転じたともいえない。
(2)しかし、本件では平成20年5月7日に、X社からY社に対して動産甲の返還請求がされており、遅くともこの時点でY社は所有権の不在につき悪意になったといえる。よって、X社は、190条1項より、5月7日からの使用料相当額を請求できる。
〔設問4〕
1 Z社は、長年X社の株主となっているから、取締役の合併契約締結行為や株主総会招集の差止めを請求することができる(会社360条1項)。
 差止めの要件は①法令や定款に違反する行為がされ、またはされるおそれがあること(360条1項)、②会社に回復することのできない損害の発生すること(同3項、X社は監査役設置会社)の2点であるので、以下それぞれ検討する。
2 法令定款違反の事由について
(1)合併比率の不当さ
ア 本件合併計画においては、その合併比率がX社の株主にとって不当な不利益となっている。このような合併を進めることは、会社の利益を害することにつながり、忠実義務(355条)及び善管注意義務(会社330条、民法644条)に違反する疑いがある。
イ (ア)しかし、会社は利潤をあげることを目的としており、そのための経営判断は専門的かつリスクを伴う決断を含むため、広く違法を認めることで経営者の判断を過度に萎縮させることは、かえって会社の利益とならない。そこで、取締役の意思決定については、①判断の基礎となる基礎を適切に収集・認識し、②それに基づいて経営として合理的な判断をしたものと認められる場合、その結果は違法とならないと解すべきである。
(イ)また、本件では取締役が事業全体の存続や従業員の雇用確保といった目的でD社との合併を決断しており、合併比率の不利益を受けるZ社との間に一種の利益相反関係があるので、会社の取締役としていかなる目的を優先すべきか、さらに検討する。
 この点、会社にとって事業継続や従業員の保護が収益増につながり、かかる目的の追求が優先されてもよいという見解もありうる。しかし、会社法は株主総会を会社の最高意思決定機関としており(295条)、取締役など会社役員は株主の手でいつでも解任することができる(339条)と定めている。そこで、会社の目的はあくまで株主の利益最大化であり、従業員などの利害関係人については株主に劣後するものと解すべきである。
ウ 以上を前提に、本件でX社取締役が進めている合併契約を評価すると、X社は財務状況が急激に悪化し、Z社との協力だけでは企業としての存続が危ないことが認められるから、D社の合併申入れにつき検討したこと自体は合理的であるが、そこで提示された合併条件に従うことは、事業全体の存続や従業員の雇用という点からは問題を解決するものの、株主にとっては不当な合併比率となっており、これを害するものである。X社としては、従業員のリストラやさらなる事業の売却・縮小など合併案より株主を害しない代替案を検討することは可能であったはずで、D社との合併以外に手段がないという事情は本件では見られない。
 よって、本件でのX社取締役の判断は、Z社などX社株主を不当に害する事実を適切に認識せず、あるいは認識した上で株主の利益を害する不合理な判断をしたといえ、違法というべきである。
(2)独禁法違反の点
ア 本件で進められている合併は、独禁法に違反するものであるところ、取締役は法令順守の義務を負っている(355条)ため、本件合併を進めることはこの義務に違反する可能性がある。
イ ここで、355条にいう「法令」が、いかなる範囲の法令を指すかが問題となる。この点、同文言を広く解釈することは取締役の行動を過度に制約することになるとし、これを会社法の規律に限定する見解もあるが、そもそも会社の取締役は日本国で適用される一切の法令につき遵守することが期待されているから、同条の「法令」とは、会社法にとどまらず一切の法令を意味するものと解すべきである。
 よって、独禁法に違反する行為も355条の法令違反にあたるため、そのような行為は会社法上も違法となる。
3 回復することのできない損害の発生
(1)「回復することのできない損害」とは、回復することが物理上不可能なものだけでなく、差止めがされず行為が実行されると回復に著しい不都合があり、完全に填補されないという場合も含まれると解すべきである。
(2)本件でX社がD社との合併を進めた場合、株主らは合併比率の上で大きな損害を受けるが、一旦合併し消滅した会社を復活させることは事実上容易でない。また、独禁法違反のまま合併を進めた場合、それにより合併後の会社に不利益が生じ、これも回復することは困難といえる。
 よって、本件合併を進める行為で回復することのできない損害が発生するものといえる。
4 結論
以上より、Z社は360条により株主としてX社取締役の合併を進行させる行為の差止めを請求することができる。
〔設問5〕
1 小問①について
(1)本問において問題となるのは、議決権行使書面及び委任状において賛否の明示がない場合に賛否の取り決めを定め、あるいは白紙委任する旨の規定が有効であるかどうかである。以下、それぞれについて検討する。
(2)議決権行使書面で賛成の表示とみなす規定の是非
ア X社は、株主5000人の会社であるから、298条2項より書面での議決権行使機会付与を義務付けられ、これに基づき株主総会参考書類と議決権行使書面を株主に送付している(301条、302条)。そして、本件での議決権行使書面では、議案につき賛否の表示がされない場合、会社提案の議案に賛成したものとして扱うと定められている。このような扱いが認められるか。
イ この点、議決権行使書面は会社から株主全員に交付されるため影響力が大きく、賛否の表示がない場合に会社提案に賛成させることは、Z社を不当に害するため認められないという見解もありうる。しかし、会社法施行規則66条1項2号は、議案の賛否に記載がない場合にその扱いを定めることができると定めており、X社の扱いは明文上も根拠があるから、かかる見解はとりえない。
