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二回試験のご報告と更新終了のお知らせ

発表から間が空いてしまいましたが、二回試験に無事合格しておりました。
来年からは東京で弁護士として働くことになります。

修習の一年間はとても充実しており、各実務庁や指導担当の弁護士先生、研修所教官の方々には本当によくしていただき、限られた時間ではあるものの、いろいろと教えていただきました。勤務先の業務内容からして、修習で学んだ内容をストレートに活用する機会は必ずしも多くないのかもしれませんが、法曹三者の立場から実際に仕事をしている姿を見せていただき、修習生としてとはいえ実際に関わらせていただいたことは、法律家として働くということの意味や自分の進路を考える上で、貴重な経験になりました。
また、一年間の修習を通じて、実務修習をともにした修習地の同期や、研修所のクラスメイトと知り合うことができ、大切な友人をたくさん得ることができました。飲み会で下らない話から法律家のあり方まで様々な話題で盛り上がったこと、課題や授業のために一緒に準備し議論したことなど、今振り返るとどれも懐かしく思えます。

修習の意義についてはいろいろ言われていますし、教育カリキュラムとしては改善の余地があるようにも思います(とりわけ集合修習について)。しかし、法曹三者の職務を実際に見て、内部の人間や志望者と触れ合い、心を通じ合わせるという機会が得られるという点で、修習にはほかでは得難い価値があったと感じています。そういった経験を法律家すべてが共有してきたからこそ、検察の不祥事など様々な異常事態があったにもかかわらず、法曹三者がそれぞれの立場を法律のプロとして信頼し、司法実務が成り立っているところがあるのではないでしょうか。
その意味で、今年から修習生の給費制が終わり、修習の意義についてきちんと議論されることなく貸与制に移行するというのは、とても残念なことです。

以上が修習の感想ですが、せっかくなので、これから修習生を目指す司法試験受験生(とりわけこのブログの趣旨から再チャレンジ組の方々へ)と、修習がはじまった65期の修習生へ、思うところを書いておきます。

僕自身の司法試験合格から1年以上経ってしまいましたが、いま修習を終え、受験勉強でやってきたことは無駄ではなかったというのが偽らざる実感です。修習で垣間見た実務は、司法試験で得た知識だけで何とかなる世界ではありませんが、そうした知識は当然前提とされます。例えば検察庁では、刑法の理解がなければ処分を決めるための的確な捜査を遂げることはできなかったし、裁判所では訴訟指揮について手続法の理解が前提となります。弁護士でも、一般民事の事件でも意外と(!)法律的に悩む問題は多くて、そういったところではこれまでの知識や、司法試験でも必要とされる「法律的な議論の運び」が求められたように思います。
今思えば、二年前に間違って受かってしまっていたら、そういった前提を欠いたまま修習に臨んでしまい、本来得るべきものの手前で躓いてしまっていたことでしょう。不合格を受けてそれなりに勉強していたからこそ、修習の期間に裁判官と議論したり、弁護士と新たな法律構成について検討したり(司法試験の問題で出てくるような高度な問答ではありませんが…)と、貴重な機会を得ることができました。ですから、辛い受験勉強は決して無駄にならないし、再受験になったことも長い眼で見れば間違っていないといえるはずです。
そんな風に不合格を前向きに捉えることが難しいことは僕自身も承知しておりますが、かといって後向きに考えたり、試験を意味のないものと捉えて勉強しても得られるものはないので、せっかくの勉強機会を先に活かすという気持ちで、日々の勉強を継続されることをおすすめします。

一方、修習がはじまった方々は、それぞれの修習地での生活が始まり、だんだんと修習生活に慣れてきた頃ではないでしょうか。誰もが言うように、修習期間はとても短いので、体に気をつけつつ、悔いのないようにお過ごしください。
修習期間の過ごし方について偉そうなことをいえた立場ではないのですが、一年間の修習を経た身からして思うことは、裁判・弁護・検察と、仕事に関わる立場やスタンスが違う中で、それらに共通するところを意識することが有益だということです。結局のところ、それら3つの仕事の中核は、事実を判断し、評価することであって、その方法論や考え方に三者の違いはあるものの、目指すところは近くにあります。そういう頭で三つの立場を行き来することで、自分なりにいろいろ考えるところがあるんじゃないかと思います(もちろん、集合修習での5科目も同じことで、民事・刑事や立場の違いはあれど、どれも事実認定という点で共通しています)。
そのような共通点や違いを実感するためにも、せっかくの修習期間を無駄にせず、(多少合わないなぁと思う人も含めて)裁判官や検察官、弁護士とも仲良くしておくと、いろいろ面白い話が聞けるし、修習が終わってからの懐かしい思い出が増えるというものです。


とまぁ、例によって偉そうなことを長々と書いてしまいました。
ともかく、僕自身の司法試験と司法修習はこれで終わり、無事法律家としての一歩を踏み出すことができました。これを節目に、このブログも更新終了ということにさせていただきます(というほど更新していませんでしたが…)。
僕が司法試験の再チャレンジに成功し、無事に修習を終えられたのも、このブログで僕の受験生活を見守ってくださり、励ましてくれた皆さまのおかげです。最後になりましたが、どうもありがとうございました。

※記事の更新は終わりですが、コメント等で質問があれば、可能な範囲でお返事差し上げたいと考えております
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新司法試験に向けた学習方法に関する私見

今年の合格発表後、コメント欄でいろいろご質問をいただくことがあり、また最近不合格者の方と試験対策について直接お話しする機会があったことから、そこで述べた私見を中心に、再チャレンジに向けて気を付けたほうがよいと考えることについていくつか書きつけておくことにします。
最良の勉強方法は各人にとって異なりうるし、どのような答案が評価されているのかは試験委員でない以上推測するしかないので、僕の考えが正しいと言い張るつもりは全くないのですが、いちリベンジ者の感想として、何かしらの参考になれば幸いです。
*以下の内容は他の再チャレンジブログをいくつか読んだ感想を含んでいますが、特定のブログに記載された学習方法や答案を論難する趣旨ではなく、あくまで私見を述べているだけであることをお断りしておきます。