 もっとも、明文で定めがあるとしても、かかる扱いが株主の合理的意思に反したり、会社を不当に害するという特段の事情があれば、そのような規定は例外的に無効となるものと解すべきである。
ウ そこで本件議決権行使書面を見ると、同書面には賛否の表示をしない場合の扱いが明記されていること、議案が一個しかなく、賛否を明らかにしない場合には当該議案への委任をしたことが合理的に推認できること、また株主総会参考書類による説明もされていることから、前記特段の事情はない。
エ よって、X社の取扱いは有効である。
(3)Z社委任状の白紙委任規定の是非
ア 一方、Z社の委任状は、①賛否の明示がない場合や②代理人名記載のない場合、③原案に対し修正案の提出された場合に白紙委任としているところ、かかる扱いは認められるか。そのような事情のある場合に、株主の合理的意思に反する扱いとならないかが問題となる。
イ ①につき、Z社に委任状を返送した場合、Z社の提案(合併への反対)に賛同しているといえるので問題はない。②の場合、Z社は自身を代理人として扱うことが考えられる。これは、Z社からの送付に対して返送された委任状の扱いとして合理的である。③の場合も、もし修正案のある場合に委任を望まない場合、委任状の交付をせず議決権行使書面に否決の表示をして提出することもできたのであるから、修正案が提出された場合にZ社が株主の立場からする賛否に委ねるという扱いも合理的意思の範囲に含まれると解することができる。
ウ よって、Z社の委任状における扱いも認められる。
(4)以上より、本問での議決権行使状況は、賛成が5000+29000+50+6000=40050個、反対が2000+2000+10000+5000+1000=20000個となる。
2 小問②について
(1)本問では、X社とZ社の両方に対して賛否を記載せず、結果として賛成と否定の両方の意思表示をしたことになる議決権の扱いが問題となる。
(2)ここで、会社法は313条で議決権の不統一行使について定めており、本件でも同条を類推適用することが考えられる。しかし、Fの行動はX社・Z社双方に対し全ての議決権を委ねており不統一行使とは言えず、Fが同条2項の通知をしているものでもないから、これは認められない。
(3)また、一般の意思表示と同様、X社に対する議決権行使書面の提出とZ社への委任状の交付の先後で判断することも考えられるが、本件でもいずれが先後かは不明であるから、この扱いも妥当でない。
(4)結局のところ、本件のFについてその議決権行使の意図は明らかでなく、その合理的意思を判断することも不可能というほかないから、その議決権100個は無効であり、賛成・反対双方から減ずるべきである。よって、本問では賛成39950個、反対19900個となる。
〔設問6〕
1 合併効力発生前
(1)Z社は、合併の実現を阻止するため、合併契約を承認した株主総会決議の取消ないし無効の訴えを提起することができる(831条1項、830条2項)。吸収合併においては消滅株式会社において合併契約の承認を受ける必要があるから(783条1項)、この承認決議を取り消すことで、合併の実現を阻止することができる。
(2)Z社は、決議無効事由として設問5で論じた事由を内容の法令違反として主張できる(830条2項)。また、臨時株主総会におけるEがZ社の提出した議長不信任動議などを無視した行為は、議長の権限(315条)の濫用であると考えられ、これを取消事由として主張することができる(831条1項1号)。
2 合併効力発生後
(1)一方、4月1日の効力発生日以降は、合併の効力を争うにはその6ヶ月以内に合併無効の訴えを提起するしかない(828条7項)。
 会社法が効力発生後に合併の効力を争う方法を手段・期間ともに制限している趣旨は、組織変更行為の影響の大きさに鑑みた取引の安全確保にあるから、無効事由は重大な法令違反を内容とし、無効とするほかない場合に限定すべきである。そこで、以下、本件合併に存在する問題につき、無効事由となりうるか検討する。
(2)合併比率の不当さ
ア 本件合併契約は合併比率が客観的に見て不当であり、正当な理由なくX社株主を害するものであるから、法令違反といえる。
イ では、これは無効事由となりうるか。この点、会社法は反対株主に対して株式買取請求権を認めており(797条)、その価格につき裁判所に申し立てる機会も与えている(798条2項)から、合併比率に不満を持つ株主はこれを通じてその損害を回復することができる。よって、合併比率の不当は合併無効事由にはならない。
(3)合併の独禁法違反
合併の独禁法違反は、合併内容の法令違反であり、合併をした後であっても重大な問題といえるから、合併無効事由として認められるべきである。
(4)株主総会決議の取消事由
ア 先に見た株主総会決議の取消事由(手続の法令違反)は、合併内容の違法をいうものでないから、それ自体を合併無効事由とすることはできないが、合併承認決議が取り消された場合、当該合併は783条1項の承認を欠くため重大な瑕疵を帯び、かかる手続の瑕疵は合併無効事由となると解される。
 それでは、決議取消しが効力発生日の4月1日になっても確定しない場合、これを効力発生後に無効事由として争うことはできないか。この点、合併承認決議取消しの訴えと合併無効の訴えは請求の基礎を同一にしているから、民訴143条1項による請求の変更により、決議取消しの訴えを合併無効の訴えに変更し、その上で無効事由として決議の違法を主張することができると考える。
 もっとも、決議取消しの訴えにより主張できない事由を合併無効の訴えにおいて主張させる理由はないから、決議取消しの出訴期間(3ヶ月。831条1項)の遵守が条件とされ、また831条2項の裁量棄却も類推適用されると解すべきである。

続きを読む

2009年新司法試験不合格答案再現(4.民事系大問:民訴法)

続いて民事系の大問です。



3日目 民事系大問・民訴法(100点)   問題

*得点:117.17/300(大大問も含む 3500位くらい)

〔設問1〕
第1 Xの主張
1 ()Yが否認した場合
 建物買取請求権を認めるための要件事実は、①契約更新がないこと、②借地権者が買取請求をすること、の2点である(借地法4条2項)ところ、②の要件を認めるには、本件では借地権者であるYによる請求権行使が必要とされる。
 ここで、「Yが本件建物の買取請求権を行使した」旨の主張はYの訴訟外による買取請求権行使をいうものであり、上記②の要件に関わるものであるところ、Yが否認した場合、これを証拠調べなくして判決の基礎とし、建物買取請求権の成立を認めることはできない。
2 ()Yが援用したとき
(1)YがXの主張を援用した場合、これは建物買取請求権の訴訟外行使の事実についての自白(民訴179条)を意図していると思われる。自白が成立した場合、当該事実は証拠調べなくして判決の基礎とできるが、それでは本件のような援用により自白が成立するか、以下検討する。
(2)不利益要件
ア 自白が成立するためには、それが自己にとり不利益な事実であることが要件であるとされている(不利益要件)。ここで、不利益であるかの判断につき、立証責任の所在を基準として考えると、建物買取請求権の行使は土地所有者の請求に対する抗弁であり、その要件たる権利行使の事実は買取請求権者たる被告Yが立証責任を負うものであるから、その事実につき自白が成立することはYにとり不利益といえず、この点に対するYの自白は不利益要件を満たさず不成立であるとも思われる。
 しかし、不利益要件が求められる趣旨は、自白の拘束力の根拠が、不利益な事実の承認を内容とすることでそれを敢えて争わないという当事者の意思を尊重することに求められるところ、そうであれば不利益性の判断を立証責任の分担に求める必然性はなく、事実上の不利益があれば足りると解すべきである。
イ 本件では、Yによる建物買取請求権の行使は、Xの建物収去の請求を否定することにはなるものの、結果的にはYが代金と引き換えに本件土地を引き渡すことを余儀なくするものである。Yは第1回口頭弁論期日から一貫して本件土地の有効な占有権限の存在を主張し、土地明渡しを拒んでいるから、そのようなYにとって本件土地の引渡しにつながる建物買取請求権行使の事実は、事実上不利益なものということができる。
ウ よって、Yの自白は不利益要件を満たす。
(3)権利自白
ア もっとも、法律問題の判断は裁判所の専権であるから、自白の対象は事実に限られ、法律関係の存否など法律事項に関する自白(権利自白)は認められないとされている。そして、建物買取請求権の行使がされたという事実は、建物買取請求権の成立という法律関係の存在をいうものであるから、この点の自白は権利自白として認められないとも思われる。
 しかし、権利自白についても、①それが法律関係を成立させる前提となる事実についての自白といえる場合、②当事者が当該法律関係の意味につき理解していること、の2点が満たされていれば、裁判所の法律判断を不当に拘束するものとはいえず、当事者にとり不利益ともならないから、自白の成立を認めるべきである。
イ そこで本件でのYの自白対象を検討すると、Yが援用したのは「建物買取請求権を行使した」という事実であり、法律関係の存否にかかるものの、それ自体は建物買取請求権成立の前提となる事実(権利行使の事実の有無)といえる。
 また、建物買取請求権の行使要件は前述の通り①契約更新の不存在と②行使の事実の2つであるから、当事者がその意味につき理解した上で当該法律関係が形成されたというためにはこの2要件につき理解していると認められる必要がある。建物買取請求権は売買のように一般に理解されている法律制度とは言い難いが、Xの主張によれば、Yは弁護士から建物買取請求権の制度につき説明を受けており、不動産鑑定士の鑑定結果に基づく時価での買取請求を申し出ており、Xはこの申出に対して前記①②要件が問題となっていることを確認したところ、Yからそのとおりであると回答を受けたという経緯が認められ、XYともに建物買取請求権の要件効果につき理解していることが分かる。
ウ よって、Yの自白を認めることに支障はない。
(4)以上より、Yの自白は有効に成立するから、裁判所は証拠調べなくしてXの主張を判決の基礎とできる。
 なお、YがXの主張を援用した場合、それは同時に訴訟上での建物買取請求権行使の意思表示とも解しうるが、本件では題意から検討対象外とした。裁判所はこの点につき釈明権を行使することが望ましい(149条1項)。
3 ()Yが争うことを明らかにしなかった場合
 YがXの主張を争うことを明らかにしない場合、その事実を自白したものとみなされる(159条)。この場合、前述した2と同様の結論となる。
 もっとも、同条但書より、弁論の全趣旨からその事実を争ったといえる場合には、自白は不成立となるところ、本件ではYは一貫して有効な占有権限を主張して本件土地の明渡しを拒んでおり、賃貸借契約終了の正当事由についても争っているから、建物買取請求権の要件たる契約更新の不存在についても争っているものといえる。よって、弁論の全趣旨からYはXの主張(Yによる建物買取請求権の行使)を争っているといえ、159条本文による自白の成立は認められないから、証拠調べなくしてXの主張を認めることはできない。
〔設問2〕
1 小問(1)について
(1)Xは第1訴訟において、建物退去土地明渡請求を認める判決を受けており、さらに第2訴訟で建物収去土地明渡請求を求めるものであるが、土地所有権に基づく土地明渡請求の訴訟物はあくまで土地明渡請求権であり、建物退去(第1訴訟)と建物収去(第2訴訟)の相違は履行態様の違いにすぎないから、別個の訴訟物を形成しない。
(2)よって、Xが第2訴訟で得ようとしている権利は、第1訴訟でXが得た土地明渡請求権と同一であり、第2訴訟で新たな地位を獲得できるものではない。よって、時効中断など特別の必要性が認められない本件では、第2訴訟の訴えの利益は認められない。
2 小問(2)について
(1)判決の既判力は、主文に包含するものにつき認められるとされる(114条)。本件第1訴訟では、「本件建物の代金500万円の支払を受けるのと引換えに本件建物を退去して本件土地を明け渡す」旨の判決が確定しており、主文もこれと内容を同じくするものである。すなわち、第1訴訟の既判力は土地明渡しが建物買取の履行と引換えにされること、言い換えれば建物買取請求権が有効に成立したことについても及んでいるのである。
(2)しかるに、Xは第2訴訟において、建物買取請求権の無効を理由として建物収去土地明渡を求めるものであるが、かかる主張は建物買取請求権の有効性を内容とする第1訴訟の既判力に反しており、既判力により主張が遮断される。
 なお、第2訴訟でXが主張する建物買取請求権無効の理由は、第1訴訟の口頭弁論終結時以前にされた本件賃貸借契約の解除であり、第1訴訟で主張できたものであるから、既判力の時的限界の面からも、主張が遮断される。
3 小問(3)について
(1)小問(1)に対して(訴えの利益)
 第1訴訟と第2訴訟の訴訟物が同一であることは認めるとしても、それにより訴えの利益が否定されるものではない。Xが第2訴訟を提起したのは、第1訴訟において付された500万円との引換給付が不要であることを争うためであり、この点に訴訟物の存否とは別途に訴えの利益が肯定されるのである。
 第1訴訟で確定した引換給付判決は、いわゆる質的一部認容であり、原告の一部勝訴にすぎない。すなわち、Xが争っているのは訴訟物たる権利の実現に付せられた負担の存否であるから、この点につきXに不利益が生じており、債務不存在の訴えと同様、別個に訴えの利益が肯定されなければならない。
(2)小問(2)に対して①(引換給付の部分に既判力は及ばない)
 Yは、主文に付せられた引換給付の部分についても既判力が及ぶと主張するが、これは誤りである。なぜなら、既判力は訴訟物の範囲で認められるものであるところ、引換給付の部分は訴訟物ではないからである。引換給付は履行に際して負担が付着するかどうかという、訴訟物の存否とは別個の問題であるから、この点に既判力が及ぶものではない。
 これは、引換給付判決の理由となった建物買取請求権の成立が抗弁であることからも見易いことである。すなわち、抗弁により独立に生じた法律関係については相殺のような例外(114条2項)に限って既判力が認められているところ、建物買取請求権は独立の抗弁であるのに例外として認められていないのである。
(3)小問(3)に対して②(信義則上の遮断効も認められない)
ア 上記の通り、引換給付部分に既判力は認められないが、判例の中には、限定承認に基づく留保付き判決の後で無留保判決を求める主張が既判力に準じる効力によって否定されるとするものがあるので、本件でその適用がないことを示す。
イ 上記判決は、前訴で限定承認の無効につき争えたにもかかわらず争わなかったことを問題とし、手続保障のあったことと紛争の蒸し返しを防ぐという目的から信義則上の遮断効を認めたものと解され、その趣旨は理解できる。しかし、以下の理由により、本件ではそのような遮断効が認められる理由はない。
ウ 本件でXが第2訴訟を提起し、建物買取請求の無効を主張したことには、正当な理由がある。すなわち、Xは第1訴訟の終了までAY間の賃貸借契約が無効であったことを知らず、そもそも第1訴訟で建物買取請求権の前提の不備を知らなかったのである。そして、XがAからその旨を聞かされておらず、Aは兄のCとだけ相談していたことから、この不知につきXに過失があったともいえない。よって、Xにこれを争う機会が保障されるべきである。
 また、本件では、上記のようなXの不知がYにより作出されたという事情もある。すなわち、Yは過去の契約解除の事実を秘して、Aの他界後にあたかも有効な賃貸借契約が継続していたかのごとく振舞ってXに地代を提供し、その後の訴訟でも賃貸借契約が成立していたと一貫して主張し、さらに訴訟外においても過去の契約の有効性を前提に建物買取請求権行使を持ちかけている。これらは、建物買取請求権行使のためXを欺もうする行為とさえいえ、このようなYに対して主張遮断の利益を認める必要はない。
(4)小問(2)に対して③(主張可能性による既判力の制限)
 たとえ、Yの言うとおり引換給付部分に既判力が認められるとしても、既判力の実質的根拠は訴訟物につき主張立証が尽くされているという点に求められるから、主張可能性のなかった事実については例外的に既判力が及ばないと解すべきである。
 本件では、前述のような事情からXには建物買取請求権の無効を主張する可能性がなかったので、この点については既判力が及ばない。