1.勉強計画は「時間」ではなく「内容」で管理すべき
本エントリを書くに先立ち、再チャレンジしている方のブログを検索でいくつか読んでみたのですが(みなさん頑張ってください!)、その中で「今週は○○時間勉強した」「毎日○○時間勉強する」といった目標が立てられているのが散見されました。個人的には、このような目標の立て方は自己満足に終わってしまうような気がして、お勧めできません。
当たり前のことですが、司法試験というのはある勉強時間に到達したら受かるというものではなく、合格水準の答案を作成できれば受かる試験です。そうであれば、勉強した時間を目標として立てるのは何ら意味がなくて、合格に必要な知識・技術を得るために何をすべきかという「勉強内容」を前提として、それをどれだけこなすかという観点から目標を立てるべきです。

僕の場合、年内にまとめノートを民法以外全科目作る(民法は類型別を中心に簡易なものを作っただけです…)ことと、所持している事例演習の問題集(民事法、憲法、行政法)を完成させること、短答の演習を一通り終えることを目的として、そのために10日で1科目のまとめを行うペースでまとめノートを作成すること、事例演習を1日最低1問解くこと、短答問題集を1日100問解くことがノルマとなり、まとめノートについては各科目の必要項目をだいたい10分して1日の作業目標が決まっていました。その他、勉強会がある場合、余裕のある日にその準備として過去問や指定教材を解く時間を作っていました(その日は事例演習を休んだりしている)。
この結果、思ったより早くノルマが終わったのでゆっくり気分転換した日もあれば、思ったより量が多かったので若干勉強量が多くなった日もありますが、概ね1日6~8時間の学習時間になっています。時間的には平均的受験生と比べて多いわけではないでしょうが、目的意識を持って勉強しているので、それなりには密度のある勉強ができていたとは思います。

2.答案で重要なことは「問題意識」を見せて、それに対応した規範と答えを立てること
答案作成方法について何事か講ずることができるような実力はないので恐縮ではありますが、これまた再チャレンジ者の再現答案をざっと見て、何となく気づいたのは、論点が唐突に出てきているなぁということです(全部読んでるわけではないので、すべての再現答案がそうだという趣旨ではありません)。

例えば、今年の刑事訴訟法の前半メイン論点は、明らかに別件逮捕です。この論点に気づいていない答案は一通もありません。しかし、別件逮捕がなぜ問題になるのかということがきちんと指摘できている答案は少なかったように思われます。なぜ別件逮捕が論点になっているのかと問われれば、すべての受験生は「重大な本件の逮捕勾留要件がないのに、軽微な別件で身体拘束して本件で取り調べをすることは、本件との関係で令状主義を潜脱するから」といった回答ができるはずです。こういった問題意識があってこそはじめて、問題文から事実を切り出して法的問題として論じる必要が出てくるはずなのに、ここを省略してしまうと、読み手としては「この受験生は論点主義だな」と思ってしまうのではないでしょうか。少なくとも、きちんと問題意識を書いている答案より印象は悪いはずです。
問題意識をきちんと書くことは、その後の論証が充実することにもつながります。別件逮捕の論点についても、上述のような問題意識を前提にして各種学説が展開されているわけで、それ抜きに帰結だけ書いても説得力はありません。

コメント欄でも書きましたが、論点について学習する際にも、こういった「問題意識」をきちんと押さえるように心がけて、それとの関係で判例や学説を理解するようにすれば、上記のような点をもれなく論じることができるようになると思います。その意味で、再チャレンジ者が安易に「論点集」のような知識補充に走るのは避けたほうがよいと考えます。そもそも、不合格答案の中で、論点が明らかに欠けているという答案はそんなになくて、論じている事項については合格水準の答案とそこまで違いはないのですから。

3.憲法で的を外さない答案を書くためのポイント
憲法の学習方法について質問を受ける機会が多いので、この点についても少しだけ書いておくことにします。もっとも、この点については宍戸先生の法セミの連載が単行本化された『憲法解釈論の応用と展開』が非常に示唆的ですので(個人的に興味があったので修習とは何ら関係がないのですが買って読んだのです)、そちらを読まれることをお勧めします。

今年の憲法では、グーグルストリートビューっぽいサービスの規制について、原告側に22条を前提とした構成を論じさせて低い評価を受けたのではないかという人が多かったようです。出題趣旨にもそのように書いてありますし、僕も問題をざっと読んだ感想として、原告で21条論をやらないのは筋が悪いのではないかと感じました(もちろん、これは試験を受けていない後付けの感想であって、ハードな本試験で適切な主張選択をすることが難しいということは承知しているつもりです)。

憲法の問題に回答する際のポイントは、出題方式に合わせて、原告の主張、被告の再反論という頭で法律構成を考え、問題の山場がどこかを見つけることだと思います。以下、この観点から今年の問題を少し見てみます。
今年の問題を読むと、原告のサービスは一応表現だけども、表現と評すべきメッセージ性があるわけではなく、便利な情報を提供する営利的行為のように感じられるところです。それで22条論を選択した人が多いのだとは思いますが、22条論を前提とした違憲審査基準では原告の勝ち目はかなり薄くなるところで、原告の立場であれば当然21条論を主張するはずです。被告は逆に、こんなサービスは表現と関係ないから22条論で処理すべきと考えるでしょう。そうなると、このあたりの評価が本問の山場なんだなぁということに思い至るはずです。
すると、原告の主張を組み立てる上で、どうして原告のサービスが表現といえるのかという説明が要になってくるのだろうと頭を働かせることになるわけですが、ここはかなり難しいところで、思想や意見ではなく情報の流通そのものが保護されるべき根拠について、何事かを書かなければいけません。僕も満足な回答は思いつきませんが(ジャスミン革命のように、ネットを通じた情報流通システムの存在が意見表明などの新しい可能性を基礎づけており、こうしたインフラを維持するためには、直接思想や意見に関係しない情報にも強い保護を与える必要があるといった議論を、長谷部先生がおっしゃる「表現の自由の公共財的性質」とか、表現の萎縮を防ぐという学説の問題意識を借りつつ論じるとかでしょうか…)、問題に気付いて何かを書こうとするだけで、評価が違ってくるはずです。知る権利に基づく主張はダメだという出題趣旨のコメントがあり、それはその通りなのですが、それでも22条論よりはずっとよい評価を受けているのではないでしょうか。
逆に、被告の見解や私見を論じる際には、上記立論の弱い部分をついて、21条論が成り立たず22条論になる、あるいは21条論だとしても思想・意見そのものでない情報流通に関しては保護の程度が弱くなるという主張(例えば、レペタ判決にあるような「憲法21条1項の規定の精神に照らして尊重されるべきである」という一段下げた評価)、または萎縮性の観点からして営利性の強いサービスは保護程度が落ちるという営利的表現の自由に関する議論をすることができます。これは、原告の議論が題意に即していればいるほど、書きやすくなるものです。敵が強いと盛り上がるということですね(司法試験に関して同じような感想を抱ける猛者はそうそういないでしょうけど)。