続きを読む

2009年新司法試験不合格答案再現(3.公法系第2問:行政法)

続いて行政法。憲法で2時間つかったので残り2時間でした。




2日目 公法系第1問・行政法(100点)  問題

*得点:135.54/200(憲法含む)

〔設問1〕
1 建築確認の取消訴訟
(1)Fらとしては、本件建築物の建築を阻止するため、EがAに対してした建築確認(建築基準法6条)の取消訴訟(行訴3条2項)を提起することが考えられる。
 本件では、審査請求の前置(行訴8条1項)や出訴期間(行訴14条1項)、建築確認の処分性に問題はないから、訴訟要件としてはそれぞれの原告につき原告適格(行訴9条1項)の有無が問題となる。
(2)原告適格の評価
ア 原告適格は、取消訴訟が国民の権利救済及び行政の適法性担保を目的とすることから、そこから外れる訴訟の乱発を防ぐために設けられた要件である。
よって、原告適格は、処分により法律上保護された利益を侵害され、または必然的に侵害される者に限って認められるが、「法律上保護された利益」には、法律が当該利益を一般的公益の中に吸収解消させるにとどまらず個別的に保護する趣旨である場合も含まれる。その判断に当たっては、処分の根拠法令の文言だけでなく、関連法令も含めた一連の法体系の趣旨目的を考慮すべきである(行訴9条2項)。
イ そこで、本件確認の根拠法令たる建築基準法のほか、目的を共通とするB県中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例(以下「紛争条例」とする。)につき、その趣旨目的を考察すると、以下の通りである。
(ア)建築基準法は、1条において国民の生命、健康及び財産の保護を目的に掲げ、そのために、大規模建築物につき耐火基準への適合を義務付け(21条)、建物敷地と道路の関係につき避難や通行の安全の見地から規制を設けている(43条)。
(イ)紛争条例は、1条で地域の生活環境維持向上を目的としており、生活環境に及ぼす影響についての紛争を関心対象としている(2条2号)。
(ウ)以上より、建築基準法と紛争条例は、近隣の住民に対し、建築物から生じる災害から生命、健康及び財産への被害を防ぐことにつき、個別的な保護を与えているものと解される。
ウ そこで進んで、本件原告であるF~Iの原告適格につき検討する。
(ア)Fは、本件土地から10メートルの地点にあるマンションに居住しており、本件建築物の災害により生命や健康が害される危険があるから、原告適格が認められる。
(イ)Gは、Fの居住するマンションの所有者であり、本件建築物の災害から生命や健康が害されるものではないが、かかる災害により所有物たるマンションに財産的被害を受けるから、原告適格が認められる。
(ウ)Hは、本件土地から500メートルの地点に居住しており、居住地において危険を受ける者ではないが、本件建築物の至近にある本件児童室に毎週通い、本件土地について近隣の住民といえる関係を持っている。そのため、本件建築物の災害により生命、健康に被害を受ける可能性があるから、原告適格が認められる。また、Iについても、Hの父親として、Hの生命や健康に重大な利害関係を有するから、原告適格が認められる。
エ よって、本件ではF~Iの全員に原告適格が認められる。
(3)以上より、Fら原告は、B県を被告とし、B県の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所に対し、本件確認の取消しを請求できる(11条1項、12条1項)。
2 建築物完成に備えた執行停止
(1)本件確認の取消前に本件建築物が完成し、完了検査を経て検査済証が交付されると(建築基準法7条5項)、その後で建築確認が取り消されても検査済証が失効するものではなく、また建築確認の不存在が建築基準法9条の是正措置を義務付けるものともいえないため、本件建築物の完成によって本件確認の取消訴訟の訴えの利益は消滅する。
 そこで、原告としては、本件建築物の完成を防ぐため、本件確認の効力の執行停止(行訴25条2項)の申立てを検討すべきである。執行停止の積極要件は、①重大な損害の存在、②緊急の必要、③効力停止につき補充性(以上行訴25条2項)であるから、以下これらにつき検討する。
(2)ア 重大な損害の判断では、回復の困難性や損害の性質・程度などを考慮すべきである(行訴25条3項)。 
 これを本件について見ると、防災上問題のある本件建築物で火災などが発生すれば周辺住民の生命身体を侵害し、取り返しのつかない事態となるから、本件確認は重大な損害を生じさせるものといえる。
イ また、かかる損害の重大性や、本件確認の存続により本件建築物が完成してしまえば、その危険性を是正することが著しく困難となることから、執行停止の緊急性も肯定される。
(3)本件確認はさらなる執行やこれに続く手続を予定するものでなく、建築を中止させるには本件確認の効力を停止するほかないから、補充性も肯定される。
(4)公共の福祉への影響についても念のため検討すると、本件では未だ建築物は完成しておらず、これを中止させても大きな損失はない。
(5)よって、原告らは取消訴訟に加え、本件確認の効力の執行停止を申し立てることができる。
〔設問2〕
 以下、本件確認につき主張しうる違法事由につき、それぞれ、①違法事由とその根拠、②Fに主張適格があるか、③違法事由が認められるか、の順で検討する。
1 本件道路の瑕疵
(1)違法事由と根拠
ア 道路と敷地の接する長さの不足
 本件建築物は延べ面積2万1643平方メートルであり、建築基準法43条2項及びこれを受けたB県建築安全条例(以下「安全条例」とする。)の適用を受けるところ、安全条例4条1項によれば、本件建築物は敷地と10メートル以上の長さの道路と接すれば足りるとされており、これによれば、30メートルの長さで本件土地と道路が接している本件では問題はないとも思われる。
 しかし、同項は、消防活動や避難のために建物の規模に比例した長さの周辺道路への接続を要求する趣旨に出たものと解されるところ、同条は3000平方メートル以上の建築物につき一律に10メートルの長さで足りるとしており、上記の趣旨に反する。本件建築物の延べ面積と同条の表から比例的に考えれば46メートル以上の長さの接続を要するといえ、本件建築物には実質的に安全条例に反する違法がある。
イ 道路幅員の不足
 本件建築物は延べ面積3000平方メートル以上、高さ30メートルであるから、安全条例4条2項の適用を受け、幅員6メートル以上の道路に接する必要がある。これは、防災上、消防車などの十分な活動を可能とする必要性に基づく規定と解される。
 しかるに、本件道路の幅員自体は6メートルであるものの、その道路に至る入り口に遮断機が設置されている。非常時に遮断機が上げられるという保証がないこと、上げたところで3メートルしか通行幅がなく車両の進入が妨げられていることから、防災上の必要性との関係で実質的に必要な幅員の道路が備わっているとはいえず、違法である。
(2)Fの主張適格
ア 行訴10条1項は、自己の法律上の利益に関係ない違法の主張を禁じている。同項の趣旨は、取消訴訟が権利救済の目的であることから、その必要性を超える主張を審理の遅延などにつながる無用なものとして制限することにある。よって、「自己の法律上の利益」の判断基準は、違法事由との関係での原告適格の判断と共通する。
イ そこで上記違法事由を見ると、本件道路の瑕疵は防災上の危険につながる違法であり、近隣に住むFにつき法律上保護された利益といえるから、Fに主張適格が認められる。
(3)違法が認められるか
ア 接する長さの不足については、規模に関わらず一定以上の長さで接していれば避難や消火活動に支障が生じるとは考えられない。安全条例4条3項も、知事による裁量を認めており、条例上要求される10メートルを大きく上回る30メートルの接続に支障がないとする判断に特段の不合理も認められない。よって、この点に違法はない。
イ 幅員の不足については、安全条例4条2項の趣旨が防災の面にあると考えられる以上、その幅員は実質的な通行可能性に求められるべきであり、遮断機によって最大3メートルの通行幅しかない本件道路は同項に違反する。
2 駐車場出入口の違法
(1)違法事由と根拠
 本件建築物は本件児童室の専用出入口から約10メートルの地点に地下駐車場出入口を設けており、安全条例27条4号に違反する。
(2)Fの主張適格
 安全条例27条4号は児童など弱者の安全を保護する規定であるところ、Fは児童や老人など弱者ではなく、自動車の走行により危険を被るものでないから、この点につき主張適格を有さない。
(3)違法が認められるか
 この点、本件児童館が同号の「児童公園、小学校・・・その他これらに類するもの」に該当するかが問題となるが、これは前述した同号の趣旨から、児童の利用が予定されるかどうかで判断すべきである。
 本件児童館は、児童関係の図書が集められ、児童用の座席やトイレ、遊び場など児童の利用しやすい環境が整っていることから、児童による利用が予定され、その専用出入口も児童による通行が見込まれる。よって、その専用出入口は同号の対象であるといえ、地下駐車場の収容台数の多さから、交通の安全上支障がないとはいえず、安全条例27条の除外事由も認められないから、本件建築物は同条に違反する。
3 手続上の違法
(1)違法事由と根拠
 紛争条例6条1項によりAは説明会の開催義務を負うところ、本件では形式的に説明会が開催されたものの、質問の機会もなく情報開示も不十分なため、実質的に開催義務を満たしたとはいえず、同項に反する。
 また、同条例が周辺住民の利害を考慮している以上、このような場合には行政手続法10条による公聴会を開催しなければならないというべきであるが、知事にはこれを怠った違法がある。
(2)Fの主張適格
 Fは本件建築物の近隣関係住民であり、紛争条例により説明を受ける権利があるから、この点につき主張適格を有する。
(3)違法が認められるか
ア 上記違法は手続の瑕疵に存する違法であるが、手続瑕疵による取消しをしても再度同様の処分がされるだから、理由附記など重大な手続の瑕疵を除き取消事由とならないとの見解もある。しかし、これは手続の価値を軽んじ、裁判所による判断代置を安易に肯定するものであり支持できない。
そこで、当該手続の趣旨が国民の権利保護を目的とするものであれば、その正しい履践を保障するため手続瑕疵による取消しを認めるべきと考える。
イ 本件では、Aは実質的に住民への説明義務を果たしておらず、紛争条例6条1項に反する。同条例は近隣住民の健全な生活環境保護を目的としており、住民には説明手続が保障されているといえるから、Aの義務違反は取消事由に当たる。
 また、紛争条例3条及び6条2項から、Aが説明会を有効に開催しない場合、知事は適切な是正措置として、行政手続法10条の公聴会開催が条例上義務付けられると解すべきであるから、この点で知事が公聴会を開催しなかった点も違法というべきである。