今年の憲法の問題はかなり難しい気がしており、それだけに勉強方針が揺らぐ方もいらっしゃるのではないかと思うのですが、上記からわかるとおり、若干無理筋で自説を展開すべき部分もあるものの、基本的な判例・学説の知識を押さえていれば、それなりの答案を書くことはできます。前にも憲法の学習方法として書きましたが、違憲審査基準の議論なども含めて、判例や学説を「道具」として使うという観点から、道具を仕込むための勉強をしていくというのでよろしいのではないでしょうか。
それら道具の位置づけや大まかな使い方は『憲法上の権利の作法』や『憲法解釈論の応用と展開』で説明されていますから、基本的な知識をつけた上でそれらの本を読み、事案を読んで原告・被告の頭で考えるという練習(過去問演習)を積めば、高得点ではないにしても、落ちない答案を確実に書くだけの力はつくと思います。


長い割にあまり示唆的でないコメントですが、最近の質問に接して思うところを書きました。
なんにせよ言えることは、司法試験の合格に必要なのは「膨大な知識」でもなければ(とはいえ学習すべき事項は決して少なくないですけど…)「最先端の学説知識」でもなく、みんなが知っているはずの内容をきちんと理解し、事案に即してうまく展開するということだけです。もちろんこれだって「だけです」というほど容易ではないので、その能力をつけるために勉強を積み重ねる必要はあるのですが、そのための勉強方針は自分で考えてしっかり固めるべきだし、それは「何時間勉強した」という形式で振り返られるべきではなく、「今日は何を学んだか」という実質によって反省されるべきものだと思います。

以上、皆さまのご健闘を心よりお祈りして、本稿を閉じさせていただきます。
ここは受験対策ブログではないので、たぶん今後こういう文章を書くことはないと思いますが、ご質問などあれば可能な範囲で従前同様お答えさせていただきます。

お久しぶりです

どうもごぶさたしております。

去る9月8日、今年の新司法試験合格発表がありました。自分にとっては不合格からもう2年経ったということで、時がたつのは早いものです。
このブログなどが縁でコメントを寄せてくださった方も受験されており、再チャレンジの方も含めて合格の報せを聞くことができました。わざわざご報告いただきどうもありがとうございます。そして、合格された皆さま、本当におめでとうございます。

ただ、全員が合格できるわけではありませんので、こちらをご覧になっている方の中には、今年意に沿う結果が出なかった方も大勢いらっしゃるかと存じます。
僕は今年の試験を受けておりませんので、今年の問題について何事かを述べることはできませんが(感想としては、難しく、それでいて基本的理解をきちんと表現することで合格水準に達する問題なのだろうという意味では例年通りだと思います)、一度失敗して何とかなった立場から、僭越ではありますが思うところを書いておきます。

不合格の結果を突きつけられて、今が一番悔しく、また自分に自信を無くしてしまう時期だと思います。僕自身、自分は法律家に向いていないのではないかと真剣に悩んでしまいました。このまま来年受験しても大丈夫なのかと不安な気持ちでいっぱいでした。
僕がこうした不安を乗り越えることができたのは、友人の助けを借りながら、自分の弱点を見直し、勉強の方針を考えることができたからでした。いま不安でいっぱいの皆さんも、失敗と正面から向き合い、勉強のあり方を見直していく中で、不安は自然と解消されていくはずです。

それでも中には、もう勉強しきったとか、自分には力がないのだと感じてしまう人がいらっしゃるかもしれませんが、僕が不合格から8カ月間、自分なりに司法試験に向き合った感想を述べさせていただくと、ロースクールを卒業し、受験までたどり着いている以上、やり方さえ間違えなければ合格することは絶対可能なはずです。
修習の同期を見ても、皆さんそれぞれに個性的でいいところがありますが、みんなに共通する「法律学の才能」とか「絶対的な頭の良さ」みたいなものがあるかというと、そのようなものはありません。僕も含めて、何とか司法試験を潜り抜ける上で必要だったのは、試験に向けた勉強の方法を工夫し、やるべきことをやるということだけです。
そして、その「やるべきこと」を見つける上で、不合格経験があるというのは決定的に有利なことです。落ちてしまった事実は変えられませんが、失敗を分析することで次の受験の結果を変えることは誰にだって可能です。来年の試験まであと8か月、短いようではありますが、毎日コツコツやれば1科目につき1か月あります。そうやって思いながら段々と妥協して時間を浪費するようでは同じ結果を繰り返してしまうでしょうが、不合格者しか感じることのできない悔しさを忘れずにいられれば、弱い自分と戦うこともできます(僕自身もそうでした)。

また、受験勉強自体も、将来に向けて無駄にはなりません。まだ修習段階ではありますが、当たり前のことながら受験レベルの判例・通説に関する知識やものの考え方は法律業務の前提となってきます。自分自身も、一昨年間違って合格してしまっていたら、充実した修習は過ごせなかったのではないかと感じています。
個人的なことになりますが、僕も一年回り道したものの、おかげさまで同じ班のメンバーや各実務庁の指導官にも恵まれ、修習生活は大変充実しています。一振りしたとしても任官や任検という道が閉ざされるわけではありませんし(僕自身も任官についてお誘いをいただき、真剣に検討した時期もありました)、そのほかの可能性についても同様だと思います。偉そうなことを言えた立場ではありませんが、不合格という結果は終わりではなく、自分を変え、自分の進路を踏み出す新たなはじまりなのだと、今では確信をもって言うことができます。

もちろん、法曹としての道が唯一の選択ではないわけですが、その道をあきらめたくないという気持ちがあるのであれば、不合格を正面から受け止めて自分を見直し、再チャレンジすることで道は必ず開けるはずです。自分を信じて、かつ謙虚に勉強を続けることができれば、来年はきっと、笑って修習への準備に臨めると思います。
僕自身、この先に二回試験を控える身分であり、僕のほうが少しだけ先に進んでいるとはいえ、皆さまと同じく法曹を目指す立場です。良き法曹になれるよう、ともに頑張りましょう。

P.S.
1)再受験に向けた学習法の私見はすでに書いているとおりですが、一番大事だと思うことを強調しておくと、「よくばらず基本をきちんとやる」ことにつきます。今度は上位合格を狙うぞ、というのでいろいろ手を出す気持ちはわかりますが、再受験者がホームランを狙うのはリスクが大きいし、試験自体がシングルヒットを重ねると結果的によくなる仕組みになっているように思われるので、とにかく基本の理解とそれを表現する力を固めましょう。難しいことを書けなかったから落ちたという人はおそらく一人もいないし、修習で見る限り、実務でも基本が一番大切です。難しいことは実務家もみんな調べてるわけですから。

2)コメント欄の内容を整理したいと思っていたのですが、なかなか時間が取れなくて作業に着手できていません。参考にされている方がいらっしゃったら不便な思いをさせてしまい申し訳ありません。

再チャレンジ成功までの記録(5.まとめ)

5.まとめ

以上が、僕が不合格になってから今年合格するまでにやってきたことです。具体的な内容については、勉強日誌として各日に書いていた通りです。

ここまでご覧になっていただいた方には分かると思いますが、僕がやってきた勉強内容は決して多くないし、特別なことをしたわけでもありません。司法試験は毎年2000人が合格できる試験であって、特別な試験ではないし、頭が良くないと受からないというものでもなさそうです。逆に、(僕はそうではないですが)優秀な方でも順位が振るわなかったり、落ちてしまうということもある試験です。そういう試験への対策というのは、必然的に「普通の勉強」ということになるのだと思います。
試験で求められていることをきちんと把握した上で、とにかく基本的なこと、法律学として当たり前のことを、普通に淡々と書いていけば、合格の枠に入る。僕はそう信じてやってきたし、その結果何とか合格することができました。しかし、不合格から再試験までの8ヶ月間を通じて実感したのは、その普通のことをきちんとできるようにすることはものすごく大変なことだということです。終わってみればなんということのないように思われる試験でも、その結果に至るまで受験生はみんな必死に勉強しています。不合格を期に受験に正面から向き合って、そんな当たり前のことに初めて気づくことができました。

昨年の僕と同様、試験で失敗してしまった方に向けてのメッセージを述べさせていただくと、それは「失敗から逃げず、諦めないでやれば、絶対上手く行くはずだ」ということに尽きます。
司法試験合格者の中には運がよかったという人もいるでしょうし、僕の成績がそれなりに良かったことについても、運の要素が含まれていると思います。しかし、その反対である不合格について言うなら、そこには必ず自分に原因があります。それを認めるのは辛いことですが、その分析から始めなければ、確実に合格することはできません。今年失敗した方にとって今が一番辛いときだと思いますが、ここで負けては本当に失敗したままで終わってしまいます。
一番よくないのは、自分には実力がないとか、頭が悪いとか、そういった良く分からない理由で諦めることです。実際、僕も落ちた翌日くらいは、自分には試験は向いてなかったんじゃないかとか、今年の問題でダメだったのは頭が悪かったからだろうとか、そういう不安でいっぱいでした。そんな理由で失敗をごまかすことは実は簡単で、自分が勉強できていなかった事実を受け入れて勉強をやり直すことのほうがより辛いことでしたが、その辛さから逃げたらすべてはおしまいです。もちろんいろいろな事情があるでしょうし、法律家としての道は数ある進路のなかの一つにすぎませんから、司法試験と異なる道を歩むことが間違っているとは全然思っておりませんが、その理由が自分に自信を失ったということであれば、それはとても残念なことです。
僕は偉そうなことを言えた立場にはないのですが、僕自身は友人たちに励まされて前向きになることができたので、敢えてこういうことを書かせていただきました。今年不本意な結果に終わった方も、自分に自信を持って、あきらめずに挑戦すれば、必ず成功するはずです。むしろ、失敗という経験がある分、それがない受験生より有利だと考えるべきです。

これからはじめて司法試験を受験されるという方に対しては、繰り返しになりますが「普通のことを普通に書けるようにしよう」ということを述べておきます。焦らず欲張らず淡々と学習を積み重ねていけば、結果はついてくるはずだということです。
これから受験される方は、今年の問題や出題趣旨を見て、とてつもない試験だと思われるでしょう。実際、本試験はすごくレベルが高い問題です。しかし、その全てに答えきる必要はありません。自分のできる範囲を少しずつ広げていけば、出題趣旨の7割8割に手が届き、その結果何とか合格している、そんな試験だと思います。偉そうなことを言っているローの教授だって、実際に7科目で完全な答案を書けるわけではないだろうし(書ける人もいるのかもしれないが、そういう奇人は少ないので気にする必要はない)、実務家だって自分の司法試験受験時にそんなすごい実力を発揮できていたとは思えません。要求が高まっているとしても、自分がやれることは限られているし、またその限られたことをしっかりやるだけでも、合格に十分な実力はつくはずです。
自分もそうでしたが、ロー生活の中で授業についていくにせよ、自分で勉強するにせよ、自分を律して学習するということは容易ではありませんし、何となく合格するんじゃないかという気分になってしまいがちです(そういう人間は往々にして勉強が足りていないので気をつけるべきでしょう)。でも、今年勉強してきて分かったことは、勉強したこともしなかったことも、全ては裏切らずに結果に現れるということです。今年僕が比較的書けたように思った部分は事前に学習していたことだし、書けなかった部分はノートまとめを怠ったりしていた分野でした。やれるだけのことをやっておくという、これまた当たり前のことが、司法試験においては全てです。結局、自分との戦いだということです。