続きを読む

2009年新司法試験不合格答案再現(2.公法系第1問:憲法)

続いて憲法です。



2日目 公法系第1問・憲法(100点)  問題

*得点:135.54/200(行政法含む 70位くらい)

〔設問1〕
第1 Xの主張
1 Xが侵害されている憲法上の権利
(1)XはY大学の発した本研究の中止命令により、遺伝子治療の研究を妨げられるに至った。これは、憲法23条で保障される学問の自由を侵害するものである。
 学問の自由は、精神的自由の一環であり、人類の発展に必要不可欠な高度な知的営為であること、高度な自律性に基づく自己実現のための重要な手段であることから、特に高度の保障を受ける権利である。
(2)さらに、Xに対する研究中止命令は、結果としてCのような患者が遺伝子治療を受ける道を閉ざすものでもある。遺伝子治療は難病性疾患の患者にとって必要不可欠であり、これを受ける権利は幸福追求権の一環として憲法13条により保障されるものである。
 そして、XはCら患者の利益のため治療法を研究する立場にあること、治療継続についてはXに争わせることが患者のためにも便宜であることから、Xに患者の権利についても主張適格を認めるべきである。
(3)本件では私人たるY大学によって上記の憲法上の権利が侵害されているものであるが、①本件では国の承認を受けた研究の中止が問題となっており、また②研究者は大学の提供する研究関係に依存しており、大学と研究者の間には対国家と同視しうる上下関係があることから、本件では憲法の直接適用を認めるべきである。また、少なくとも判例の趣旨から、民法90条を通して間接適用が認められねばならない。
2 Xへの侵害が正当化されないこと
上記の権利侵害につき、具体的には以下の理由で正当化が許されず、違憲である。
(1)文面上違憲
ア 前述の通り、学問の自由は極めて重要な権利であり、自律的な活動に基礎付けられるものである。かかる権利については、漠然な要件に基づく規制によって萎縮効果が生じることが避けられねばならず、規制要件が不明確な場合には違憲たるを免れない。
イ そこで本件中止命令の根拠である審査委員会規則8条を見ると、規制の要件については「重大な事態」、処分内容については「必要な措置」と幅があり、不明確であるから、Xの研究を萎縮させるものである。よって、文面上違憲というべきである。
(2)審査委員会規則が法律の範囲内にない
ア 憲法94条は「法律の範囲内」において条例を定めることが許されるとしており、同条は法律が規制を認めない場合に条例で規制を設けることを禁じているものである。 
 そして、国立大学法人の定める規則も、前記1(3)で述べた事情から法律と同視でき、また条例のように地方議会に基づく正当性もないから、94条の趣旨から同様の規律を受けることは当然である。
イ 政府は研究者の自主性や倫理性を尊重して罰則を伴った法律による規制を取らなかったものであり、遺伝子治療研究につき法律での規制を認めないものと解されるところ、研究を規制する審査委員会規則はその趣旨に反し違憲である。
(3)適用違憲
ア たとえ審査委員会規則が合憲であるとしても、本件中止命令は重大な権利を侵害するものであるから、①重大な危険が発生するおそれがあり、②危険発生の蓋然性が高いことを条件に、中止命令が必要やむを得ないと言える場合にはじめて正当化される。
イ この要件について見ると、①について、本件でCは最終的に回復しており、A大学の事件のように死亡に至るものではないから難病治療の上で重大な危険とは言えず、②について、Cに発生した問題は予想外のものであるが、Xの研究そのものに危険発生の蓋然性が高いという事情はない。
 したがって、本件中止命令は必要な要件がないのに憲法上の権利を不当に侵害しているものであり、適用上違憲とされるべきである。
第2 Yの主張及び私見
1 本案前の答弁(部分社会の法理)
(1)Yの主張
 本件中止命令は、大学がその構成員たるXに対してした、大学組織内の処分である。これは、大学組織という部分社会の自律に属する行為であり、司法審査の範囲外である。
(2)私見
ア Yはいわゆる部分社会の法理を主張するものであるが、そもそも部分社会という概念自体、根拠が不明瞭であり支持しがたい。
イ また、そのような自律的判断を尊重すべきとしても、それが市民社会と関連する行為であれば、その限りで司法審査の対象となるものである。
 本件中止命令はXに研究中止を命ずるものであり、Xの職務遂行を妨げ、社会生活に影響を与えるものであるから、市民社会と関連する行為であり、司法審査を受けるものというべきである。
2 Xの主張する憲法上の権利について
(1)Yの主張
 Xは学問の自由を主張するが、学問の自由が重要であるとしても絶対無制約ではなく、公共の福祉による制約を受ける(憲法12条)。
 特に、本件で問題とされる遺伝子治療研究については、生命の根幹に関わることもあって安全性について未知の危険が存在すること、「人間の有り様」を変える点で倫理上の問題点もあることから、これを防ぐための強度の規制が正当化されるものである。
(2)私見
 学問の自由が絶対無制約でないという点についてはYの言うとおりであり、学問の自由に内在する制約として権利侵害が正当化される余地はあるが、最先端の科学問題であるなどの一事をもって制約されるものとはいえず、遺伝子治療の危険性等を理由とする規制の正当性を検討するに当たり、個別の事情として考慮されるにとどまると考える。
3 文面上違憲の点
(1)Yの主張