受験について長々書いてきましたが、最後に、僕自身が不合格を経て感じたことを書いておきます。
昨年不合格になって、様々な方に迷惑をかけてしまいました。自分自身にとっても、1年間法律家としての進路が遅れてしまい、正直なところ不毛な回り道だったということは否めません。
しかし、僕は不合格をきっかけとして、さまざまなものを得ることができました。試験と正面から向き合ってこられかった自分の弱さに気づけたということもそうですし、そんな弱い自分を支えてくれるたくさんの友人・親などのつながりがあることを改めて知ることができました。法律家としての進路についても、一つ上の63期にはローの同期などたくさんの友人がいて、そして今年64期の司法修習生として、新しい人とのつながりを作る機会を得ることができます。その意味で、僕には不合格をきっかけとして二倍の同期ができるのだということで、前向きに思っています。
再チャレンジを成功させ、このように思うことができたのも、このブログの読者も含めた、たくさんの方々の支えのおかげです。本当にありがとうございます。このお礼は、僕が法律家として成長していくことを通じて、返していく所存です。


さて、今後のこのブログについてですが、もう試験について書くこともありませんので、おそらく新しい記事を書くことはないと思います。ただ、せっかく試験について記録を残してきたということもあるので、参考にされる方が少しでもいればということで、何か問題がない限りはこのまま残しておきます。
個人的な進路について言うと、実は合格発表前に昨年の内定先から再度内定をいただいており、そこで弁護士として働かせていただく予定です。というわけで割と余裕はありますので、もし何か僕に答えられることなどあれば、コメント欄に書いていただければ可能な限りお答えいたします。ただ、所詮は普通の受験生にすぎませんし、実際に面識がないと適切なコメントをすることは難しいと思いますので、そのあたりは最初にお断りしておきます。

再チャレンジ成功までの記録(4.具体的な学習方法・各論)

*長文なので注意してください
*正直に書いているので、恥ずかしいことも書いてある一方、不快に思われる表現・内容が入っているかもしれませんが、ご理解ください。また、試験に関する分析などはすべて私見なので正確性は保証できません。内容について信じるも信じないも自由です
*個人的には、自分のことを直接知っている人に生で話を聞くのが一番ためになると思っています。自分に合った勉強法を見つけるには、自分のことをよく知っていて、客観的に見てくれる人のアドバイスが有益だからです


4.具体的な学習方法(各論)
ここからは科目ごとのインプット・アウトプットに使用した教材などを書いていきます。短答対策は既に書いたことに尽きているので、基本的には省略しています。

4.1 民事系
§1 民法
民法は苦手な科目で、正直対策もさぼってしまった感はあります。もし今年落ちていたら、真っ先に民法をやり直していたと思います。

インプットとしては、まとめノートの作成をやっていたのですが、民法では基本書をまとめることはせず、類型別を基本としつつ、『要件事実論30講』や内田民法なども参考にして実体法の議論を適宜加筆するという形式でした。絶対出題される要件事実問題に対しては、実体法の解釈と関連させてきちんと指摘できるようにすべきだと考えたからです。もちろん、基本書をベースにしたまとめも作るべきではありました。おかげで家族法は散々でしたし、設問2小問2も問題の所在を外してしまいました。サボった結果はきちんと反映される試験です。
基本書によるまとめノート作成に代わってやったのは、『Law Practice 民法』(Ⅰ・Ⅱ全2巻)をざっと読み、解説を要約してテーマごとにまとめたということです。代替手段なのでインプット方法としてはムラがあることが否めませんが、知識の確認・整理には役立ちました。

アウトプットについては、『事例研究民事法』をやっていたのですが、役立つ設問もあればそうでもない設問もある…というところではあります。しかし、出題形式はともかく、総じてよい演習になったと感じています。
民法は要件事実も含めた知識の整理が最重要であり、インプット優先でよいのではないでしょうか。特に要件事実問題は、どういう要素を書くべきなのかを出題趣旨から研究し、それに合わせてインプット・アウトプットの対策を行うべきです。僕が気をつけたのは、単に条文から要件を切り出すだけでなく、実体法的説明も踏まえて記述すること、事実が複数の意味を持ちうることに気を付けること、時的要素を意識することの3つですが、直接事実と間接事実の区別などにもっと意を払うべきだったと反省しています。

§2 民訴法
民訴は新司法試験で最も理論的に難解で、対策も難しいような気がしています。こういう科目だからこそ、基本をしっかり押さえるということに気を付けたつもりです。

インプットに関しては、『民事訴訟法講義案 改訂補訂版』をベースにしつつ、高橋宏志先生の『重点講義民事訴訟法』を参考にして補筆していく形でまとめノートを作っていました。
講義案は殺風景ではありますがかなりよい本で、解答に当たって必要な知識はほぼ過不足なく入っているように思います。その上で重点講義ですが、実はこの本も注などに入り込まなければ分かりやすい本で、講義案のシンプルさを埋めて判例・学説の流れを理解するには好適の本だと思います。あと、ローで高橋先生に教わっていたという事情もあって、ノートが存在していたということも大きいです(ちなみに高橋先生は授業で「何か基本書一冊をしっかり読めばよい、論文とか読む必要はない」とおっしゃっていました。難しい科目でも、あまり手を広げる必要はないということでしょう)。その他、百選も一応1周くらいしています。
インプットに関する反省点としては、重点講義に入っていなかった内容のまとめが手薄だったということです。今年はその一つである処分権主義がモロに出題されてしまい、設問4小問2はかなりしょぼい内容しか書けませんでした。現在法学教室で連載が再開されているようですが、頑張って欲しいものです。

民訴のアウトプットに関しては、試験の水準がとても高いので、これも過去問で勉強するほかにはないんじゃないかと感じています。誘導の趣旨を踏まえて検討する方法や、要件事実的な理解を踏まえて答える必要性などを感じることができます。ただ、いずれにせよ難しいので、完全な答案を書きに行くのではなく、基本的な知識・思考をしっかり表現するということを目標にして書いていました。これは後でまとめておきます。
その他やったのは、勉強会で取り上げた『事例演習民事訴訟法』です。これは解説があっさりしていたり必ずしも試験を意識していなかったりということで試験対策向けかというと微妙なところもありますが、あまり考えてこなかった用語の意味など、基本的なところを確認するという意味ではよい本です。そういう基本的な理解の正確さが他の科目以上に問われるのが民訴という科目なのだと思います。

§3 商法
商法は民事系のなかでは一番対策しやすいような気はしています。論文で出題されそうな主要領域は限られていること、基本的な条文の理解をしっかりさせておけば多くの場合に対応できるからです。もっとも、現場で考えないと出題趣旨を完全に捉えることはできないわけですが、司法試験レベルの議論であれば、理解が難しいとか、範囲が膨大すぎるということもないので、きちんと対策すればそれなりの水準には達せるでしょう。

インプットに関しては、江頭先生の『株式会社法』をベースに、論文に出そうなところだけを拾って要約する形でまとめていました。分厚い本ですが、まとめるとA4に60ページくらいになりました。あとは、百選の記述などを適宜反映させたり、演習書の記述で参考になる部分を入れたりといったところです。
手形小切手・商法総則については、ほとんどまとめていません。手形の基本的論点だけシケタイから(!)拾ってきてまとめたのと、会社法でも出題されそうな会社登記などの問題について少しまとめたくらいです。

アウトプットについては、たまたま手に取った『ロースクール演習会社法』(中村信男・受川環大編、法学書院)を使用しましたが、これは結構よかったです。一通り論点をさらっているということ、解説が試験を意識しており分かりやすいことなどがその理由です。解説で触れてあった理由付けや、論述に当たって指摘すべき事項などは、ノートまとめに反映しておきました。
あと、京大で使用されているという『会社法事例演習教材』も一通りやりました。解説などは友人にもらっていたのですが、やはりひとりで解くものではなく、みんなで検討するものかなぁという感はありました。しかし設問の問題意識などはさすがに鋭く、よい教材であることは間違いありません。

4.2 刑事系
§1 刑法
不合格の年は刑事系がひどい点だったので、まずは刑法をしっかりやろうという一年でした。

インプットについては、山口先生の『刑法総論』『刑法各論』を要約してまとめノートを作成しました。110ページくらいになってしまいましたが、勉強になりました。論点を網羅的に、かつしっかりと理解するための作業としては、基本書をしっかり読んでまとめるというのが結果的に一番の近道だと感じています(なんだかんだいって10日くらいで終わりましたし)。あと、僕が東大出身だからなのかもしれませんが、山口先生の本は意外と読みやすいと思います。刑法が一冊にまとまっている山口先生の『刑法』(いわゆる青本)でもいいのでしょうが、二冊本の方が先生の問題意識や理由付けがしっかりしていて、まとめるには都合がよかったです。
あとは、西田先生の総論・各論も適宜参照しているほか、山口・西田両氏のロー講義の書き起こしも参考にしました。普段よく暴れている山口先生は、ローではとても無難な試験向けの授業を展開しています。出題もそういう姿勢であってほしいものです。
百選はそもそも持っていないこともあって読んでいませんが、重要な規範については、ローで指定された判例を別途読んだりして補強しています。そのレベルで重要な判例は基本書でも触れてあるわけですが。

アウトプットについては、『事例から刑法を考える』を勉強会でやっていました。この本は解説が若干ぶっ飛んでしまうところもありますが、基本的には受験を意識して解説してくれているし、問題の質はかなり高いです。一通りやればほとんどの論点が網羅されているということもあり、よい教材です。
しかし、現時点で最高の教材は何かということになると、僕の知る限りでは『刑法事例演習教材』ということになりそうです。勉強会の時点で出ていなかったので結果的に独習で答案構成だけやることになりましたが、問題の質・量の充実ぶり、そしてコンパクトながら解説の適切さを兼ね備えており、全科目通してもこれだけ完成度の高い教材を僕は知りません。これを真面目に全問書いて検討していれば、今年の問題でもより適切な答案を作成できていたと思います。

§2 刑訴法
刑訴法は論点が多めで、ボリュームの多い科目です。理論的な記述も必要だという話で、しっかり勉強していく必要のある科目といえそうです。

まとめノート作成にあたっては、ローの上級刑事訴訟法という講義の内容をベースにしています。この講義は『ケースブック刑事訴訟法』を教材として刑訴を一通り扱ったもので、東大ローで最も試験に有益な科目ではないかと思っています。一回目にしっかり復習して試験に臨まなかったことが悔やまれます。
僕の講義の担当は検察官出身の古江頼隆先生でした(現在は同志社のローにおられるようです)。昨今話題の捏造検事と違って紳士的な方で、非常に理論にも明るい素晴らしい先生でした。ちなみに講義内容については先生が法学教室316号~342号に演習を連載しており、それに近い内容が展開されています(まとめでも参考にしました)。個人的には極めて水準が高いものだと思います。また、同じ講義を担当されている川出敏裕先生の講義書き起こしなんかも参考にしています。

あとは、講義でも言及されていた酒巻先生の法教連載「刑事手続法の諸問題」(法学教室283号~306号)や『演習刑事訴訟法』(長沼範良・田中開・佐藤隆之・酒巻匡・大澤裕、有斐閣)などを読んでいます。特に酒巻連載は、基本原理についてしっかり説明してくれていて、論証の深みを増すのによいと思います。
また、刑訴については、息抜きも兼ねて論文をいくつか読んでいました。講義で指定されたもののうち有益そうなものに限ったので量はそれほどでもありませんが、一部はまとめにも反映しています。特に有益なものとしては、伝聞については大澤裕「伝聞証拠の意義」『刑事訴訟法の争点[第3版]』182頁、違法収集証拠排除法則について川出敏裕「いわゆる「毒樹の果実論」の意義と妥当範囲」『松尾浩也先生古稀祝賀論文集 下』515頁などが挙げられます。法学教室で不定期連載している「対話で学ぶ刑訴法判例」も参考になるものが多かったです。
刑訴については新しい判例から出題される傾向があるので、百選はもちろんのこと、重判もしっかり読んでおくのがよさそうです。今年も設問1はそうでしたが、僕は読んでいたものの適当になってしまい、外した内容を書いてしまいました。こういうところを抜かりなくやれなかったのは心残りです。

アウトプットについては、よい演習本が見つからなかったので刑訴については過去問だけですが、今はよいものがあるのかもしれません。
今年もそうだったように処理量の多い問題が出されるので、きちんと基本的な規範などを準備しておいた上で、それを適宜要約した形で書けるようにしておく必要があります。これは時間管理のトレーニングと、暗記ではなく基本的な考え方から理解するように努めるといった部分でフォローすべきことだと思います。刑事系は処理するという側面が強いので、書くべきところは書くとして、相対的に重要でない要素は流すという意識が必要な気がしています。