 規制の明確性については、通常人の視点から見て規制内容につき理解でき、当該行為が規制対象に含まれると判断できるかどうかで決すべきところ、審査委員会規則は通常人が見ても明確なものといえる。
(2)私見
 本件規制の基準に明確性が要求される点はXの言うとおりであり、その判断基準はYの議論が妥当する。
 そこで明確性を判断すると、規制要件たる「重大な事態」について「被験者の死亡その他」と例示があること、処分内容たる「必要な措置」についても「研究の中止又は変更その他」といった例示があることからして、一般人が規制要件及び効果につき十分理解できるものといえ、明確性の点で不備はない。
4 法律の範囲逸脱の点
(1)Yの主張
 そもそも大学の規則は条例と異なるから、憲法94条の規律に服する理由はない。もしXの所論を容れるとしても、法律は本件のような規制を否定していない。
(2)私見
ア 確かに大学の規則は条例と異なり、憲法94条による直接の規律は及ばない。しかし、94条以前の一般法理として、法律に反する規制を国立大学が行うことは憲法上も予定されず、かかる規制は違法になるというべきである。
イ 本件では、政府が罰則を伴う法律による規制を設けず、指針の設定にとどめたことは認められるが、これが大学など研究機関による規制を許さないという趣旨とは認められない。指針(参考資料1)の第一においても、目的の中に「適正な実施」とあり、そのために各機関が必要な規制を設けることが予定されているといえるから、審査委員会規則が法律に反するものとはいえない。
5 適用違憲の点
(1)Yの主張
ア 本件では遺伝子治療という未知の危険性を有する研究が問題となっており、また倫理上の問題もあるから、学問の自由といえども高度の制約を受け、明白に不合理な処分でない限りは正当化されるべきである。
イ 本件ではXの研究によってCが重体に陥るという深刻な問題が発生し、またその原因も予想外のものであり再発の危険性も認められるから、研究を中止させることが明白に不合理とは言えず、違憲とはいえない。
(2)私見
ア 本件規制が遺伝子治療の危険性に基づく制約であることはYの主張するとおりであり、規制についての判断が高度に専門的であり、研究機関の自律に委ねられるべき点が大きいことも踏まえれば、研究機関たるY大学の判断のうち、①処分の理由と②処分の内容につき不合理と認められなければ、適法な処分と考える。
イ これを本件について見ると、①につき、本件処分はA大学の事故から遺伝子治療の危険性が認められ、またXの研究でも実際にCに重体が発生したこと、その原因が予想外であり未知のものであることから、規制すべき理由に合理性が認められる。また②につき、危険の大きさからして、その解消まで研究を禁じることにも合理性がある。
 よって、本件中止命令は適用上も違憲とはいえない。
〔設問2〕
1 Xの主張
(1)遺伝子情報保護規則(以下「保護規則」とする)は、診断を受けた者に対する遺伝子情報の開示を制限するものであるが、これは患者Cら受診者が自己の情報を知り、これに従い生活する権利を侵害するものであり、憲法13条に反するものである(情報コントロール権の侵害)。
 これはX自身の権利とはいえないが、Xは遺伝子情報を管理する者であり、Cらの権利を保護しようとした結果処分を受けているから、Cらの権利を援用する適格を有する。
(2)ア 自己の情報を知る権利は強く保障されるべきであり、①重要な目的に基づき、②実質的な合理性を有する必要最小限度の手段によってのみ制約が正当化されるものである。
イ しかるに本件では、①情報漏えいの危険性は受診者への開示規制との関係では問題とならず、その他本人開示を制限する理由はないし、②少なくとも疾病の原因以外の遺伝情報を開示しない(保護規則6条2項)手段は過度に強力であるから、違憲である。
2 Yの反論
(1)遺伝子情報は極めて機微に係る情報であり、患者の体質や病気リスクについての情報を含み、その開示により本人がショックを受ける危険もあるから、ガン告知と同様に患者への配慮も求められ、たとえ成人たる本人が同意していても、パターナリズムの見地から開示規制が正当化される場合がある。具体的には、①目的が正当であり、②手段に目的との合理的関連性があれば、規制は許容されると解される。
(2)保護規則については、①情報漏えい事件が起きたことのほか、先述した遺伝情報の性質から、その開示を制限する正当な目的があり、②患者に不必要なショックを与えないため、同意があっても治療対象に関連しない情報を開示しないことは合理的といえ、合憲である。
3 私見
(1)XYの主張は、遺伝情報を知り、コントロールする権利の存在を前提とするが、そもそもかかる権利が憲法上保障されるかどうかが問題となる。
 憲法13条は人格的利益にかかる権利のみを保障するものと解されるが、遺伝情報は元来人間が知りえなかったものであり、それが不明であったとしても人間として通常の生活を送ることは可能である。科学の進歩により遺伝情報を知りうるようになったとしても、それが前国家的な人権として保障されるものとはいえず、遺伝情報へのアクセスは憲法13条の保護範囲外と解すべきである。
(2)よって、Xの主張はその前提を欠き、またYの言うように本件処分には合理性もあるから、Xの処分を違法とする理由はなく、本件処分は合憲である。

続きを読む

2009年新司法試験不合格答案再現(1.選択科目:知的財産法)

とりあえず答案を晒しておきます。
某掲示板などで紹介されると恥ずかしいのでやめていただけるとありがたいのですが、それなら公開するなという話なのでしょうか。その辺は法律家を志望される皆さんの良心にお任せします。