4.3 公法系
§1 憲法
憲法は知識量としては少なめで、勉強しやすい科目だと思います。というか僕もあまりやってません。どちらかというと、書き方のイメージを掴むことが大事な科目でしょう。
そのための教材として一番オススメなのは、『「憲法上の権利」の作法』(小山剛、尚学社)です。これは言ってしまえば、憲法の問題を解く枠組を解説したマニュアルで、受験生必読だと思います。ここに書いてある三段階審査、すなわち保護範囲→侵害→正当化の順序を守れば、外した答案にはならないはずです。
特に新司法試験では、いわゆる違憲審査基準(正当化)の前段階である、そもそも保護範囲内なのか、侵害があるのかといった部分(タバコパッケージ規制に関する消極的表現の自由の問題や、遺伝子に関するプライバシーの基本権としての位置づけなど)が山場だったりする出題があるので、三段階審査の考え方は論述のきっかけを作る上で極めて重要だと思います。ただ、14条の審査基準に関してはちょっと記述が不足しているような気がします。この部分は高橋和之先生の『立憲主義と日本国憲法』に分かりやすい説明があるので参考にしました。

以上が答案作成方法のマニュアルについてです。その上で知識として必要なことは、三段階審査の各要件の記述を構成する材料とでも言うべき「考慮要素」についてです。各基本権ごとの価値や性質、二重の基準や積極-消極二分論などの学説、判例が考慮する諸要素などを、①どういう事情があれば②どういう理由で③審査基準を高く/低くするのか(審査密度を高める/低めるのか)という観点でピックアップして、ネタとして仕込んでおくという感じです。
このための材料は、芦部先生の『憲法』と百選でほぼ事足りると思います。長谷部先生もそんなことを言ってたので、知識的にはそんなものではないでしょうか。大事なことは、上記3つの要素に着目しつつ、判例や学説の言っていることを事案に適用できるようにしておくということでしょう。そういう勉強をしていれば、事案の特殊性にも気づきやすくなるはずです。きちんとネタを仕込んで、学説への批判なども含めて違憲審査基準論を上手く展開できるようになれば、自動販売機だとか言われることもないんじゃないかとは思います。
個人的な反省点としては、もっと判例を読み込むという対策をやっておけばよかったと感じています。出題趣旨にもありましたが、選挙権について判例の要件を正確に出すということはできていませんでした。昨年公法でよい成績だった人のなかには、百選掲載判例の規範を全部丸暗記して、本試験でもそのまま書いたという方がいらっしゃるのですが、そのくらいやるのが正解なのかもしれません。少なくとも、判例を知っていることのアピールは有益でしょう。

アウトプットについては『事例研究憲法』を使っていましたが、解説が試験向けでないということもあり、あまり参考にならなかったかもしれません。むしろ、上で書いた「ネタ仕込み」の材料として活用していた感があります。
憲法については、過去問で書き方を研究するのが一番でしょう。特に、法令違憲と適用違憲の書き分け方(立法事実に関係する事実にかかっているか、その事案・適用対象だけに当てはまる事実にかかっているかで分ける)や、原告・被告・私見の論述分配のイメージなどは、憲法固有の書き方なので、事前にしっかり準備しておくべきです。

§2 行政法
行政法についても、あまり特別なことをやったという意識はありません。基本的な知識と判例を押さえて、あとは個別法を見て考えよう、という感じです。

インプットについては、櫻井=橋本『行政法』を元にしてまとめノート作りをしていました。これは内容が薄めのところもあり、それでも試験対策には足りるのだとは思うのですが、ローの授業でやっていた内容を適宜反映させて理論的な厚み(?)をつけていました。ただ、出題されることはなさそうな気はするので、若干趣味が入っていたことは否めません。個人的には塩野行政法が好きなのですが、試験対策用ノートまとめのベースにはちょっと違うと思ったので、参考として適宜織り込むに留めています。
行政法はあまり百選を読んでいません。宇賀行政法がたくさん判例に言及しているので、まとめに際してこれを参照することで済ませていました。そのかわり、百選判旨を要約した短答用の対策プリントを友人にもらっていたので、これを短答に向けて読んでいました。

アウトプットについては、『事例研究行政法』を用いてトレーニングしていました。これは良著で、解説も適切で問題もそれなりに試験を意識しており、一冊やればかなり力がつくでしょう。僕はやっていませんが、後半についている応用問題を勉強会でやるというのはよさそうです。
行政法の答案は誘導に乗れるかが最重要で、知識については訴訟要件の処理方法など誘導を理解したうえで展開すべきものなので、出題方式に慣れておくことが大切です。その意味で、事例研究だけでなく、過去問もしっかりと押さえて、書く練習をする必要があるでしょう。逆に言えば、書き方さえ押さえれば安定して点数が取れるはずなので、公法こそ他の科目に比べて予測可能性の高い試験ではないかと感じています。

4.4 選択科目(知財法)
選択科目である知的財産法については、勝負を左右するものにはなりにくいということもありますが、一応は対策しておきました。

まとめノートについては、法学教室で連載中の「知的財産法の重要論点」(大渕・茶園・上野・横山)や高林龍先生の『標準 特許法』をベースに、特許法と著作権法を一通りまとめました。中山先生の『著作権法』も辞書的に使いましたが、良い本だとは思うもののこれは受験向きでないです。
それから演習本として、田村善之編『論点解析 知的財産法』や 小泉直樹・駒田泰土編『知的財産法演習ノート』などをみていました。答案構成だけで解説を主に読んでいたので、実質インプットに使ったようなものです。『重点演習 知的財産法』というものもありましたが、これはいらなかったかもしれません。

選択科目は結局去年と同じくらいの点数で、特に進歩もなければ退化もしていないというところでした。ちょっと勉強したからか、無駄に難しく考えてしまったところなどもあります。いずれにせよ勝敗を決定付ける科目ではないので、それほど時間を割かずに準備すればよいでしょう。そういう意味で、年内にまとめノートを作って、あとは読むだけという状態でいられたのは、選択科目対策として経済的でした。

4.5 答案作成にあたって
以上が各科目の勉強方法ですが、このほかに、答案作成時の心がけを中心に、全科目を通じて気をつけてきたことを書いておきます。

§1 答案はイチから積み上げていく
第一に気をつけていたことは、司法試験の答案では「当たり前のこと」もきちんと書く、ということです。
これは昨年の不合格答案を見てもらって合格者に指摘してもらったことでもあるのですが、問題を考える上で当たり前のように処理している内容も、答案ではきちんと書く必要があります。これは理論的に難しい民訴などの科目で特に重要だと思います。
例えば昨年(H21)の民訴であれば、立証責任の分配方法や主張共通原則などの基本的な議論を書いた上で主張の成否について検討に入る必要があるし、今年(H22)の民訴でも設問3なんかは、当事者の確定があってはじめて訴訟代理の成否などが問題になります。判例なんかでは当たり前なので書かれないことや、感覚的に当たり前だろうと思う部分でも、きちんと書かなければならないのが答案という書面なのだ、という意識をもつように心がけました。
また、同じような意味合いとして、きちんと適用条文をあげるということも挙げられるのでしょうが、僕の場合はこの部分がちょっと弱かったような気がしています。

§2 趣旨から論じていく
第二に、よく言われることですが、必要なところではきちんと趣旨から論じようということに気をつけました。
これは伝聞ですが、山口先生曰く「基本書で当該論点のちょっと前に書いてある原理からきちんと書いてあると好印象」らしいですし(しかし一方で「法律論頑張って書いてもそんなに点数にならない」らしいのですが…)、そもそも行政法なんかは趣旨を論じなければ答案ができません。

ただ、何でもかんでも趣旨を論じればよいというものでもないでしょう。趣旨を論じるべきは、論点の理解を示すために書く必要がある場合と、知っている判例・学説では対応しきれない場合に限られます。この両者に共通しているのは、基本的な理解が前提になっているということです。趣旨から解釈論を論じるに当たっても、これまで勉強してきた内容から類推することが必要なので、やはりここでも基本的な積み上げは重要です。行政法の場合は個別法を見てのイメージプレイ的な要素がありはしますが、これも自分の知っていること(例えば今年の場合は住民自治の意義や競争入札が原則となっているという事実など)をスタートにすればはかどる部分もあります。
要するに、何でもかんでも趣旨で乗り切れるほど、司法試験は甘い試験ではありません(昨年落ちるまでの自分はそう思っていました)。逆に、趣旨から論じなければいけないという姿勢でしっかり勉強することで、理解が定着するという性質のものだと思います。きちんと勉強していれば、趣旨から論じる必要があるところで、気兼ねなく趣旨からの解釈論を展開できるようになるということでしょう。

§3 難しい議論は省いてよい
これは勉強の基本方針でも書きましたが、司法試験の本質は「みんなが書きそうなことをきちんと書く」ことであって、出題趣旨に問われていることをすべて書きに行くという夢(!)は捨てるのがある意味賢いと思います。出題趣旨に書いてある内容は、言われてみればその通りという内容で、力のある受験生なら全部書けるというように思えなくもありませんが、本番の緊張感や時間制限のなかで達成することは極めて困難です。

結果が出て自分でも実感しましたが、主要なテーマを1個2個外しても平均以上の得点は得られるわけで、一桁合格しないと殺されるといった特殊事情がないのであれば、最初から完全を望まないという姿勢が試験的に正しいと思います。たとえ期待される得点が下がったとしても、(少なくとも再チャレンジの自分にとっては)外してしまうリスクを取るより10回受験して10回とも合格できるような答案を全科目で揃えることが大事です。そうやっていると結果的にそれなりの点数が付くという試験でもあると思います。
以上の方針については答案作成時は言うまでもなく、日々の学習からその姿勢を貫くべきです。細かな学説を覚えていくとか、マニアックな論点を押さえていくという時間があったら、絞り込んだ基本的論点(どの教科書にも載っていそうなもの、もっと言うなら受験生がみんな知ってはいそうなこと――知っていることと書けることは違う)を何度も復習するほうがよいはずです。

答案作成時には、1科目につき答案構成は30分で、問題文を読んで論点を摘示するのはそのうち15分以内に限るというルールで、自分に縛りを入れていました。15分で思いつかない内容は他の人の多くも思い至らないだろうから、それよりも思いついた内容をしっかり書くということです。この縛りのせいで、会社法の損害論を最初に思いつかず落としてしまったということはありますが、試験全体で見ればこれが上手く働いたように思います。とにかく処理しきることが大事なので。
ただ、処理という側面から言うなら、答案パターンや処理手順の訓練はもっとしっかりやるべきでした。刑法なんかはその辺で損をしてしまった気もします。内容面では「基本を押さえる」という意識がありましたが、形式面にまで十分意識が及んでいなかったのは、受験生としてよくなかったです。

§4 事実の評価をきちんとする
みんなが書きそうなことを書く、ということをしっかり実践すると、答案構成や法律論の記述にかける時間が節約できます。高得点を狙う場合にはここでより細かい論点の検討などに入るべきなのでしょうが、僕はみんなが検討しているはずの事実面の記述をより厚く書くことを目指しました。事実の評価が重要であることは出題趣旨でも書かれていますし、事実に関しては書きすぎても外すことがないため、安定して高評価を狙えると考えたからです。
もちろん、論点の検討も同じくらい深くやれればそれに越したことはないのですが、そんな実力があれば去年受かってただろうということでその辺は割り切っています。何かを得るには何かを捨てる必要があるということです。

事実の評価については、最初に結論を考えた上で、その結論を妨げる事実をしっかり拾い、それを上回るような形で自分の結論に沿う事実を挙げるよう心がけたつもりです。特に、反対事実にきちんと言及するということは、必然的に自分の結論をしっかり論じることにもつながるし、必須だと思います。
事実の評価については苦手な人もいると聞きますが、そういう方はまず判例をしっかり読んでどういう要素が考慮されているのか自分なりにまとめてみるのがよいのではないでしょうか。あるいは、実務向けの事実認定本などを読んだりするのがよいのかもしれません。個人的には事実の評価が弱点ではないと感じていたので、そういう対策はしていませんが、演習などを解いているなかで事実の評価についてなるほどと思ったところがあった場合、一応チェックはしていました。
プロフィール

Author:眠れる豚
名前:眠れる豚
2009年度新司法試験で討ち死にしてしまったため、再チャレンジのために淡々と勉強してきた法務博士(無職)。2010年の試験では何とか合格することができました。

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