最初に選択科目の知的財産法を。字数制限などあったので少し削ったり表現を変えていたりしますが、書いた内容も含めて正確に再現したつもりです。
追記部分に簡単に反省を書いておきますが、成績通知や採点実感などの公開があれば適宜補筆します。


2日目 知的財産法(100点)  問題

*得点:55.20/100(上位17%くらい)

知的財産法第1問(特許法)

〔設問1〕
1 小問1について
(1)α試薬の発明(以下「本件発明」とする)は、甲と乙が職務上の研究で完成させた職務発明(特許法35条)であり、A社及びB社の勤務規則により両会社に特許を受ける権利が移転している(33条1項)。これは、ABの共同研究に基づくものだから、ABの共有に係る発明である。
 にもかかわらず甲乙はABに無断で本件発明の特許出願をしたものであるが、以下、甲乙がABに対してなしうる請求について検討する。
(2)甲乙が特許を受ける前
ア 甲乙は勤務規則により特許を受ける権利をABに譲渡しているから、甲乙による本件特許の出願はいわゆる冒認出願であり無効である(49条7項)。しかし、ABとしては本件特許を受ける権利に基づいてその登録を受けたいと望むところ、①いかなる方法によるべきか、②AB単独で請求できるか、の2つが問題となる。
イ ①の点について、未だ本件特許の設定登録がされていない段階であれば、ABは特許を受ける権利の確認を求めて甲乙に確認訴訟を提起すればよいと考える。同確認判決を受けることで、手続の移転(21条)により甲乙名義での設定登録を受けられるからである。
ウ ②の点については、特許を受ける権利の確認は権利の保存行為として単独でなしうるとも思われるが、特許法は共有に係る特許につき共同での出願を義務付けており(38条)、審判も共同ですべきと定めている(132条3項)。これは、設定登録までは共有者は足並みを揃えて手続すべきという趣旨であり、これは確認請求でも同様に妥当する。よって、ABは共同して確認請求をしなければならない。
(3)甲乙が特許を受けた後
ア 甲乙が特許を受けた場合、ABは特許を受ける権利の確認では足りず、登録した特許権そのものの移転を求めねばならない。出願後審査中に無断で移転手続をされて登録を逃した権利者からの移転請求が認められた判例があるが、本件のように自ら出願をしていないABにも、そのような請求が認められるか。
イ この点、裁判例の中には、①特許法は出願をした者に対して特許を与えることになっており(36条)、出願をしていない者に特許権を与えることはできない、②特許を受ける権利の所在と異なり、真の発明者の判断は裁判所には難しい、③登録される前に確認請求していれば救済されたはずであり登録後の移転請求を認める必要はない、として、登録後の権利者による移転請求を認めないものがある。
 しかし、上記のうち①については、特許法が出願された特許を一定期間後公開し(64条)それにより真の権利者の後願を妨げ、また冒認出願を無効として万人の使用を自由としているのは、無効な権利に基づく特許を保護する必要がないというだけであり、真の権利者に権利を与えることを否定するものではなく、むしろ移転を認めることが発明の奨励につながる(1条)。②の点も、職務発明の対価にかかる訴訟で裁判所も発明者の判断をしているし、③無断で出願された場合には登録前に請求せよというのは酷であり、本件でもABがことさらに甲乙の冒認を黙認していたという事情はない。
 したがって、本件でも、特許を受ける権利と特許権が連続していると捉え、ABが不当利得請求権に基づき甲乙に対し本件特許の移転請求をすることを認めるべきである。
ウ この請求についても、甲乙の共有に係る特許を受ける権利に基づく請求として、AB共同で行われるべきである。
2 小問2について
 甲は、本件特許の設定登録を受けているから、形式的にα試薬の製造方法につき特許権を有している。しかし、同特許は職務発明であり、ABには通常実施権が付与される(35条1項)。よって、B社はα試薬の製造販売として本件発明を実施する権利を有するから(78条2項)、甲はB社に対して請求をすることはできない。
〔設問2〕
1 甲乙のなしうる請求
(1)甲乙は本件特許の権利をABに譲渡しており、権利者ではないが、甲乙は職務著作として発明をしているから、その特許権をABに得させることで35条3項に基づく対価請求権を有すべきところ、丙による冒認出願はこの請求権を消滅させてしまう。そこで、丙が特許の設定登録を受けた場合、甲乙は丙に対して債権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)をすることができる。
(2)ここで、甲が自ら特許出願をしたという場合についても、乙はB社に有する対価請求権を同様に害されるといえ、乙は甲に対し損害賠償請求をなしうる。設問1のような手段で会社が甲に対し移転請求をなしうるとしても、債権侵害の危険性はあるからである。
2 ABのなしうる請求
(1)設定登録を受ける前
 ABは、甲についての設問1の1(2)と同様、特許を受ける権利の確認請求をすることができ、これにより特許を受けることができる。
(2)設定登録を受けた後
ア ABは、甲についての設問1の1(3)と同様、丙に対して特許権の移転を求める請求をすることができるとも考えられるが、甲が特許出願をした場合と異なり、甲から丙への開示により新規性(29条1項1号)が喪失したとされる可能性があり、この場合ABの特許を受ける権利も成立せず、移転請求はできない。
 この点、新規性については、秘密保持義務を負わない者への漏洩によって喪失すると解すべきところ、丙は共同研究に関与していないとはいえA社の社員であり、また評価のためとして職務上開示を受けているから、職務上の守秘義務を負っているといえ、丙への開示が新規性を失わせるものとはいえない。
 よって、本件発明は無効とはならず、ABの移転請求は認められる。

――――――――
知的財産法第2問(著作権法)

〔設問1〕
1 小問1について
(1)甲は、美術の著作物(著作権法10条1項4号)である絵画Aの著作者であり、その著作権を有する。ここで、以下の乙の行為は、甲の著作権及び著作者人格権を次のとおり侵害する。
ア 乙は甲の意に反して、未だ乙以外に見せていないAを十数名に見せており、特定かつ多数たる「公衆」(2条5項)に提示したものといえるから、甲の公表権(18条)を侵害する。なお、甲は公表しないことを条件にAを譲渡しており、同条2項1号の推定は否定される。 
イ 乙は甲の意に反して、Aを丙に対して譲渡しているから、甲の譲渡権(26条の2)を侵害する。
(2)以上の権利侵害に対して、甲は不法行為として損害賠償を請求をできる(民法709条)。また、甲は差止請求権(112条1項)も有するが、乙はすでにAを丙に譲渡しているため、これ以上の侵害はありえないから、差止めはできない。
2 小問2について
(1)丙は、Aに描かれたキャラクターを彫刻化し、彫刻Bを作成している。これは、甲の翻案権(27条)を侵害するものと考えられるが、丙は絵画そのものに手を加えたのではなく、そこに描かれたキャラクターを元にして彫刻を作ったのであるから、Aからアイデアを得てBを創作したにすぎず、甲の著作権侵害にはならないとも思われる。
 この点、翻案とは、既存の著作物に依拠し、その表現上の本質的特徴を維持しつつこれに増減修正などを加え、元の著作物の表現上の特徴を直接感得させる新たな著作物を創作する行為である。そして、絵画Aに描かれたキャラクターを彫刻化する行為は、Aの二次元的表現を三次元的表現に改変し、元の著作物Aにある表現上の特徴(キャラクター)を直接感得させる新たな著作物の創作といえるから、アイデアではなくAの表現そのものの翻案というべきである。
 よって、丙は甲の翻案権を侵害している。また、同行為は甲の同一性保持権(20条1項)の侵害にもなる。
(2)以上の通り、彫刻Bは絵画Aの翻案物でありAの二次的著作物であるから、Bに対しては甲も原著作者としての権利を有する(28条)。そこで、甲に無断でされた丙の以下の行為は、甲のBに対する原著作者としての権利を侵害する。
ア 丙は、Aの作者を知らず、したがって甲の名前をBに表示していないから、甲の氏名表示権(19条1項)を侵害している。
イ 丙は、Bを甲に無断で玩具店店内に置き、展示しているから、甲の展示権(25条)を侵害している。
ウ 丙は、Bを甲に無断で丁市に譲渡しているので、甲の譲渡権(26条の2)を侵害している。
(3)以上の権利侵害を理由として、甲は丙に対して不法行為による損害賠償を請求できる(民法709条)。また、差止請求権(112条)については、Bは既に丙の手元にないためBに関する差止めはできないが、Aの翻案行為については差止めを請求できる。
〔設問2〕
1 小問1について
(1)前述の通り甲は彫刻Bについて原著作者として権利を有するところ、戊は、Bを映画Cに撮影固定し、DVDとして複製している。これは、彫刻Bについての甲の翻案権(27条)ないし複製権(21条)を侵害するものである。
(2)また、戊は(1)のような侵害行為で作成されたDVDを販売しており、これにより甲の譲渡権を侵害している。
(3)戊によるBの撮影、映画化は甲のBについての同一性保持権(20条1項)を侵害し、また甲の氏名を表示しない点で甲の氏名表示権(19条1項)を侵害している。
2 小問2について
(1)直接感得性の不存在
甲は、戊が彫刻Bを撮影し、映画CにBが映っていることをもってBの翻案権ないし複製権侵害としているが、翻案や翻案というためには元の著作物の表現上の特徴を直接感得させることを要するところ、CにおいてBの表現上の特徴は直接感得されない。すなわち、BはCの中でわずか10秒しか映っておらず、それも単に背景として映りこんだだけであるから、彫刻Bはほとんど意識できない背景の一部にすぎず、その表現上の特徴が映画Cに現れているとはいえない。
 したがって、戊の映画撮影は甲の著作権を侵害しない。そして、著作権侵害でない行為については、法の趣旨から、著作者人格権侵害も否定されるべきである。
(2)公開の美術の著作物の利用
 Bは美術の著作物であり、原作品である。本件ではこの彫刻Bが一般公衆に開放された市民公園内の屋外に丁市により恒常的に設置されたものであるから、46条でその利用が許される。
3 小問3について
(1)戊の行為が翻案ないし複製に当たらないという点について。本件事情においては映画CにおいてBの表現上の特徴が直接感得できる。
 すなわち、Bは子どもの喜びそうなキャラクターであることを理由に設置されており、市民公園にふさわしいキャラクターであることがその表現上の特徴となっているところ、戊は、丁市を中心としたストーリーでのラストシーンの舞台である市民公園を特徴付けるBを、ラストシーンの6分の1に渡る長さで撮影しており、その舞台の描写と相まってBの表現上の特質を感得させる。
(2)46条適用の件について。同条の趣旨は、公衆に開放された屋外に作品を展示した場合にはその著作権の利用を認める著作者の意思が推定されるとの前提で、公共の場の著作物の利用制限による弊害と著作者の権利の調和を図ることにあるから、著作者の意に反して公開された著作物については、同条の適用は認められない。
 本件での彫刻BはAの翻案物であり、その著作者甲の意に反して作成され公開に至ったから、その公開も甲の意思に反する。よって、Bの利用につき46条は適用されない。

続きを読む

どうしてこうなったか

今日から勉強を再開するために学習記録などをつけようと思います。
自分にとっての記録なので人さまにお見せできるような内容ではありませんが、公開したほうがやる気になってよいのではないかと考えて公開しています。

試験関係者で何かございましたらコメントいただければうれしいです。これまでのやり方が間違っていたから落ちたのだと分かっておりますので、ご指摘などいただけるとうれしいです。
来年受験される皆さん、一緒に合格しましょう。


最初に、こんなブログを立ち上げることになった経緯を簡単に。

1.ロー入学までの法律業界との絡み
H17にT大学法学部に進学、何となくロー進学かと血迷う。
H18に友人の誘いで旧司法試験短答を受けて合格(48点)し、そのまま何となく論文に特攻したが当然意味不明で不合格、結果もひどすぎる(AFGFCB、総合F)。
しかしロー入試は何とかなってよかった。…よかったのか?

2.ロー入学から卒業まで
H19にT大学法科大学院既習コースに進学。安普請な建物です。
その後2年間、授業で居眠りなどしつつだらだらと過ごし、H21に無事卒業。一応成績は上位4分の1以内でしたがどうでもいいです。

3.新司の受験勉強
10月くらいから何となく答練に通いつつ短答対策。今思うと試験を舐めすぎていました。
冬のTKCは点数を忘れましたが既習平均くらいでしょぼい結果に。T校の全国模試では論文801/1400点で150位くらいだったが今思えばこれは一体何だったのかと。短答は気分的にさぼりがちだったため模試の短答パートはC判定で微妙、そこで4月5月は短答対策を中心にやって本試験へ。

4.本試験
1日目の短答刑事系で大失敗したと感じテンション激落ち。
2日目の選択科目(知財)は条文読まなかったりでアウト。憲法は量も多く、短答失敗の悪寒でやけになったか変なことを書く。行政法は割と書けた気がしますが今思えばだめだったんですね。
休みを挟んで3日目の民訴は弁論主義云々の説明をスルー、民法は謎だったので適当に書き、商法は割といけたと思うも議決権の話は謎。
4日目の刑法は完全に死亡で、刑訴も酒巻説を蹴ってどぶにはまり込み、その他精彩を欠く出来に。
正直ダメな出来でしたが、それでも受かるんじゃないかと思っていた6月以降の自分が恥ずかしいです

5.結果発表
心配だった短答は258点(79,106,73)で1547位。
論文は何とかなってると思って10日に発表を見に行ったところ番号が見つからず。
そしてはじめて現実に気づく←今ここ


見直してみると恥の多い受験生活を送ってまいりました。遊びすぎです。
親などに申し訳が立ちませんし、このままでは終われないので、この8ヶ月は頑張って勉強することにします。

というわけで、勉強の記録をつづっていくことにします。あと反省のため、最初にゴミ再現答案をさらしておきます。某予備校に出しているのですが、著作権絡みで公開を禁止されているということもないようなので。
プロフィール

眠れる豚

Author:眠れる豚
名前:眠れる豚
2009年度新司法試験で討ち死にしてしまったため、再チャレンジのために淡々と勉強してきた法務博士(無職)。2010年の試験では何とか合格することができました。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。